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第三十話 訪問者

2016/01/31 誤字集背を行いました

2015/10/16 及第二十九話を第三十話に変更と、内容の修正を行いました。


おかげさまでPV3万越え&ユニークPV6千超えました!

いつもご覧頂いている肩に感謝ですm(_ _)m

今後ともよろしくお願いします!

 翌日から、僕らはある部屋を割り当てられていた。


 本来なら一人一部屋らしいんだけども、僕らだけ怪我を治すための処置らしい。食事はそこそこ出るし、部屋にはトイレもある。傷を治すための塗り薬も用意され、一日三回塗るように指示された。


 自分の手で薬を塗れる所は流石に自分でやるけど、思ったよりも体全体に傷がある。なのでお、互い手の届かない所に傷薬を塗り合う事になった。


 僕もエリーも最初は恥ずかしかったけど、もう知らない仲でもないし、何より今は傷を治すべきだろう。余計な事は考えないようにしながら薬を塗る。エリーはどう思っているのかな?


 そんなこんなで、そろそろ四日目。一応部屋に窓はあるんだけど、ご丁寧に格子がはめ込まれているし、さらに鉄の網がその格子の後ろにある。しかも、僕らの身長よりも倍近い位置。窓の外はあまり見えない。精々光の加減と、音が若干聞こえるくらい。


 それでも、この場所は町の中心でないと思う。


 窓から微かに見えるのは木々なので、恐らくは人通りの少ない所か、外壁のすぐ内側。それにこの部屋に案内された時、多分地上三階か四階に位置しているのは分かった。


 周囲に人はいないのか、それとも遮音性が高いのか、周囲の音はほとんど聞こえない。むしろ外の風が聞こえるくらいだ。


 お互いに体へ薬を塗り終わると、少しでも体力を元に戻すためにベッドに入る。この四日で、大分調子は戻ってきたけど、それでも傷による痛みはまだあるし、多分出血のせいか目眩も時々する。食事でどうとかなるほど、出血は酷いのかもしれない。


 エリーは初日こそ別のベッドで寝ていたけど、夜中に叫び声を上げて起きる。多分、この前の事を思い出すんだろう。


 それ以来エリーは、僕と一緒に寝る事になった。それだけでエリーは大分安心したみたいだ。今は僕がエリーの支えになっているみたいだけど、僕にそんな資格があるのか分からない。


 前の人生では、恋人と言えるような人は出来なかった。なのでこれがそのきっかけになるのかすら、正直分からない有様。むしろ、僕としては混乱している。


 普通なら、素直に男として喜びたい所だけど、僕も正直疲労しているし、正直今はそれどころじゃない。


 まあ、こんなんだから彼女がなにも出来ないのかもしれないけどと、内心苦笑する。


 エリーが小さく寝息を立てているのを確認してから、僕も目を閉じた。


 まだ時々エリーが悲鳴と共に起きる事があるけど、僕が近くにいる事が分かればすぐに安心してくれる。たまにエリーの頭に手を添えると、それだけで安心したような表情にもなる。それが何より僕の救いだ。


 誰かに頼られるのが、正直こんなに嬉しいなんて想像よりも良い物だと思う。


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 


 どのくらい時間が経ったのだろう? 窓から外を見ると深夜のようだ。


 エリーは静かに寝ているし、僕だけ先に起きるのは、ちょっと珍しい。


 一応ベッドサイドにランプはあるんだけど、どう考えても深夜の時間にランプを点ける程間抜けじゃ無い。何よりエリーを起こしたくないから。


 再びベッドの中へ潜り込むと、どこからともなく足音が聞こえる。多分巡回の誰かだろう。毎晩一定間隔ごとに誰かが巡回しているみたいだ。ただ、日によって見張りの間隔は違うみたい。


 扉の鍵は外側からしか開かないので、巡回無しでも僕らが逃げる事はまず無理だと思う。


 今は拘束具は外されているけど、まだまだ体力に不安がある。扉が開いていたとしてもすぐに見つかるのが落ちだし、なによりこの建物の構造が分からないので逃げ道も分からない。


 そのまま音を聞いていると、ドアの前で足音が止まった。何事だろうと思いつつ、どうせ何も出来ないのだからと体だけ起こす。


 ドアの鍵が開けられ、そのままドアが開く。来たのは男性のようだけど、暗くてはっきりは見えない。


「君らがベルナル君とバスクホルド君で間違いないね?」


 静かにその男が尋ねる。否定しても仕方がないので、おとなしく頷いた。


「声は出来るだけ出さないでくれ。君らを助けに来た」


「助けに?」


「ああ。見た目はほとんど人族だが、これでも狼族の血が四分の一流れていてね。君らが捕らえられたと聞いて救出に来たのだが、まさか先に騎士団に捕らえられるとは思わなかった。色々思う所はあると思うが、とにかくここから逃げよう。悪いがバスクホルド君を起こしてくれると助かる。くれぐれも大声は出さないように」


 僕はエリーの肩をそっと動かす。しばらくするとエリーが起きる。部屋の中にいた人に対して、悲鳴を上げそうになった。すぐに僕が口を押さえる。


「エリー、彼は僕らを助けに来たんだって。静かにしてて」


 エリーに出来るだけ優しくそう言う。


『彼が本当に助けるか分からないけど、このままいても駄目だ。今は従った方が良いと思う。一応彼は狼族の血が四分の一流れていると言っていた。まずは様子を見よう』


 魔法を使ってエリーに伝える。エリーはおとなしく頷いた。


「窓から少し離れてくれ」


 彼はそう言うと、右手の手の平を窓の真下に付けた。するとそこを中心に、石壁が部屋の中へゆっくり移動してくる。


 出来るだけ音を立てないためなんだろうけど、かなりゆっくりとした速度で壁を移動すると、移動した壁をそのまま床に置いた。人一人が十分に通れる大きさの穴が出来る。


 すると今度は、笛のような物を取り出し、それを吹いた。ただ音は聞こえない。特殊な笛なんだと思う。イヌ笛みたいな物かな?


 しばらくそのまま待っていると、外から二人のハピキュリア族が現れた。


「この二人だな?」


 現れたハピキュリアの一人がそう尋ねると、男が頷く。


「よし、二人ともこっちに来てくれ。少々寒いが空に行く。すぐに他の仲間が待っているから、我慢して欲しい」


 男に背中を軽く押されて、僕らはハピキュリア族の目の前に行った。目立たないようになのか、服装は黒一色だ。ただ羽根は二人とも美しい白い色をしている。


「我慢してくれよ」


 僕の目の前にいた人が僕をたぐり寄せ、背中から前に手を伸ばす。腰より少し上で抱えられると、そのまま上空に飛び立った。


 そういえば、ハピキュリア族は手があるんだよな……そんな事を思う。前世の神話では手が無い描写ばかりだけだけど、彼らにはちゃんと手がある。まあ神話だしあてにならないのは当然だけど。


「雲を抜けるぞ。もうしばらくだ」


 雲の中に入る。一気に寒くなったけど、流石に我慢する。この様子だと、本当に僕らを助けてくれるのかもしれない。


 雲を抜けると、そこには大きなドラゴンが一人待っていた。緑の鱗なので一般的な色だけど、なんだかとても久々に見た気がする。


「彼か?」


 ドラゴンがそう言うと、僕を連れてきたハピキュリアが「ああ」と答えた。この感じだと、種族による差別はあまり無いのかも。


「背中に乗ってくれ。それと服を着替えた方が良いな」


 近くにいたのか、鳥人族の人が服を持ってくる。防寒具もあった。色は茶色でシンプル。実用性第一といった感じだ。急いで用意したのかも。さらに厚手の毛布のような物もくれた。


「済まないが、急に用意したのでな。それで我慢して欲しい」


 鳥人族の人がそう言っているうちに、エリーも服を渡された。すぐにドラゴンの背中に乗せられ、僕と同じ服を着始める。


 僕らは急いでそれを着ると、先ほど扉を開けてくれた人も来る。ハピキュリア族は、見える範囲で五人。護衛も兼ねているんだと思う。


「鞍を付けるので待っててくれ」


 男がそう言うと、近くに飛んでいた鳥人族や、ハピキュリア族の人たちが鞍を三つ持ってきた。それをドラゴンの首元において、ロープで外れないように縛る。鞍の一つは予備なのかも。


「前にある鞍に多少は食事と水がある。今はそれで我慢してくれ。よし、夜が明けるまでにここから出来るだけ離れるぞ」


 ドラゴンがそう言うのと同時に、僕らは空を駆けた。

各種表記ミス・誤字脱字の指摘など忌憚なくご連絡いただければ幸いです。


また感想などもお待ちしております!

ご意見など含め、どんな感想でも構いません。


更新速度からおわかり頂けるとは思いますが、本小説では事前の下書き等は最小限ですので、更新速度については温かい目で見て頂ければ幸いです。


今後ともよろしくお願いします。

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