閑話 八 闇の中で
2015/10/16
新しく救出劇の裏話を追加しました。
二人の男が、闇に紛れるようにしながら小声で話している。
夜中に合わせてなのか、一人は黒ずくめの服装。その姿はまるで忍者を彷彿とさせる。ただ、見えるところに武器は所持していない。
もう一人は普通の町人の格好をしているが、背中に畳まれた白い翼が『ヒト族』ではない事を示している。
二人がいるのは町の中でも比較的外れ。一般的にスラムと呼ばれる地区に近い。実際、二人の近くにある家の窓は、無残にも割れていて、その外にある木製の覆いが、バタバタと風に煽られて不気味な音を奏でている。
「まあ、今の段階では手出しは無理だな。砦に忍び込める程の技量は、流石にないよ」
黒ずくめの男が言った。
「しかし、間違いないと?」
「ああ。僅かだが、魔力の反応を確認できている。問題は、あの中で何が行われているかだ。そもそも奴隷として買われているのだから、何が起きていても不思議ではないし、俺も最悪の事態は覚悟している」
まるでそれが見えているかのように、黒ずくめの男は砦のある方向に頭を向けた。
「しかし、お前が持ち込んだ情報は確かなのか? 流石に今でも信じられないが……」
「運ばれた矢先に奴隷として売られたのは予想外だったが、出所は間違いないと聞いている。だから君にもこんな無理をさせたんだからな」
白い翼を持つ者は、そう言って翼を広げた。暗闇の中にあっても、それが輝くようにすら思える。
「分かったよ。出来るだけの事はしよう」
「頼む。こちらは何時でも準備できている。行動を起こす際は、いつもの方法で」
黒ずくめの男が返事をするのを待たず、白い翼の男は闇の空に消えていった。
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