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第二百九十五話 原因不明の収穫減?

 食糧輸送の話もとりあえず一段落して、エストニアムア王国から使者が訪れた。飛行船を使ってきたけど、降りてきたのは5人だけ。2人は護衛で、3人が今回の客となる。ちなみに護衛の2人はバスクホルド伯爵家の私兵だった。本来なら王国の近衛とかがついてくるらしいのだけど、今回の食料騒ぎで王都はかなり混乱が続いており、近衛兵すら警備に出ているらしい。他にも多数の貴族家から私兵が応援で出ているらしいのだけど、そちらは警備というよりは食料配布の整理などを行っているとの事。王都の人員では既に手が回らなくなっているので、ある程度力があって訓練されているとなると、結局は私兵のような存在にまで応援を求めざるを得なかったらしい。王家としては行いたくない手段だったらしいけども、あまりの人の不足に許可を出さざるを得なかったとか。


 僕らの所に来るとなると、当然それなりに信頼できる護衛でないと意味が無くなる。かといって王家の方も護衛を出せる状態ではないので、結局バスクホルド伯爵家の私兵から僕と面識がある人物を抜擢したのだとか。確かにそれなら筋は通るのかな? とりあえず一応は知った顔だったので、その辺は問題なかった。


 むしろ問題だったのは訪れた人達。一人は農業関係の役人で、もう二人は学者。そして持ち込まれた話がまた問題。


 流石に毎回国王が来るわけでもないけど、今回の根本的原因がどうやら単なる軍事物資への横流しだけでは無いという話。もう、それを聞いただけで何だか嫌な予感しかしなくなる。


 小麦を含めて麦類の生産は近隣諸国を含めて広く行われている事だけど、どうやら国に関係なく麦類の生育が悪くなっているという話が出てきた。それどころか、様々な物に影響が出ている可能性があるのだとか。


 僕らの所は色々やっているから影響はある意味出ていないと言えるんだけど、以前からの農地の場合はどうやら話が別のようで、しかも全ての農地が不作というわけでもなく、原因不明の育成不良が円状に起きているらしい。これは食料がとりあえず調達できるようになったエストニアムア王国が調べて分かってきた事らしいけども。なので他の国ではまだ分かっていない可能性が高いのかもしれない。


 それが軍事用の物資として溜め込むきっかけにもなったらしくて、僕らの国では食糧事情が良いという話が広がったらしく、そういった事も攻め込んできた原因らしい。全く迷惑な理由だ。


 じゃあ不作になっているところに何か共通点があるかというと、現時点では不明。どうやらまだ確定じゃないらしいけども、小麦以外にも樹木まで影響が出ている可能性があるとの話。樹木に影響って、そんなすぐに分かる事じゃないと思うけど、枯れてきたというわけでも無いらしい。良く分かったと思う。


「今のところ考えられる原因としては、魔素が溜まっている所に影響が強く出ている可能性です。正直それ以外に違いが分からないとも言えますが」


 学者の一人であるバルツァルというエルフの人で、子爵位の貴族。そもそも貴族でもないと学者なんて出来る資金もないので、平民の学者というのは極めて限られる世界だ。たまにいたとしても、潰されるか養子になって貴族となるかのどっちか。そして多くの場合は平民という事で潰されるのがこの世界でもあるけど、こればかりは仕方がないのかもしれない。貴族という特権階級を守ろうと躍起な人も多いし。


 バルツァルという人は植物学者で、普段は農作物の改良とかを行う事が多いらしい。そういった実益のある研究でないと予算も下りないのだろうけど、それでも予算が下りているだけマシなのかも。


「それで本題なのですが、出来ればそちらから調査隊を出して頂けないかと思いまして。既に我々では食糧不足の件で手一杯というのもあり、調査も進んでいません。恐らく他国は調査する余裕は全く無いと考えております。現状でその余裕があると思えるのは、サヴェラ王国だけというのが私達の見解です」


 何だか怪しい雲行きになってきた。


 そもそも他国に頼むのも早すぎでは? 確かにこちらが援助をしているけども、それにだって人は使っているわけで、人が余っているわけではないし、むしろ今は国の基礎固めに忙しいくらいだ。これで他の食糧危機まで調べるというのは、流石に人手が足りなくなりそうな事くらいは分かる。


「こちらも人が余っているわけではないので、すぐに返事は出来ませんね」


 すぐさま同席していた外務大臣のリュシー・ショーソンが直接ではないにしても、協力は難しいと告げる。


「無論こちらにも影響する可能性があるので、今後注意は必要です。ですが現在そちらに食糧の輸送などで人手がかなり割かれています。調査隊となるとそれなりの人員が必要でしょうし、少なくともすぐに返事が出来る事ではありません」


 こういったところが経験者なのかな? 彼は元々エストニアムア王国の貴族領で、他の領地との交渉などを行っていたらしい。ただコボルト族なのでどうしても下に見られた事が多かったらしいけども、そんな事で評価を下げるというのはこちらでは行わない。そもそも根本的な人手不足は解決していないのだし。特に実務経験者となると尚更。


「そうですね。もちろん私達もすぐに良い返事が頂けるとは思っていません。ですが現実問題として我々では既に調査不足が露呈しているのは事実です。出来れば早い内に良い返事が頂けないかと思います。それに今回は情報共有が目的という事もあります。少なくともこちらでは問題が起きていないようなので、可能であれば一度畑などを少し調査させて頂きたく思っております。こちらと私達の所で何か違いがあれば、そこから突破口が見えるかもしれませんので」


 ショーソン外務大臣がこちらを見たので、軽く頷いた。


「そういった事であれば、ある程度協力できると思います。流石に収穫中の畑は許可できませんが、収穫の終わった畑であれば比較的早くご案内は出来るでしょう」


 ショーソン外務大臣の言葉に、2人の学者は喜びの顔をする。そこまで問題になっているとは、ちょっと信じられないのだけど、まあ収穫後の畑なら他の畑の収穫もあるので多少は時間をかけて調査しても問題はないはず。


 どちらにしても、また何だか面倒な事になってきた気がする。

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