第二百八十五話 試験飛行という名の運用飛行?
久しぶりの投稿になってしまいました。
体調を崩したり色々ありまして、小説の投稿どころか、いわゆるスランプというんですかね? 書く内容が全く思いつかない状態が続いてしまいました。
まだ少し間隔が空く事もあるかと思いますが、これからもよろしくお願いします。
お読み頂ければ幸いです。
スタンピードの恐れがとりあえず無くなり、再び街の開発が優先される事になった。もちろんスタンピードに関係ないところでは開発を行っていたが、どうしても軍の協力があった方が早く行える事もあり、若干遅れが出ていた。まあ陸軍の協力がほとんどのためと、主要な協力を行っていたのは工兵部隊であったため、極端な遅れにはなっていない。
道路整備の計画はほぼ完了し、主要な道は加熱する事で柔らかくなるガラスのような物を混ぜたアスファルト擬きを敷設している。固まると強度が高く水はけも良い。偶然出来上がった物の副産物だが、その副産物が思いのほか大量に出てしまい、その処理に困っていたところでの発見だった。また次第に増えてきた車の事を考えた場合には、舗装した方が都合が良いという事もある。
もう一つこのガラス擬きの配合量を変えて色々と試験をしていたところ、今までよりも安価にタイヤが製造できる事も分かった。強度も問題なく、新しいタイヤは順次このガラス擬きが含まれた物に置き換わっていくだろう。
もちろん農道などの道では馬などの動物が引く馬車がまだまだ現役であり、そういった所は舗装をしていないが、そもそも農地まで舗装する時間もまだ無いのが現状。それでも非常に平らな道として整備しているので、移動が今までよりも楽になったとの話も聞いている。軍の工兵部隊を使って、訓練を兼ねた農道整備を行った結果だ。それに馬車の車輪にもタイヤは使えるので、今までよりも輸送が楽になった事は好ましい事だ。
そういった報告が上がってくる中、遠く建設中の港で同じく建造中だった外洋試験船がほぼ完成したとの連絡が入る。移動距離が長いが、まだ滑走路の建設まで行われていないため、今回は飛行船を使って急遽視察する事となった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「やっぱり空の旅は良いわね」
イロは外の景色を眺めながら、船尾に備えられている展望デッキでワインを飲んでいる。展望デッキではあるが開放化型ではなく、ガラス状の物質で覆っているため、外の風などは入ってこない。そもそも今現在それなりに高い所を飛んでいるため、基本的には静かだ。ただしガラスがなければ強風と寒さで死にかねないだろうが。
最近になって開発が完了した与圧式高高度飛行船の試験飛行も今回は兼ねている今回の移動は、長距離移動でのエンジン耐久性などのチェックなどを兼ねており、元々港湾区画へのテスト飛行が検討されていたが、前のスタンピードで延期になっていたのを実行するついでに移動手段として使っている。もちろん今回の試験飛行の前にもテストは行っており、その上で問題ない事が分かったので、最後のテストとして長距離移動の試験となっているが、ただ移動させるのも色々無駄が多い。なので最初の試験に問題が無ければ、試験飛行でも人や物資の輸送を行ったりもする。
当然テスト用の飛行船のため我々王族などが宿泊する船室など無いが、こちらもそれを承知で乗り込んでいるため問題は無い。むしろテスト用の飛行船に王族用の部屋があったらおかしいだろう。
「お母様、あれが海へと繋がる川ですね。こんなに高い所を飛んでいるのに、海は見えないのですか?」
ベティと一緒にいた三男のヘンリッキがそんな質問をすると、ベティが俺を見た。
「まだまだ当分見えないだろうな。飛行船で移動しても、この速度では三日はかかる距離だ。風向きによってはもう少し遅れることもある」
ベティの代わりに答えると「すごい!」と言ってヘンリッキは再び外の様子を見た。心なしかヘンリッキの尻尾が左右に揺れている。
ベティの子供達は全員彼女の身体の特徴を受け継いでいるが、特に全員が耳と尻尾を持っている。そして尻尾はどうやら感情を表に出しやすいようだ。まあ以前に獣人系の種族は尻尾に感情が出やすいと聞いたことがあるけども、こうやって見ると微笑ましい。
「バスクホルド陛下、定期連絡ですが特に問題は発生していません。むしろ順調すぎて怖いくらいであります」
室内に来たのは試験航海の船長を務めるオリヴィエ・ベルジェ。以前調査飛行船の副長を務めていたが、今は新型飛行船の試験航海専任の船長を主に務めている。コボルト族なので比較的小柄だが、どの飛行船も身長に関係なく操舵や操艦その他が出来るように設計は共通化され、よほど小柄な種族でない限りは問題は無い。
「目的地までは残り二日の予定です。先程、目的地より定期連絡もありました。受け入れ体勢も問題ないとの事です。天候も今のところ問題はありません。よほどの事がない限り、予定通り到着します」
「そうか。わざわざここまで報告に来なくても良かったのだが、何か気になる事でも?」
「いえ、報告ついでに昼食の準備が出来たとの事なので、お呼びに来た次第です」
「船長の仕事ではないだろうに・・・・・・まあ、分かった。皆、昼食だそうだ」
「分かったわ。向かいましょう、あなた」
ベッティーナは対外的に呼ぶときは「あなた」と呼ぶ事がほとんどだが、時折恥ずかしそうな顔で赤らめるのが可愛く思える。
俺達は食堂に向かう事にした。
それにしても全く揺れない空の旅は快適そのものだ。
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