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閑話 七 神様、忘れてる!

2016/01/30 内容の一部を修正しました

2015/07/28


サブタイトル及び、内容の修正をしました。

「なあ、そろそろお伝えした方が?」


「分かっているが、何かのお考えがあっての事だとすれば……」


「いや、私にはそう見えないから言っているのだ」


「ふむ……やはり、忘れていらっしゃるのか?」


 二人は、遠くで一人手に何かを持ってウロウロしている男を、横目に見ながら言っている。


 彼らは人のような姿でありながら人ではない。一人は顔が鷲、両腕は人の物だが、上半身は魚のような鱗に覆われている。鱗は銀に光っており、光がなくとも自然と光る。下半身は狼を彷彿とさせ、尻には金色の狐のような尾がある。そして背中には純白の翼が会った。


 もう一人も似たような物で、明らかに人ではないが人の言葉を喋っている。


 両人とも騎士のような格好をしており、相応の身分にいる事は明らかだ。


「しかし、予定では一千年前にここへ来るはずだった。なぜ来ていない?」


「お主も下は見たであろう? 何かの手違いがあったとしか、私には言えん」


「で、結局どっちが話すんだ?」


「そりゃ……」


 二人は無言で見つめ合う。どちらも行きたくない様子があからさまだ。


「もう、また喧嘩? どうせあの子の事でしょ? いい加減言ってきなさいよ。あの方にご意見出来るのは二人以外いないんだから。私がやっちゃうと、後で問題になるわよ? それとも、私が行っていい? まあ、あなたたち二人がどうなるか面白そうだし?」


 話かけてきたのは、ほぼ人の姿をした女性。ただし背中には真っ黒な翼を持つ。ほとんど服と呼べる物は身に纏っていなく、大切な部分を隠しているだけのような状態。しかし全身にある黒い様々な入れ墨の様な物が、人とは明らかにかけ離れた様相をしている。


「そ、それは……」


「じゃ、早く行ってきなさいよ」


 一人の男が諦めたような顔をすると、もう一人の肩を掴んだ


「こうなったら、一緒に行くしかあるまい。我々の報告義務にも、漏れがあったのは確かだ」


 掴まれたもう一方は、そう言われて仕方のないように頷いた。


 相手の人物のところまでは、すぐに行ける。しかし二人の足取りは重い。そして、相手はその事に気がついていないようだ。


 それが面白く見えるのか、送り出した女はクスクスと笑っている。彼女はこういった光景が大好きで仕方がない。耳も良いので、距離は離れていても確実に会話は聞こえる。だからこそ待っていた。


「お話があります――様」


 一人が話かける。名前は発音出来ないような音だった。もちろん、ここにいる全員は正確に発音出来るが。


「ん、どうしたの? それよりさ、下で新しい事はじめたみたいだよ? ほら、また勝手に宗教作ってる」


 二人とも、そんな話を聞くために来たのではない。


「ちょっと、反応薄いな。で、用件は?」


「一四〇〇年程前に、下に送った者の事は覚えていらっしゃいますか? 他の神より依頼され、この星で転生させた者です」


「ん、誰だっけ?」


 この一言で二人は確信する。忘れていると。


「お忘れのようですね……前世であまり良くない人生を送ったからとの事で、こちらでもう少しまともな人生をやり直せるように依頼された者です」


「あー、なんかいたかも」


 先ほどから話かけている男の方は、右手を強い力を込めて握る。そしてもう一人は額に手を当てて上を見ている。


「ちょ、ちょっと。どういう事? 何かあったの?」


「お忘れのようなので、お伝えしますね?」


 今まで一言も喋っていなかった者が、代わりに話出した。


「この世界での名前はクロード・ジョロワフ・ベッケアートとして生を受け、今はクラウデア・ベルナルと名乗っています。ハーフエルフです。送り出したのは、今から一三九八年前。本来の寿命ですと、どんなに長くても二百年生きれば良い方でしょう。しかしその者はまだ下で生きています。それどころか、十八歳からつい最近まで時間が止まったままでした。まだ続けますか?」


 そう言われた男は、明らかに焦っていた。


「あ、ああ。今思い出したよ。彼か。え、まだ生きてるの?」


「生きているのではありませんよ! 寿命で死亡したら、一度ここに来るように特別な計らいをしているではありませんか」


 もう一人が突っ込みを入れた。


「す、すまん! で、状況を詳しく教えてくれ!」


「はい。彼は今奴隷として売られようとしています。もう一人女もいて、女はエルフです。二人とも魔物として扱われているようですね。この意味が分かりますよね?」


 突っ込んだもう一人が、仕方のないように状況を伝える。


「え、まさか!? だって予定では、貴族としてそれなりに裕福に暮らすはずだったんだよ?」


「生後二年目にある事が発覚しまして、彼は養子として売られました。その状況はさほど悪くはありません。彼もそれなりの幸福ではあったようです。しかし十八歳の時に逮捕され、年齢がほぼ止まる状態で、魔力だけを吸う装置へと入れられました。それが最近になって他の者に開封されたまでは良かったのですが、その後奴隷商に売られました。今は奴隷商の元にいますが、売られるのは確実でしょう」


「ちょ、ど、奴隷って、不味いよ、不味いよ!」


 それをあなたが言うか、と内容を告げた者は思う。


「今さらではありますが、何か手を打った方が良いのでは? このままですと、前世よりも悪い結果になるかと?」


「で、でも、時間は巻き戻せないし……」


 二人して、目の前の者に溜息をつく。そんな初歩的な、やってはいけない事しか思い浮かばす、なぜここにいるのだろうと。


「僭越ではありますが、進言させて頂きます。その奴隷商がいる街に、二人の事を任せても良さそうな者が幸い一人おります。その者に、神託としてお言葉を授ける事が一番かと」


「そ、その手があったな! 分かった、早速神託を!」


「神託を授けるのは、私達が代理で行います。決まりをお忘れになりましたか?」


 またしても、二人は溜息をつく。


「あ……」


「内容だけ、今すぐお願いします。すぐに神託として授けますので」


 結局二人は、最後まで溜息をついてばかりだった。


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


『君に神託が降りた。夕方に奴隷市場を訪れるといい。そこで珍しい者が二つ出品される。君に課せられたのは、それを保護する事だ。保護した後は丁重に扱うように。さすれば、君に幸運が訪れよう』


 目覚めると、頭にそんな内容でいつの間にか記憶されていた。


 神託など正直疑わしいが、今日は休みだ。


 言われた場所はあまり好まないが、行った方が良いだろう。


 そう考えながら、朝食を摂るために部屋を後にした。

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