表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
304/331

第二百七十話 上空からの視察という家族とのふれあい遊覧飛行

少々調子を崩して、更新遅れ気味ですorz


2018/07/16

誤字修正しました。

製造だれた→製造された

しれでも勿体ないと思ってしまう。→してでも勿体ないと思ってしまう。

伊津部の公園には→一部の公園には

「こうやって見ると、短い間にだいぶ発展したのね」


 エリーが感慨深げに窓から下を眺めて言った。


 俺達は子供達も一緒に、初期に製造した飛行船で上空からアルフヘイムの街を見下ろしている。


 サヴェラ立憲王国として独立してからは、旅客、貨物の飛行船はあまり使われていない。国内の長距離移動に一部使われているが、大半の住民はアルフヘイムで生活しており、残りは鉱山地帯と遠く離れた海に面している港湾建設地域。鉱山地帯は鉄道で結ばれているため、こちらは鉄道での移動がほとんどであり、港湾建設に関しては家族単位で移住しているため、たまにアルフヘイムへ報告や買い付けに来る者以外はほとんど利用が無いと言って良い。


 また港湾施設に関しても鉄道敷設が開始しており、あと一年程度で単線であるが開通するだろう。そうなると移動速度はともかくとして、コスト的に不利な飛行船はますます使われなくなると思われる。


 そういった理由もあり、いくつかの飛行船は解体されることが既に決定していた。それでも飛行船だと滑走路が必要で無い事と、飛行機よりも操縦が容易という事もあり、解体されるのは特殊用途で製造された物が大半だ。何よりそれらは航空機で代用可能になったという事も大きいだろう。他にも鉱山地帯や港湾施設の建設現場などは、滑走路を作る予定は今のところ無い。鉱山地帯はそもそも滑走路を設置できるような平地が無いため、恐らくは垂直離陸機でも開発されない限りは今のままだろうし、重量物の鉱石などを飛行機で輸送するなど、何か特別なことでもない限り意味もないことだ。飛行船の発着場はあるので、比較的高速の飛行船を使えば十分に事が足りる。


「父上。前から思っていたのですが、野菜の畑が少ないのは何故ですか?」


 そういえばタルヤ達に、野菜工場のことは話していなかった気がする。それを簡単に説明すると、一応納得してくれたようだ。


「まあ、元々は非常時に野菜を確実に確保できることが目的ではあったんだがな。今では工場生産の方が安いのと、収穫にムラが無いのが利点となって、一部の高級野菜以外は工場生産ばかりだ。それと家で食べている物の大半は、工場生産だな」


「お父様、味などは変わらないのですか?」


 ドロテーアも興味津々といった感じで聞いてくるので、調べた限りでは遜色ないことを説明する。ただし畑で作った方が物によっては風味が良い場合と、栄養がほんの少しではあるが上回ることも教えた。まあ上回ると言っても、研究者の間ではほぼ誤差に近いという認識らしいが、そこまでは教える必要も無いだろう。


「今度、野菜工場の見学に行こう。たまにはそういった物を見るのも良いと思う」


 以前より時間が出来たとはいえ、家族サービスがきちんと出来ているかといわれると不安になる。だからこそ家族のことはもっと大切にしたい。それに今回の上空からアルフヘイムの街を視察するというのも、実際には家族サービスが主な目的であり、ついでに飛行船の新しい乗員教育という目的が含まれているが、そちらはこの飛行船の船長などに任せているため、俺達が直接目にすることは無い。


「飛行機は乗ったことが無いけど、私はこっちの飛行船の方が良いわね。飛行機って早すぎて景色を楽しむ事なんて出来そうも無いから」


 イロの言葉に思わず納得してしまう。


「でも、私は一度飛行機という物には乗ってみたいです」


「ベティは新しもの好き?」


「そうなのかもしれませんね」


 イロが意外そうな顔をして聞くと、ベティはそれを肯定していた。こんな話を聞いていると、旅客機でもそろそろ計画するのも面白いかもしれない。ただ、滑走路が全くといって良い程アルフヘイム以外では整備されていないので、今のところは作っても無駄だろう。


「あれ? あそこの荒れ地は……ああ、召喚獣を使った模擬戦場なのね」


 別の所を見ていたエリーが、少し遠くに見えた荒れ地を見つけて教えてくれる。


 確かに他の所に比べて明らかに荒れ地であり、所々クレーターのような物まで見える。流石にクレーターの大きさはそれ程大きい訳では無いが、それでも形はクレーターと言えるだろう。


「ねえ。そういえばクラディも召喚は出来るのよね? 私達も一度行ってみない?」


 エリーの意外な提案に、思わずその顔を見つめる。


「あら? 変なことを言ったかしら? 私は出来るだけ安全を確保していれば、召喚獣を使った催しとか、訓練には賛成よ?それにそろそろ子供達にも召喚魔法がどういう物か知って欲しいと思うから」


「それは危なくないか?」


「全くとは言わないけど、普通の魔法だって使い方次第でしょ? 子供達にはちゃんとした扱い方を覚えてもらいたいわ。むしろその方が安全だと思うのよね。あなたは反対なの?」


「積極的には賛成できないが、まあエリーがそう言うなら一理あるのかもしれないな」


「父上。召喚とは何でしょうか?」


 俺達の会話を聞いていたのか、ミエスが好奇心旺盛な顔で聞いてきた。それに釣られて、他の子供達も近寄ってくる。


「そうね……魔力などにもよるけど、魔物のような物を呼び出す魔法ね。強い召喚獣だと契約を求められることもあるけど、その契約の条件を満たせば、心強い味方になってくれるわ。後は鳥のような召喚獣で、周囲を監視させるといった方法もあるわね。最近まで失われていた魔法らしいけど、私達がやり方を教えたら、大きさや強さはともかく、大半の人は道具を使えば使えるようになったわ」


 理由は分からないが、エストニアムア王国では少なくとも召喚魔法を含めた、それなりの数の魔法が失われていた。その大半は魔力が高くなければ難しいとされるものだったが、それは威力などの問題であり、それを無視すれば魔力が低くても使うことは一応出来る。


 まあ失われた最大の原因は魔力災害だと思っているが、してでも勿体ないと思ってしまう。そこへ魔法陣を組み込んだ魔道具により、比較的少ない魔力でも召喚魔法を普通に使える事が出来るようになったため、応用すれば他の魔法も復活できる可能性がある。今後の課題としても面白そうだ。


「城の外観はほとんど完成したようね。住めるようになるまでは、あと一年程だったかしら?」


「ああ。内装がどうしても後回しになっている所があるからな。ただ既に一部の備蓄に必要な物は保管を始めている。地下はほぼ完成したらしい。一階と二階もほぼ大丈夫らしいが、住む所はその上になるからな。まだしばらく待つことになるようだ」


 エリーは建設中の城を見て、少し驚いているようだ。


 既に一番外側の城壁と、二番目の城壁の間などはほぼ工事が終わっており、大型クレーンもほぼ撤去されている。それでも資材搬入のための一部城壁は資材だけが置かれた状況で、こればかりは完成するまで待たなくてはならないだろう。


「雨風凌ぐだけなら現状でも可能だけども、今の状態で部屋に家具などを置くと、確実に工事の邪魔にしかならない。厨房などもまだ完成していないという話だし、住める状態とは言えないな」


 それで三人の妻達は納得したようだ。完成までは時間がかかることは分かっているし、外見だけでは住めないことくらいは流石に普通に考えれば分かることなので、今工事を行っている者達に余計なプレッシャーを与えたくないのだろうとは思う。何よりクレーンなどが設置されたままの状態では、流石に住みたいとは俺も思わない。


「お父様。あちらが麦の畑ですか?」


 ミエスの指差した先には、街から少し離れたところに、収穫が終わった小麦畑のような物が見えたが、あれは耕作を止めた土地だ。その近くには資材が見え、建設待ちとなっている。


「元、だな。確かに麦などの穀物は必ず一定量生産する必要があるが、人口の少ないここアルフヘイムで、少しでも効率よく麦などを生産しようとすると、人にばかり頼っていては問題がある。そこで農地を集約し、巨大な畑を各地に設けている。当然今まで畑としていた場所では手狭になるので、農地の土をある程度運び出し、そこへ別の物を作るわけだ。今あそこでは、土の運搬準備がされているようだな」


 良く見ると大型魔導ダンプカーが数台見え、その後部は巨大なシートで覆われており、尚且つ土を運搬するダンプカーの二台は二つに分かれて連結されている。運転席を含めれば三つとなるその巨大な魔導ダンプカーは、比較的最近生産が始まった主に鉱山や新しい土地の開発に使用するための物であり、輸送能力を高めた代わりに生産コストが高い。しかし必要なところにだけ配備すれば良いのであれば、多少のコスト度外視とその積載能力を考慮すれば、限定的な生産にも意味が出てくる。


「畑を潰してしまうのですか。勿体ないですね」


「いや、必ずしもそんな事はないぞ。あそこから元の土を別の所に運び出し、その土を新たな畑とする場所に使用すれば、それだけで新規で畑を開墾するよりも生産性が格段に変わる。実際に最初の収穫から、新規で開墾した場合よりも三倍は生産性が高まる。なのでああやって土を運ぶことは大切だ」


 勿論、運び出して現地に畑として土を置く前に、多少の肥料や様々な触媒などを土に混ぜたりもして、元々の量の四倍の面積で使用できるようにする。これにより面積あたりでは少量であっても、通常よりも高栄養な土地を早く作ることが出来るようになる。そしてそれを維持するための畑用大型魔道具なども用意されており、これまでよりも害虫に強く、面積あたりの生産量は五年で六倍にまで上がることが確認され、適度な肥料の追加などを行う事により、土が死ぬことを予防出来るようになった。


「この辺りは魔物や害獣が少なくなってきたとはいえ、それでもいなくなった訳では無い。畑の先には魔物や害獣対策の壁を設置し、それでも防ぎきれない場合は畑で迎え撃つ。まあ、今のところ壁を破ることが出来た魔物などはいないらしいが、常に例外が発生することはある。本来なら畑で迎え撃つようなことなどしたくはないが、少ない人口の我が国では、どうしてもある程度密集させなければならない。勿論畑を突破されないように、このアルフヘイムには防壁を完備しているし、今までとは違った魔物や害獣用の武器も用意されている。同時にこれは、かりにこの地に敵が攻め込んだときにも役に立つように設計している。タルヤとミエスは当然として、他の者も我々は国民と共にある事を忘れてはならない。無闇矢鱈に戦場に立つ事は好ましくは無いが、この国の代表する者として恥ずかしくないようにするのも我々の務めである事は忘れないように」


「分かりました、お父様」


「まあ、あまり急ぎすぎても仕方がないので、今はしっかりと色々学ぶべきだがな」


 そのまま飛行船は進路を変え、少しだけ上昇してから再度街の上をゆっくりと旋回し始める。


「お母様。少し気になったのですが、公園の配置に意味があるのですか? 空から見ると、何かの意味があるように見えるのですが、その意味がどうしても分かりません」


 エリーにエミリアが質問していた。中々良く見ている。さて、どう説明するのか、それとも俺に任せるのか・・・・・・。


「よく気がついたわね。エミリアも知っているように、公園から地下施設に行く事が出来るのは知っているわね?」


「はい、お母様」


「勿論地下施設の点検も大切なのだけど、一部の公園には地下に魔導炉が設置されているの。勿論この事は、他の人に言ってはいけないわ。その魔導炉は、街の各所に魔力を供給しているのだけど、非常時には他の役割もあるの」


「他の役割ですか?」


「そうよ。以前にも話したけど、この地がまだエストニアムア王国の領地だった時代・・・・・・といってもあなたたちが生まれるほんの少し前でしかないのだけど、内戦があったの。その時は何とか撃退できたのだけど、もっと街を守るための設備が必要と私も感じたわ。そんな中で魔導炉が完成して、その膨大な魔力を使えるようになったから、それを用いた都市結界をあの公園が担っているの」


 まあ、大まかには間違っていないし、子供達に教えるのは、今はそれだけで十分だろう。


「そうだったのですか。それでは、あの公園が魔法陣の起点などになっているのですね」


「概ねそうね。詳しいことはもう少ししてから教えることになると思うけど、今はそういった施設もあるという事と、この話は無闇に話してはいけない事だけは知っていて」


「分かりました、お母様」


 エミリアは素直に育ってくれているようだ。


 前世では結婚もなかった俺が、こうやって子供達と一緒にいるのは、いつ考えても何だか不思議に感じるが、それももうしばらくすれば慣れるのだろう。なにより慣れなければならない。


 正直、人口がもっと増えれば街の管理なども楽になるのだろうが、安易な移民政策を行うつもりは全く無い。むしろ移民政策というのは、簡単に毒薬になり、その治療方法は極めて難しいというのが俺の考えだ。それが払拭できない限りは、現状で出来る事をするしか無いだろう。


 それに今なら人口が少ないからこそ出来る事も多い。何より町作りをゼロから出来るというのは、そうそう有ることでは無いだろう。


 今は大変かもしれないが、十年二十年単位で考える必要があるな。

毎回ご覧頂き有り難うございます。

評価、ブックマーク等感謝です。


各種表記ミス・誤字脱字の指摘など忌憚なくご連絡いただければ幸いです。

感想なども随時お待ちしております!

ご意見など含め、どんな感想でも構いません。


今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ