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閑話 一 名前はクロード・ジョロワフ・ベッケアート

2016/02/19 一部『姓』が『性』になっていた箇所を修正しました

2015/05/30 一部内容加筆、修正

2017/08/11 主人公の母親の名前が間違っていた事などを修正しました

「ご主人様、この子ですよ」


 側室ではありますが、実質的には本妻のクーヴァイア・ジョロワフ・ロナ・ベッケアート様と同様に寵愛ちょうあいを受けています。


 私はエルフ族ですが、元々は色々と事情があって、現在はこの家に招かれたに過ぎません。実際ご主人様であるエンリコ・ジョロワフ・ロナ・ベッケアート様はウルフ族ですし、本妻のクーヴァイア様もウルフ族ですから。


 一般的には『ウェアウルフ』と呼ばれる事の多い種族の方々です。


 それに、私のリーナス・ジョロワフ・ロン・ベッケアートという名前も、実は後で付けていただいた名前です。もし本名が知られれば、この国の特定の方から罪人として追われるはずですし。


 ご主人様はそんな私を見て匿っていただき、屋敷から出る事は少々難しくはありますが、それでも自由に生活をさせていただいております。


 何より私に付けられた罪状など、私達の一族を捕まえるための方便。実際にはそんな罪などないのですから。


「頑張ってくれた。性別は女の子か?」


 エンリコ様がこの子を女の子と思われたのも仕方がないでしょう。私の血が強く出ていますし、何より一般的な男の子よりも胸がありますから。


「そうか……しかしエルフという種族は聞いていた以上に分からない物だな」


 ご主人様は別にエルフ族を嫌っているとか、差別しているわけではありません。


 エルフ族はこの街――ピリエストでもそれなりの数がいますが、エルフ同士ですら分からない事があるのです。


 この子の場合は、恐らく先祖返りでしょうね。もちろんご主人様の影響も多少出ていますが、服を着たらその特徴など分からないでしょう。


「確かに胸には、私の青い体毛があるようだ。で、先祖返りというのは?」


「計測するのはまだ早いですけど、普通の子よりも遙かに多いですね。伝説に語られるハイエルフなら、このような魔力もあり得るのかもしれません」


 ハイエルフは、別にエルフの別種族とか、上位種族ではありません。魔力が異常に高いエルフの事をハイエルフといい、現在はそれに該当する人もいないはずです。ただ、まだこの子は赤ん坊です。確かに魔力は高いと思うのですが、正確に計測するまでは分かりませんね。


 もちろんハイエルフといっても、見た目が変わる事はほとんど無いのですけど、唯一ハイエルフだと肉体的に顕著になる場合があります。


 エルフは、一般論で大体三百歳程度は生きますが、ハイエルフの場合は成長が遅くなり、場合によっては四十歳くらいまで子供と同じ見た目の場合もあります。


 それとエルフの場合は、男性でも若いときには母乳が出ます。何故かというと私にも分からないのですが、一般的には八十歳くらいまで男性でも出るそうです。女性の場合は死ぬまで出る人がいるといった言い伝えもありますが、実際はどうなのでしょうか?


 そして、ハイエルフは一般に男性でもかなり胸が大きくなるのだそうです。母乳が出るのに差があるのかは分かりませんが、普通のエルフの女性よりも胸が大きいときがあると聞きました。


 実際この子は生まれて間もないのに、はっきりと胸が分かるほどですから、ハイエルフに近いと私は思うのです。


「まあ、どちらにしても、この子は君と同じようにあまり外に出すわけにはいかないだろうな。君には申し訳ないが」


 それは当然でしょう。あらぬ罪で追われている私です。この子にもその余波が来ないとは限りませんから。


「場合によっては、養子に出す事も覚悟してくれ。この子の安全のためにも、その方が良い場合もある」


 その事は、今は考えないようにしましょう。出来れば大人になるまで一緒に過ごしたいですが、領主であるご主人様に、あらぬ疑いがかけられては元も子もありませんから。


 街の人たちは、ご主人様を無能扱いしている方も多いようですが、これには理由があります。有能よりも無能と思われた方が、外から見て害が少ないですから。なので、ご主人様は無能を演じているのです。もちろん家臣の方には苦労をかけているようですが。


「とりあえず名前だが……クロードでどうだ? ウルフ族とエルフ族の有名人の名前を合わせてみたのだが?」


 クードスというウルフ族の騎士、ロナルというエルフの魔道士でしょう。二人とも歴史に名を刻む有名な方です。もちろん反対する理由はありません。


「では、この子は今日からクロード・ジョロワフ・ベッケアートだ。本来なら君の『ロン』の姓も与えてやりたいが、『ロン』は女性名だからな。かといって、後を継ぐ事が出来ないこの子に、我々の『ロン』の姓を与えてあげる事が出来ないのは可哀想だが、そこは我慢して欲しい。もちろんロナの名もだが」


「いえ、そんな事はありません。嬉しいです」


 初めての私の子ですし、これで私の血統が絶える事は、少なくとも回避出来そうですからね。贅沢を言ったら切りが無いのです。多少はこの子のためにも我慢しなくては。


「済まないな。私はこれから人と会う約束があるので、これで失礼するよ。また後で見に来る。今は君も休んでいなさい」


 ご主人様は無能を演じていますが、かといって誰にも会わずにとはいきません。色々とお忙しいですからね。


 せめて、この子がご主人様似なら、もう少し違ったのでしょうが、あまりにエルフに近い容姿ですから、こればかりは仕方がないと諦めるしかないのです。


 それでも、ご主人様は側室である私を、本妻であるクーヴァイア様と同様に扱ってくれているので、これ以上の贅沢はありませんから。

毎回ご覧頂き有り難うございます。

ブックマーク等感謝です!


各種表記ミス・誤字脱字の指摘など忌憚なくご連絡いただければ幸いです。感想なども随時お待ちしております! ご意見など含め、どんな感想でも構いません。


今後ともよろしくお願いします。

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