第二百六十五話 案外、基礎能力は高い?
2018/07/09
表現の修正を行いました
調べる事が出来る範囲→探知可能有効範囲
誤字修正を行いました
鳴る⇒なる
エンジンと探知機関係の改良を指示し、程々に顔を出しながら手伝って一ヶ月程。エンジンは試作品が完成し、魔力探知計などはかなり改良が進んだ。
魔力探知計は当初の大きさから半分程になり、重量が三分の一、探知可能有効範囲も二倍近くまで伸びている。魔法陣の積層化がかなり有効だったらしい。
俺も多少手伝いはしたが、基本的には技術者任せだ。どちらかと言えば、やり方を教えたり提案した事の方が大半で、実際に作った物はほとんど無いし、作っても他の者が作れる物程度にした。
エンジンについては一応事前の確認が終わっており、その報告では問題がないとの話だが、それでも俺に確認してもらいたいらしい。慎重になるのは分かるが、慎重になりすぎている気もする。理由の一つに、俺がこの国の国王だという事もあるのだろうが、ならばむしろ最終確認は現場だけで終わらせるのが筋だとも思う。
ちなみに今回開発した新型エンジンは、翼下の吊り下げ式だが、形は正面から見るとほぼ正六角形。円形が好ましいとは思ったが、綺麗な円形でエンジンを作る技術がなかったようなのと、中は魔法陣が配置されているだけの事実上空洞であり、後ろに行く程小さくはなるが、タービンブレードを付ける事もないのでこの形になったようだ。何より魔方陣を描くのには平面が楽だという理由もある。
正面の空気取り入れ口の直径は約一Mで、噴出口は約四〇C。もっと出口側を小さくする事も出来たらしいが、今回は偵察機である事と、量産の効率を考えた結果だと聞いている。その為、エンジンが稼働していない状態で鳥が吸い込まれるような事があっても、余程大きくない限りは詰まる事はない。
燃料も魔石の搭載は原則行わず、機体に搭載した超小型魔導炉を搭載する事となる予定だ。小さな為取り出せるエネルギーの総量に限度があるが、それでも最大出力を維持したまま、三〇〇〇時間の連続運転が理論的には可能と聞いている。前世で言えば、アフターバーナーを三〇〇〇時間連続運転しているような事になるが、この辺は燃料が魔力なのかどうかの違いもあるだろう。何より実際の機械的動作部分がないため、大気圧による機体の劣化はともかくとして、エンジンに関しては信頼性が高いと思われる。
当然魔導炉に内蔵する魔石などの交換も容易にしているため、少なくとも魔法陣を用いたエンジンとしては現在の技術で可能な最大限の技術水準のはずだ。
そんな事が長々と記載された資料を見ながら、やっと実験現場に到着する。流石に新型エンジンの試験となれば、安全上の理由もあるため郊外の人がいなく、周囲の影響も基本的に考慮しなくてよい場所でなければならない。
「陛下、お待ちしておりました」
出迎えたのは空軍開発部部長のレオン・ロベールだ。基本的に全体の指揮は彼が執っているが、彼はこの地では比較的珍しいコボルト族。部下の大半がエルフのため、何らかの軋轢などを心配していたのだが、今のところそういった話は聞かない。
「君から見た感じで、新しいエンジンはどんな感じだ?」
「量産するのに若干の手間は必要ですが、それを考慮しても全てこのエンジンに今後は変更すべきだと考えます。整備性もよく、何よりあらゆる状況において燃料となる魔力の消費が格段に減りました。魔石自体はここの魔導炉から供給される魔力で作る事が可能ですが、やはり一度の補給が少なくて済むのは利点だと思われます」
「製造以外に問題点は?」
「あえて言えば、現状では小型の機体に搭載する事が難しい事でしょう。これは今後の課題だと思われますが、技術としては応用できる所が多数有るので、このエンジンが正式採用された暁には、戦闘機用などの小型エンジンの開発を行いたい所ですね。ですがそれも新しい魔探やこのエンジンを搭載する機体の後になります。現状でも配備している戦闘機などは、これといって大きな問題はありません。むしろ今回のエンジン開発で、大型機の開発が行いやすくなったと考えるべきかと」
制空戦闘機のような機体には向かないが、大型偵察機は当然として、輸送機や爆撃機には有用だろう。出力を上手く調整すれば、既存の飛行船にも搭載して良いかもしれない。まあ、試験結果次第ではあるが。
それにしても魔導炉が完成して色々な物が作れるようになったのと、実現できるようになった。前世で計画されていた核融合炉よりも有用なのかもしれない。
「あれが試作品です。その四機目ですね。それまでの三機もかなり技術的な革新があったのですが、この四機目で現状はほぼ解決するでしょう。あとは小型化についてですが、今は要望のあった偵察機に関して注力したい所ですし、今後の課題です」
見た目は前が前世のジェットエンジンに似ているが、後方程窄まっていくので、ロケットエンジンの噴射ノズルが逆向きに向いているようにも感じる。
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テスト結果だけで言えば、完璧の一言だろう。何より可動部分が殆ど無いため、最大出力でも想像以上に静かな事に驚いた。アイドリング状態であればほぼ無音と言える。
航続距離も計算上では、今の機体に搭載した場合で、最大出力を常に出した場合であっても、最低三倍は伸びるはずだ。通常の運用であれば燃料の心配はまずしなくても良い。
実際には機体が風を切るのでその音が発生するはずだが、それを考慮しても有用と言える。これで機体と魔力探知計、レーダーなどの開発がさらに進むだろう。
むしろ驚くべきは、俺の手伝いは最低限でも、これだけの物を作り出す事が出来た事だ。
元は棄民とされた彼ら、彼女らだが、実際の能力はかなり高いと改めて感じる。何より見せてもらった設計図と、設計に伴って色々と出てきた事をまとめたノートを見ると、かなり計算された構造をしているのが分かるし、それぞれの部品や魔法陣の配置も計算されていた。
恐らくだが、これまでその能力を十分に発揮できる場所が皆無だったのだろう。それが急に活躍の場を与えられ、急速に能力が開花したとみるべきだ。
もちろん細かい所を確認すれば、多少の粗はあるのかもしれないが、かなり急いで作った事も考えれば、十分に許容範囲だろう。
今後完成するであろう機体や魔力探知計などの事を考えると、完成した時はどの様に化けるのか今から楽しみで仕方がない。
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