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第二百四十九話 アルフヘイム都市計画 三

 全てが順調とは言えないが、それでも開発は進んでいる。


 上下水道や魔導線の新規敷設も進んでおり、結局は一度舗装した所を全てやり直す事になったが、下手に地下を掘り進むよりは早く進んでいる。魔法などもあり前世の工事よりも遙かに早く進んでいる。


 他にも地上と地下にそれぞれ何基もの魔導炉を設置し、普段の生活用の魔力は当然だが、非常時の防衛用にも役に立つよう、例えそれが地上であっても簡単に破壊されない建材――オリハルコンやミスリル、その他合金などをふんだんに使った建材――で、もし全体像をきちんと把握しており、尚且つ他の国の者が見れば過剰設備と判断されるだろう。しかし魔導炉を用いる事で生活が便利になる事は既に一部で実証されており、サヴェラ立憲王国の者で疑問に持つ者はほぼいない。


 各所には公園なども整備予定であり、むしろ公園に使用する樹木の調達などが問題になるほどだ。普通なら苗木などを植える所だろうが、この世界では魔法があり、かなり大きな樹木であっても移植が出来る。それが出来る者は限られてはいるが、それが故に樹木の移植などを得意とする者は、休日以外の休みがほとんど無い状態になっているが、自分たちが住む街を良くする事だと思うと、誰もがそれに文句を言わない。


 基本的な建造物は、そのほとんどがコンクリートで作られるようになったが、やはりそこに住んだりする以上は外観にも拘りたいと思うのは人の常だ。コンクリートとその中にある骨材に組み合わせる形で石材が設置されるが、低層(三階建てまでの寿居等)の建造物に限ってはタイル貼りも認められているため、綺麗な石材をタイル状に加工する者も仕事に追われていた。


 また内装に木材を多用する所も多くあり、当然その影響で製材所なども忙しく、当然それを家具などに加工する工場も大忙しである。




「工事は大半が順調ですが、やはり人手不足ですね。それと公園整備が間に合っていません」


 議会への出席を頼まれ来てみた所、食料を含む物資は問題ないが、人手不足がかなり深刻な事態に陥っているようだ。結果として提案した公園整備が遅れている。


 そもそも今までは公園という概念が無く、所々にある広場という概念はあっても、そこは文字通りの広場であり、地面がタイル貼りになっているだけ。タイル貼りになっているのは馬車などの通行を妨げない事が主な理由であり、憩いの広場的な発想はさほど無かったようだ。


 貴族や一部の金持ちが庭に植樹する事があっても、広場に木々がある事はまず無く、あったとしても元からある樹木で、そもそも広場の主な使用目的が軍のパレードなどであり、それ以外の時には露店があるといった形。当然その様な場所に邪魔となるような樹木は必要なく、残った樹木は大抵が邪魔にならない位置にあるからという理由であったりする。


 当然今までがそうだったので、どうしても公園の整備が遅れがちになってしまうのは仕方が無いが、この国では違うようにする。


 まあ、前世の受け売りでしか無いのは確かだが、少なくとも首都であるアルフヘイムには、道には必ず歩道を整備し、特に大通りには街路樹も整備する。街を一から作るような事なので出来る事だが、だからこそ最初が肝心となる。


「やはり理解が得られていないか。まあ、予想していた事でもあるし、全体的に工事は進んでいるのだろう? ならば今後の課題だな。むしろこの資料によると、石材所や製材所、それらの加工所の人が足りないようにも思うが、これ以上人を割くのは難しいだろうな」


 移民を簡単に受け入れるという方法もあるが、それはそれで治安の悪化を招く可能性も高い。なので移民に関してはかなりの制限を設けている。それは政府や議員達も承知しており、今のところ反対は無い。


「しかし、製材所や石材所がある程度分散しているのは仕方が無いにしても、加工所はもっと集中しておくべきだと思う。特に木材に関しては家具への加工が多いそうだな。ならば家具の生産工場を設けてみてはどうだろうか? 一つ一つ職人が手作りするのを悪いとは思わないが、今は量が必要なはずだ。まあ、それは加工する石材もだろうが、いくつかの家具は規格化して同じ物を量産し、効率を上げてはどうだろうか? それについては出来るだけ同じ物を量産する事で、価格を抑える事も出来るだろうし、今は数が必要なはずだ。それでも一品物が欲しいとなれば、それはそれで今までよりも多少高価にし、まずは供給量を増やして欲しい。石材から作るタイルなども、出来れば規格化して作業効率を高めて欲しい」


「分かりました。確かに今のままでは需要と供給がまるであいませんからね」


 建設大臣のアンセルム・ダロンドが、すぐさま必要な事をメモする。技術大臣のクリメント・サドムスキーも、同じように手元の紙へと色々と書いていた。基本的にはこの二人の管轄になるだろう。


「それから、魔法薬以外の一般的な薬についても、出来るだけ研究して欲しい。確かに魔法薬は効果が高いが、量産性に問題がある。一般的な薬草を加工した薬を開発は出来ないだろうか?」


「研究は進めていますが、まだ具体的な成果はいまいちです。しかし簡単な傷薬などであれば、何とか量産の目処はつきそうです。こちらはまだ設備の問題もあり、もう少し時間がかかるかと思います」


「陛下。魔法薬で問題ないのでは? その方が今までの経験から、量産は容易ですが」


 医療大臣のターヴェッティ・アルホネンが答えると、議員の一人が疑問を口にしてきた。今までの薬はほとんどが魔法薬であり、確かに作りやすいというのは確かだが、問題がある。


「魔法薬の場合は、その製造にある程度経験がある者が必要だ。それでは長い目で見た場合に、数が足りなくなるのは予想できる。それ故の魔法を使わない薬の開発が必要なのだ。それなら普通の者にでも、専用の設備さえあれば量産可能になるだろう。無論効果は限られるだろうが、治療の全てに魔法薬が必要とは私は思えない」


「確かにそうですね……。失礼しました」


 質問した議員は、それで一応納得したようだ。そもそも簡単な傷薬でさえ、今は魔法薬を使用している。これはいくら何でも無駄だと思う。


「それに考えたくは無いが、魔力災害のような事が再び起きた場合に、魔法は元より魔法薬すら使えないといった事は避けたい。魔法や魔法薬に頼らなくとも、ある程度は魔法などを用いない薬の研究は必須だと思う」


 魔力災害については、私よりも彼らの方が経験している事もあり、それを言われて何人もが頷いている。


「もちろん今までの事もあり、これが簡単でない事は理解しているつもりだ。しかし出来るだけで構わないので、薬の研究開発は継続して行って欲しい」


「分かりました。もう少し人員を割く事も含め、予算もそちらへ多めに配分し直します」


 さすがにここまで言われては、アルホネンも医療大臣としてかなり本気になったようだ。まあ、どうしても今までの技術に頼りがちなのは、ある程度は仕方がないとは思うが。実際に前世でも、最新技術や知らない技術というのは、どうしても受け入れがたい傾向はあったと思う。まあ、日本だったからかもしれないが。


「公園の整備は、土地の確保だけでもしっかりして欲しい。それぞれの位置は計画書にあると思うので大丈夫だと思うが」


 大きな公園も整備するが、街中には多数の小さな公園を設置する予定だ。それらは全て地下に入る入り口を設置し、そこから整備の人員を送る事が出来るようにもなっている。他にも一部の公園の地下には、魔導炉を設置する。これは機密事項なので、設置する場所を知るものは限られているし、入り口も地下道への入り口の中にあり、扉は偽装する。扉自体も対魔法防御など様々な防御機構を施すので、早々下手な事は出来ない。そもそも事前に許可された魔法以外を地下で使用しようとすると、それだけで警報が出る仕組みになっており、一定区画ごとに防壁が降りる仕組みにもしている。


「あと遅延は無いと思うが、住宅整備の方は?」


「建物は問題ないのですが、一部で遅延が。主に内装というか、家具類ですね。原則として設置する家具の大きな変更などは、住居やその他施設の目処が経ってからという話だったのですが、一部でどうしてもという声があり、それを断りきれない者もおりまして、家具作りの影響で内装工事に若干の遅れが出始めています。気持ちは分からなくは無いのですが、これ以上遅延が続くと他の事に大きな影響が出る可能性があります。特に木材関係の加工で遅れが目立ちますね」


「家具か……」


 後から設置するよりは、設置する時に希望の物を入れたいという気持ちは、確かに分かる。しかし全体の工事が遅れるのは不味い。


「木材の伐採状況はどうなっているんだ?」


「そちらは問題ありません。むしろ家具生産などの影響で、材木置き場の方が問題になる可能性もそろそろあるかと」


 資源開発大臣のペッレルヴォ・リュハネンが、手元の資料に一度目を通してから発言する。彼はオーク族ではあるが、元々オーク族の力が強いためか、魔法に頼らずに力技で伐採を進めるオーク達の指揮もしている。ただし魔法にあまり適性がないのか、オーク族は魔法による細かな加工などを得意としない。しかしその力で木材や石材の確保を行うのは、他の種族と遜色ない。むしろよくオーク族は他種族を繁殖のために襲うといった事もなく、穏健な種族と言える。


「木材の供給量を少し減らして、それで余った人員を他の事に回せるか検討して欲しい。必要なら、君の判断で補佐役を増員しても構わない」


 どうしても政府や議会などがまだまだ手探り状態のため、こういった助言も必要になってくるのは仕方がないだろう。数年から数十年単位といった長い目で組織を作る必要がある。


「他にも資材が余剰になっていれば、人員を縮小し、他の事に回して欲しい。細かい事は君らに任せるし、その点で口出しをするつもりはない。勿論、助言が必要ならいつでも構わないが」


 本来なら首相であるアルホ・ヴァータモイネンに任せたい件が、今のところかなりの数が私の決裁待ちになっているのも事実だ。なるべく早くこの状況を改善したいが、これについてもしばらくは時間がかかるだろう。それに私も正直急いで政府や議会を立ち上げたと今さらながら思う事もあり、ここは我慢する所だと感じている。


「他になければ、これで私は失礼したいが」


 質問がなかったので退室する事にする。若干の視察も兼ねながら、護衛を連れて街の様子を見てから帰宅する事にしよう。


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ご苦労様です」


 最初に出迎えてくれた家族はベティ。エリーとイロは何やら家庭教師と相談しているらしい。息子達の教育方針で何かあったようだ。


 どうしても書類仕事が多くなってしまいがちで、ここ数日は子供達の顔さえ見る事が出来ずにいるのが悔しい所だが、だからといって今はサヴェラ立憲王国が国として生まれているさなかだ。そんな中で私一人の我が儘を通すのは筋が違うと思う。


「街の開発はしばらく続きそうだよ。今度、鉱山などを視察に行った方が良いかもしれない」


「そんなにですか?」


 私が脱いだ上着を彼女が受け取ると、それをさらにメイドの一人が受け取り、専用のブラシで埃を取ってゆく。以前には考えられなかった事だが、今では慣れた事だ。


「お戻りになられたと、二人に伝えて。すぐに夕食にしますよね? それとも、残りのお仕事をされます?」


「食事にするよ。呼ぶ事が出来たら、子供達も頼む」


 せめて夕食時くらい子供達と一緒に過ごしても良いだろう。


「そういえばエリーナが相談があると言っていましたよ。そちらはどうします?」


「夕食の後にしたい気分だな。正直、今日の議会は疲れた」


 視察は視察で大変さもあるが、そちらの方が基本的には見ているだけなので、気分的には楽である。それが良い事かどうかはまた別となるだろうが。


「無理はなさらないで。子供達も心配していましたよ?」


「そうか。しばらく会っていないからな。心配をかけすぎたか」


 いくら特殊な生まれ方をした子供達もいるとはいえ、実年齢はまだまだ幼い。その辺りを失念していたのかもしれない。


「では、子供達のためにも夕食後は少し時間を取ろう。エリーもそれなら文句は言わないはずだ」


 そもそもエリーが文句を言う事は少ないが、子供達の事となると少し事情が変わる。だが、今回はその心配はいらないだろう。

毎回ご覧頂き有り難うございます。

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