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第二百四十三話 ヘルガ、誕生

2018/01/23 内容の修正を一部行いました

 元宇宙船のアマツカミボシから事前に伝えられていた場所へ、私はエリーナ、イロ、ベッティーナを連れて歩く。子供達に関しては、今回は見送った。すぐに会う事にはなるだろうが、この遺跡とも言える宇宙船のなれの果てを目にさせるのは、もうしばらく後でも構わないだろう。アマツカミボシ改めヘルガ・バスクホルドとなる彼女が現在どの様な状態であるのかも気になるので、いくら見た目や精神的な年齢が高そうだとはいえ、無理をするつもりは無い。


「それにしても結構な距離を歩くのね」


 今回は私も初めて入る場所でもあり、事前に場所を知らされてはいるが、徒歩でおおよそ一時間の距離はある。しかも既にシオツジは最低限の稼働状態であり、尚且つアマツカミボシの直接的な案内がある訳ではない。私も含めて皆が緊張を隠せないでいる。


「事前に場所は伝えられている。アマツカミボシから渡された地図に間違いが無く、私達が道を間違っていなければもうしばらくで到着するはずだ」


 それを聞いてか、三人がどこか安堵した雰囲気だ。


 ちなみにベッティーナは、少し大きめの簡易的な服を入れた鞄を持ってもらっている。目覚めた直後は全裸らしいので、その為の用意だ。


 それにしてもいくら通路に明かりがあり、途中途中に通路の番号などが表記されていたとしても、誰もいない通路をたった四人で歩くのに不安が無いと言われれば嘘となる。しかし今回は護衛が他に必要であるとは思えず、そもそも私達であれば大抵の事には対処可能なはずだ。そもそも魔法に関しては私とエリーナで過剰戦力であるし、イロやベッティーナもそれなりに体術の覚えがある。むしろ私達四人が揃った段階で、下手な騎士団よりもはるかにその攻撃能力は高く、防御力も高い。


 しかし慢心は怪我の元だ。当然私は探知魔法を先ほどから使いっぱなしであるし、同じようにエリーナも探知魔法を使いつつ、周囲に異常が無いか確認しながら進んでいるので、早々奇襲されるような事は無いだろう。単なる魔力的な確認だけでは無く、通路やその壁奥にある物も、いわゆるソナー魔法で調べながら進んでいるため、少しでも動きがあれば当然気が付く。


 いくら数多く通った施設とは言え、流石に全てを把握している訳では無い。実際、これまで探索したエリアは全体の五パーセント程度だと聞いている。流石に罠の危険は少ないと思っていても、緊張感は拭えない。


 そもそも何をもって『罠』とするかの問題もある。


 一般的にダンジョンなどでは、罠と言えば落とし穴や落石を起こす装置だったり、場所によっては通路ごと中の人を爆破する物もあるそうだ。しかしここは宇宙船の中なので、流石にそういった罠という事は無いはず。だからとは言え、宇宙船としては罠で無かったとしても、私達に対しては罠になりる設備が無いとは言いきれない。


 それでも一応は、事前に安全だとシオツジの情報からアマツカミボシが安全だと保証した通路などを進んでいるので、警戒はあくまで念のためだ。


「さっきの大きな部屋は何だったのかしら?」


 もぬけの殻とも言える大きな部屋を後にした後だったが、イロはそこがなんだったのか疑問だったようだ。地図によると、そこは宇宙船の乗組員が冷凍睡眠状態に置かれていた部屋で、睡眠状態から解放され、エルフ族となった者は地上に。それ以外の者は別の部屋に移設したらしい。出来るだけそういった事を集中管理するために、部屋の中には多数のレールがあり、それを用いて他の部屋へ移設を簡単に出来ると事前に聞いていた。


 確かにこの部屋で何人を目覚めさせたのかは不明だが、出来るだけ集中して管理することは理にかなっている。その方がこの宇宙船のエネルギー消費を抑えるための機能でもあるのだろうが、同時に私は、私達に冷凍睡眠状態の者達を下手に見せたく無かったのではないかと考えている。


 今現在はまだ生存しているだろうが、いずれ残された者達は死を迎えるだろう。そんな光景をシオツジやアマツカミボシが私達にできる限り見せたく無かったのではないか。


 流石にそこまでは説明しなかったが、イロにはここが元冷凍睡眠状態の者達が置かれていた場所だという事だけは説明した。


 奥に進むにつれ、通路には配管らしき物などが剥き出しとなった場所となってくる。恐らくはこの元宇宙船の心臓部に近づいているのではないか。整備などの関係から、全てを壁の中へと隠すのは、やはり限界があるのだろう。実際にバルブらしき物や、言葉は読めないが何らかの操作盤らしき物もいくつか見つけている。


 さらに奥へと進むこと三十分ほどだろうか? やっと目的地の部屋の前に到達した。当然部屋には扉があり、扉すぐ近くの左側には、文字こそ読めないが何らかの操作盤がある。それを事前にアマツカミボシから教わった順序で操作すると、扉が上に開いた。どうやら扉は二重になっていたらしく、隔壁のような役割もあったようだ。


 扉が開くと同時に、中の照明が点灯したようで、眩しくない程度に昼白色の灯りにで部屋が満たされる。そして部屋の中には、まるで前世の映画やアニメで見たような、上部が半透明の物で出来た、冷凍睡眠カプセルのような物が置かれていた。大きさはちょうど人が一人入る大きさだ。


 そのまま私と共に四人で近づくと、それは半透明になっており、中に人状の者がいることしか分からない。


「彼女がアマツカミボシ?」


 エリーナがカプセルの周囲を観察している。イロとベッティーナは、横に立った私の少し下がった横で待機しているが、どこか恐れているような顔つき。まあ、このような物を見たことがないのであれば、こういった態度が普通なのだろう。むしろエリーナが特別と考えるべきだろうが、以前に私とエリーナは似たような物に入れられていた事があるので、多少なりとも耐性があるとも言える。


 時間的には間もなくどこかが開くはずであり、私達四人はそれを待つしか無い。操作盤なども無いが、下手に触って問題が起きることは避けるべきだろう。


 数分が経過して、半透明の蓋が透明になる。中には肩よりも少し長い金髪で碧眼の女性が入っている。彼女がアマツカミボシであり、これからはヘルガ・バスクホルドと名乗る事になるはずだ。


 徐々に透明となった所から中を見ると、どうやら冷凍睡眠状態でも生存可能なように、口や鼻に管が付けられており、胸や頭などには何かの配線らしき物がある。まるで心電図や脈、脳波の測定をしているような配線にも思える。


 蓋が完全に透明となると、各所に取り付けられていた管状の物や配線が勝手に取り外され、その後に胸にある配線の一部を残して、全ての配線が勝手に取り外されて、管状の物と配線はカプセル状のどこかに消えていった。


 最後に何かの白いガスらしき物が数秒間カプセルに充満した後、蓋が自動でカプセルの中央から両側に分かれるよう開いた。すかさずベッティーナが事前に一応用意しておいた胸までを覆う布を被せ、そのままアマツカミボシ改め、ヘルガ・バスクホルドが目覚めるのを待つ。


 さらに数分ほど待つと、彼女がゆっくりと瞼を開けた。そしてゆっくりと上半身を起こしたが、その時に布が捲れてしまったので、再びベッティーナが布を調整して全身が見えないように覆う。


 少しして私達に気が付いたのか、彼女が微笑んだのが分かった。


「気分は? 何かおかしな所はあったりしないか?」


 一応は安全に目覚める事が出来るようになっているらしいが、それでも確認を怠るわけにはいかない。そもそもこれからは彼女も私達の家族同様だ。


「……大丈夫そうです。それよりも、この身体では初めましてですね。元アマツカミボシですが、今はヘルガ・バスクホルドと名乗れば良いのでしょうか?」


「ああ。それで構わない。一応服は用意したので、とりあえずはそれを着て欲しい。三人とも彼女を手伝ってくれ」


 私は数歩下がり、あまり彼女を直視しないようにしながら、着替えをする彼女を確認する。その動作には、特にこれといっておかしな所は無さそうだ。服を完全に着て、カプセルの中から完全に出ると、そのカプセルの端に一旦彼女が座った。少なくとも見た目はエルフ族であり、特に他のエルフとの肉体的違いは見分けが難しいが、今の段階では問題ないだろう。


「歩けるならここから出て色々と話を聞きたいところだが、大丈夫なのか?」


「ええ。少し倦怠感のような物はありますが、それ以外は問題ありません。それに肉体を持つというのは、正直まだ若干違和感があります」


「それは追々慣れると思う」


 そんな会話をヘルガと交わしながら、イロが飲み物を差し出す。ヘルガは素直にそれを受け取り、中の栄養豊富に調整したスポーツドリンクのような物を、ストロー越しに少しずつ飲む。


「とりあえずここを出てから、一応健康診断を受けてもらおう。大丈夫だとは思うが、何かあってからは遅い」


「はい。仰せのままに」


 こうしてアマツカミボシ改め、ヘルガが私達の一員に加わった。

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