第二百三十話 フォルオ帝国滅亡
2017/07/19
一部記述の見直しと、誤字の修正を行いました
2017/07/20
一部記述の見直しなどを行いました。
フォルオ帝国は竜人国家であり、多くのワイバーン等を利用した空軍を保有している。他にも白兵戦に関してはかなりの定評があり、同規模で同じ地形での戦闘なら、過去で負けた事が無いとすら言われている。
竜人種といわれている彼らだが、その姿は様々だ。
誰もが鱗を持つ種族ではあるが、一般的な他の種族と同じ肌の色と区別が付かない場合がほとんど。原種と呼ばれる一部の者には尻尾が存在するが、原種の人数は少ない。ほとんどは竜人種同士でも混血を重ねた結果、鱗の存在を除けば他種族と変わらないだろう。種族の特性として比較的力は強力であるが、必ずしも他種族を圧倒する程ではない。それでも自前の鱗はちょっとした剣や槍、弓の攻撃を防ぐだけの硬さはある。しかしそれだけと言えばそれだけでしかない。ただ、竜人族は早くから空の移動手段として魔物などの使役を行ってきた。結果としてフォルオ帝国は軍事大国の道を進む事となった。
フォルオ帝国帝都ルベルティが魔導炉爆弾で焼失した後、国内各地の戦力が急ぎ集結し、サヴェラ立憲王国からの防御態勢を整えようとした。特に移動では、本来この世界で最高ともいえるワイバーン等の部隊を国境付近に待機させ、サヴェラ立憲王国の空からの侵入を阻止しようと試みたのだ。
しかし、早期に集結した空軍は、翌日に地獄を見る事となる。
対空特化武装を施されたニカモ戦闘攻撃機二機が、高度五千Mでフォルオ帝国領内に侵入すると、すぐさま魔導レーダーで飛行物体の捜索を開始した。そしてワイバーン等が集結している基地の存在を確認し、四匹のワイバーンを魔導レーダーが捕らえる。
フォルオ帝国に侵入したニカモ戦闘攻撃機は、固定武装である一C機銃二門と二十C機関砲一門の他に、翼には三十C大型飛行生物・魔物用機関砲が合計で六門搭載されており、翼の中には三十C機関砲弾六千発が六門分内蔵されていた。高出力の魔動エンジンと魔石燃料だからこそ出来た事であり、これが地球なら到底出来なかった事だろう。そもそも重量過多で離陸すら出来ないはずだ。
二機のニカモ戦闘攻撃機はすぐさまワイバーンへと方向舵と補助翼、昇降舵を操り、時速五百KMで高度を維持したまま急接近する。対するワイバーン四頭とその騎手は上空千Mに二匹、五百Mに二匹の構成だが、目視でしか敵の発見を行えない彼らがニカモ戦闘攻撃機を視界に捕らえた時は、機関砲を連射する姿であり、瞬時に赤い空の華と化して地上へと落ちていった。
ニカモ戦闘攻撃機はそのまま一度機首を上げ、地上にいるワイバーン等の数を確認すると、今度は上空三百Mで基地に突入し、全ての機銃と機関砲が火を噴いた。
突然空から無残な形で落ちてきたワイバーン四匹とその騎手に辺りが混乱している中、そこへ降り注ぐ多量の機関砲弾。二機のニカモ戦闘攻撃機は編隊を組みながら、一直線に基地の上を駆け抜ける。地上には数十匹のワイバーン等が絶命したり、すでに空を飛べる状態ではない程の怪我を負い、残りのワイバーン等も突然の攻撃に恐怖して暴れ出している。そこへ再度侵入してきたニカモ戦闘攻撃機は再び機銃掃射を行いながら通過。その時点でフォルオ帝国空軍は八割が損失した。
そもそもこの世界の大型飛行生物は、魔力で飛行する。勿論翼は必要だが、翼に魔力を纏う事によって本来なら離陸すら出来ない自重を制御する。そして大型飛行生物に共通するのが、平地では離陸時は助走を付けない。翼に強力な魔力を纏って行う垂直離陸に近いものだ。そのため大型飛行生物が飛び立つ際は、どうしても時間がかかるのが常であり、一般的に平原などで暮らす大型飛行生物はいない。大半は切り立った崖や標高の高い山などに住んでおり、そこから垂直離陸ではなく、滑空飛行から始める事で魔力の消費を抑える。そうする事で大型化する要因にもなったが。
だがフォルオ帝国のように大型飛行生物で空軍を有する国は、多少離陸に時間がかかったとしても、地表から垂直離陸させる事にした。現実的に滑空飛行から飛び立てる場所を確保できないのがその理由だ。仮に塔などを作ったとしても、それを上らせるより垂直離陸した方が早いという理由と、そもそも滑空飛行を行うための高さとなると、かなりの高さを要求される。
完全に統率を失ったフォルオ帝国空軍は、三度目の機銃掃射により完全に全滅。フォルオ帝国空軍は敵が何者であるのかさえまともに分からないうちに、その姿をこの世から消す。時間にしてほんの三分程の出来事であった。そしてこの日、鉄壁と言われたフォルオ帝国の空の守りを喪失した。
翌日、早朝に集結場所である空軍基地に到着した最初のフォルオ帝国陸軍は、基地の惨状に思わず息を飲んだ。そこには無残にも殺されたワイバーン等の死体が散乱し、同様にそれに騎乗していたはずの兵士までもが目を背けたくなる惨状。一応は支援部隊としての陸軍もいたが、それも同様に無残な姿をさらしている。一体何が起きたのかさえ分からない。
そこに戦いの中の誇りなどまるで見いだせず、ただ虐殺の限りを尽くされた光景は、到着した彼らの精神を蝕むのにそう時間はかからなかった。三分の一の兵士はその場で嘔吐を繰り返し、三分の一はただただ唖然とするばかり。残りの三分の一も、この惨状をどのようにすれば良いのか分からずにいる。
しかし悲劇はそこで終わりではなかった。
次第に空軍基地へと集まるフォルオ帝国陸軍の上空一万Mから侵入した十五機の爆装装備をしたニカモ戦闘攻撃機と、魔導焼夷弾を満載した二十機のニスカラ重爆撃機は、その高空から敵軍の集結を見守りながら、ある程度の数が集まった事を確認してから高度を次第に落として上空三千Mまで降下し、まずニスカラ重爆撃機が基地周辺を含めて魔導焼夷弾を次々と投下。上空から空気を切り裂く音を聞いたフォルオ帝国陸軍は、空を埋め尽くすような爆弾に恐慌状態となる。そして次々と起爆する魔導焼夷弾により、彼らは地獄の炎で焼き尽くされていった。
それを護衛しているニカモ戦闘攻撃機は、眼下に映るいくつかの建造物に狙いを定める。それは特に基地内に目立つ比較的堅牢な建造物。狙い澄ましたかのような破砕焼夷弾の投下を受け、建物が次々炎上しながら崩壊する。早朝という時間にもかかわらず、基地の周囲は昼間のような明るさで照らされており、かなり距離の離れた町や村まで爆発音が響き渡った。
基地の掃討を終了した爆撃隊は、そのまま近隣の町や村へ容赦の無い爆撃を開始し、たった数時間で多くの町や村が炎に包まれる。事前に道の大半を爆撃や砲撃で潰していた事により、フォルオ帝国の住民が逃げる場所はなかった。
そこへ遠距離砲弾を装填した砲撃が加わり、爆撃機からの誤差修正情報を元にして次々と堅牢だったはずの建造物までもが瓦礫と化してゆく。まさに一方的な虐殺劇。しかもそれを守るための陸軍ですら、既に壊滅状態であり、一部の町や村では散発的な応戦を行ったが効果はまるで無い。高空を飛来するニスカラ重爆撃機にその攻撃は到達する事はなく、むしろ反撃を行ってきた所をさらにニスカラ重爆撃機が攻撃を行うと、その反撃はすぐさま終わりを告げた。
残存している数少ないワイバーン等の航空戦力は、見つけ次第ニカモ戦闘攻撃機が葬ってゆく。そもそも爆撃隊は高度三千Mを常時保っており、例えフォルオ帝国の航空戦力が万全だったとしても、その被害を抑える事は極めて難しかったであろう。最初からその高度にいれば、また結果は多少違った可能性もあるが、そもそも爆撃隊がそれを許さず、ニカモ戦闘攻撃機が護衛する。そしてどこからともなく襲いかかる砲撃だ。
さらにニカモ戦闘攻撃機は、小型であってもワイバーン等が現れた地域の掃討を念入りに行う。基本的な攻撃方法は搭載された機銃と機関砲でしかないが、飼育されているワイバーン等の厩舎は風通しなどの関係で木造建築。しかも空からではどうしてもその飼育エリアが広いため目立つ。ニカモ戦闘攻撃機からすればカモでしかなかった。しかもそれらにいた飛行型生物は大半が、訓練中や生まれたばかりの物ばかり。そもそも戦力として機能しない。しかしニカモ戦闘攻撃機はそれすら容赦せずに蹂躙する。もはや一方的な蹂躙劇。
他の国とは違い、航空戦力の有用性を見いだしていたフォルオ帝国であったが、前世の記憶を持つクラウディアにとって、それは全て想定された事。そして使われた爆弾は実際の所、単なる魔導焼夷弾では無い。帝国を抹殺するためだけに作られた対帝国用魔導焼夷弾は、たった一発でもその内蔵された魔石のエネルギーを十全に、そして瞬時に使い周辺を地獄へと変えてゆく。
原理としては、クラウディアにとっては難しい事ではない。
その昔、日本で使われたインプロージョン方式プルトニウム活性実弾F―31、通称ファットマン――一般には長崎型プルトニウム原爆――と、その後に開発された水爆。それの爆縮レンズの構造を真似ただけ。その基本的構造は、クラウディアの前世ではインターネットで見る事が出来た。
爆弾の中心にある信管が最初のトリガー。そのトリガーは魔石の魔力を均一化し、純粋な魔力の塊へと変貌させる。そうしながら周囲に魔石を内蔵した杭を射出し打ち込む。射出された杭は遠くてもせいぜい十Mの範囲にしか散らばらない。
放出された杭は周囲に固定された後、次のトリガーを引く。それは最初のトリガーと同じく内蔵された魔石を純粋な魔力の塊に変換後、元の爆弾の中心部に魔力を向かわせる。中心部に向かう為のエネルギーも純粋な魔力の塊から発せられた物。それは最初のトリガーとなった魔石の変貌した魔力の塊へ高速で突入する。その速度は、最大距離で突入時に光速の五十パーセント近くまで及ぶ。魔法という科学では無い物だからこそ出来た仕組みであり、杭から放たれた魔力の塊のエネルギーは、この時点でほとんどが消えてしまう。しかし残ったエネルギーだけでその効果は問題ない。何せ光速の五十パーセントまで達したそれは、それその物が破壊的な効果を及ぼすからだ。
突入した微かな魔力の残滓が、最後のトリガーを引く。高速で突入しながら最初に発生した魔力の塊が瞬時に圧縮され、元の大きさであった魔石の数億分の一まで縮んだ後、それは爆縮という形で発現する。
杭が着弾してからここまで、経過した時間はほんの数ミリ秒。杭射出と着弾を含めても、一秒とかかっていない。
そして地上で形成される人工太陽。全ての魔力を十全に使用したからこそ出来る人工の光と熱。その中心温度は瞬間的ではあるが百万度を優に超える。例えそれが一秒後に一万度まで下がるとしても、その一秒で周囲が蒸発するにはあまりに十分すぎる時間だ。
ただし原爆や水爆と決定的に異なるのが、この爆弾がプルトニウムや水素で構成されていない事。そこからはあらゆる放射線が発生しない。そしてその爆発の力は距離に反比例し、一発の爆弾の効果範囲はせいぜい直径百Mに過ぎない。そして、その範囲内であれば、どうあがいた所で死を免れる事は不可能。
また爆縮が行われる間に、周囲には杭から放たれた魔力が、逆方向にも放たれる。最大で光速の五十パーセントで周囲に散らばる魔力は、そのままエネルギーの塊であり、それ自身が破壊を及ぼす。そうしながら周囲に魔力を散布し、爆発後のエネルギーを用いて周囲を高温で焼き払う。爆弾本体の爆発が終わった後も、その魔力の残滓が周囲を高温に保ち、その高温が自然発火させるのには十分以上。例え爆弾の効果範囲から外れていても、その熱波で次々と自然発火する。その範囲は爆弾の爆発範囲よりも、場合によっては大きくなる。
クラウディアは新型の魔力焼夷弾としか周囲に説明していないが、実際にはそれよりもはるかに恐ろしい凶悪な兵器であった。規模こそ小さいが、実際の所は魔力版原水爆とも言えるだろう。
そんなフォルオ帝国専用の爆弾が、フォルオ帝国を焼き尽くす。決して生命が存在不可能な温度に晒される爆弾の効果範囲と、さらにその周囲を巻き込む凶悪な熱波がフォルオ帝国を蹂躙し、一人の生存者も許さない。そもそもクラウディアは、生存を許すつもりが毛頭無い。冷酷非道を貫く事を決めたクラウディアに、そしてこの戦争の引き金となった国に対して、クラウディアは容赦の無い攻撃を与え続けるのだった。
フォルオ帝国に国境を接する国で、今回の戦争と無関係だった国々は、その光景に恐怖した。
毎回ご覧頂き有り難うございます。
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こちらもよろしくお願いします。
本文中にも一部記載がありますが、単位は以下の通りです
長さ
1C≒1センチ
1M≒1メートル
本文中にある機銃と機関砲の区別は、現代の基準を元にしています。
20mm未満=機銃
20mm以上=機関砲




