第二百十八話 最近、こんな事ばかりな気がする……
エストニアムア王国の混乱は徐々に広まりつつあるようで、当然僕らが新しく建国したサヴェラ立憲王国に人が流れてこようとしている。
今の所は事前に何とか間に合った壁と、国境警備に派遣した兵士でギリギリ対処しているけども、破綻するのは時間の問題だとペララさんからの報告。
労働者として冷凍睡眠から目覚めさせた人達は徐々に各地へ派遣され、一応は文句も出なくなってきた。ただし人が足りないのは相変わらずで、もっと人が欲しいとは言われ続けている。かといって冷凍睡眠から解放する人達の量を簡単に増やす訳にも行かない。食糧の方こそ問題ないけども、住居が問題になるのは時間の問題。
しかも明日から兵隊として最初から事前に教育された冷凍睡眠の人達が目覚め始める。
アマツカミボシは特に何も言ってこなかったけど、眠っていた人達はその大半が軍とはまるで関係ない人達だったらしい。それを聞くと、本当に良かったのか今でも疑問に思う。この辺は僕の前世が日本人だった事もあるとは思う。
エストニアムア王国周辺はかなりきな臭い状態で、さらに追加で偵察機二機を加えて四機体勢。超高空からでも、新しく開発した熱源探知魔道具などで、エストニアムア王国の国境近くに数万の兵が集結している事は把握済みだ。しかもエストニアムア王国側の近隣都市や村からは、何か理由があるのか逃げ出している人が少ないとの情報もある。恐らくは住民に連絡されていないのだとは思うけども、かといって僕らがそれを教えるのもおかしな話だ。
「やっぱり戦争は避けられそうにないね。それに町から避難している人もあまりいないみたいだ。むしろ僕らに近い方程、逃げ出している人が増えている。かといって、受け入れられる状況でもないし、もしかしたら避難民に紛れてスパイがいる可能性もある。とてもじゃないけど、入国はさせられない」
「そうね。でも、国境沿いの治安は悪化しているんでしょ?」
エリーと地図を見ながら、先ほど報告に来たペララさん達の残していった書類を傍に引き寄せた。
「あの、臨時収容施設案はどうかしら? このまま国境沿いの治安が悪くなるのは、今後の事を考えると悪い考えとは言えないと思うわ」
「それは分かっているんだけどね。問題はスパイとかが紛れ込んでいたとして、それを十分に判別出来ないし、そういう人なら抜け出してこっちに来るのも簡単だと思う。全く、問題だらけだよ。エストニアムア王国側は対処する気が無いのは明白だしね」
「収容施設の出入り口を一つに絞って、外に出る事を禁じる事は? それなら多少は何とかなると思うし、私達に協力してくれるなら、こちらに引き込むのも私は良いと思うのだけど?」
「その判断が簡単に出来ればね……。現実は簡単じゃないよ」
そもそも国境沿いにいる人だけでも、確認出来るだけで数千人規模だ。食糧の備蓄はまだまだ問題ないし、それも配給制にすれば最低限で済ます事も出来るけど、何よりこっちも住む所を用意出来ない。
「最低限で良いなら、余っている鉄で急造の家とかを作れないかしら? それと敷地内に限っては農作物の生産も認めるとか。でも、武器になるような物は持たせられないわね……」
そこが問題。何せどんな形であっても、住む家は急造品になるはず。当然文句を言ってくる人が出てくるのは時間の問題だし、そこから下手に反乱でもされたら目も当てられない。
「あ、二人ともここだったんですね」
ベティが僕らの事を探していたみたいだ。何かあったのかな?
「昼食が出来たので呼びに来たのと、鉱山の方から連絡があって、鉄が余りすぎて保管場所に困っているという連絡があったの」
それを聞いて、僕らは思わず互いに顔を見合わせた。
「クラディ。やっぱり急造品でも作った方が良いと思うわ。それと、服以外の持ち込みを禁止したらどうかしら? 食べ物は用意するのだし、それで納得しなければ入る事を認めなければ良いのよ」
やっぱりエリーの方が僕なんかよりもこの世界基準で考える事が出来るからだと思うけど、こういった時に思い切った提案をする。
「そうだね。ちょっとペララさんとかにも相談するとして、その方法で何とかならないか考えてみよう」
強制収容所のようにならなきゃ良いけど、今のままだと何も解決せずに問題ばかり増える。それなら多少は強引な手段も使わないとダメだろうな。
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