第二百三話 遷都
2017/09/12 誤字の修正を行いました
2017/01/17 19:25
出だし部分に一部追記しました。
「仕方がないわよ。私からも一応は伝えたけど、王国は何も言ってこないのだから」
新領都となるアマデウスの開発に、僕が加わってから二ヶ月程。アマデウスの開発がほぼ終わり、僕は一度エリーの所へ帰ってきた。ちなみにベティはアマデウスの新領主館。子供達がまだ幼いし、あまり頻繁に移動させるのもどうかと思ったんだよね。何より、少しだけどベティも落ち着いてきたみたいだったから。
「ねえ、エリー。王国が何も言ってこないって、どういう事? どう考えてもおかしいでしょ?」
急に人が二千人も増えた。当然それに伴って、色々な事があると思うんだけど、王都の方は何も反応がないなんて。
そもそも、最近の王国はなんだかおかしいと思う。
王国そもそもの状況が掴めないのはもちろんだけど、継承権のある王家の人達が移住してきたり、頻繁に閣僚級の人達が訪れている。常識的に考えたら、何かあると考えるのが自然だ。でも情報が全く無い状態なので、事実上こちらからは何も出来ない。
「私もおかしいとは思うわ。でも何も答えてくれなければ、私にだって何も出来ないわよ。なら、今は私達がすることをやるだけだわ」
「エリーがそこまで言うなら……でも、僕らも注意した方が良さそうだね」
今はエリーの執務室だし、中にいるのは僕とエリーだけ。扉に直接耳を当てたとしても、早々聞こえるとは思えない。何より僕らは声を若干抑えて話している。
「とりあえず遷都の目処が付いたのだから、通達を出すわ。あと、発掘品のバスは便利そうね。クラディが作ったのより、乗り心地が良いって話だけど?」
数台のバスが動く状態で残っており、僕はそれを今回の移動で使ってきた。運転もほぼ同じというか、オートマ車で前世のバスとほとんど変わりが無い乗り心地。僕が作ったのと比べるのが間違いだと思う。
「相当昔の物のはずだけど、アレを僕らが作れるようになりたいとは思うな。エンジンに関しては多分無理だけどね」
エンジンの事をアマツカミボシに聞いたら、僕でも知らない技術だった。と言うより、オーバースペックな気がしたくらいだ。なぜならエンジンは中に複数の超小型ブラックホールがどうやらあるらしくて、それを元に動かしているって言うのだから。ブラックホールをエンジンに使うだなんて、そもそもブラックホールを作る方法すら分からない。
「便利な物があれば、それを使うだけよ。クラディは、壊れないように十分注意はしておいて。多分クラディが見つけた遺跡の中に交換用の部品があるのかもしれないけど、私達には交換すら無理だと思うから」
「タイヤくらいは交換できると思うけどね。まあ、エリーの言うことも分かるよ。今は見つけたバスを使って、こことアマデウスをピストン輸送させよう。それと僕が作った魔道トラックで、住民の物資も一緒に移動させるつもりだから。発掘した中にトラックもあったけど、そっちはアマデウスでまだ使っているからね」
何も全てを発掘品に頼ることはないし、自分たちで出来る事はしないと。それに予定よりもはるかに早く町が完成したので、壁が出来て不便なここよりも、早くアマデウスで安定した生活を送れるようにすることが重要だと思う。
「その辺は任せるわ。じゃあ、私は残っている住民に通達を出すから、クラディは他に必要なことをお願いできるかしら?」
「他にと言われても、しばらくいなかったから分からないんだけど?」
「実験室とか、その辺を片付けておいて欲しいの。向こうに新しく作ったんでしょ? そっちですぐにまた色々出来るようにね。他に何か気になることがあったら、全部任せるわ。私は住民の移動の方で忙しくなると思うから」
そういえば実験室のことをすっかり忘れてた。あの発掘があったからかな? でも、確かに必要な物があるし、今度はアマデウスと鉱山などを効率よく鉄道で結ぶようにしないといけない。ここにある金属化した壁も、出来るだけサンプルが欲しいしね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どうやら遷都が決まったようです」
現在のバスクホルド子爵領に滞在している王子や閣僚級の人々が集まる、町の外に臨時で作ったテントで、エリーナが発表した遷都について話し合いが持たれていた。もちろん全員が新しい領都アマデウスに移住するが、その前に安全な場所を確保する必要があり、彼らの中で話し合いが持たれている。
「聞いていたよりもはるかに早いが、なぜだ?」
エルフの財務卿でキンモ・ヨルマ・マリネン伯爵は、事前に渡されていたスケジュール表を見て疑問を口にする。
「報告は受けているのですが、何やら発掘品を使用したとか。詳細は現地でなければ確認できないでしょう」
それに答えたのはコボルト族の為同じ伯爵でありながらも、内務卿国土院長官という内務卿が管理している下部組織に属するオディロン・アルセーヌ・セニョボス伯爵。
「安全の方は?」
軍務卿の補佐をしているクラニス族のホラント・エグモント・フィリップス男爵が、当然の疑問を口にする。
「事前に調査はしております。発掘した所から新たに二千人のエルフが出てきておりますが、そちらも問題は無さそうです。少なくとも、他領よりは安全かと」
同じく軍務卿の元で働くウルフ族のヘルゲ・ゲープハルト・ラインターラー男爵が答える。彼は主に軍での諜報部隊を指揮しており、今回も作業を手伝わせるという名目で、密偵を何人も放っている。
「そうか。ならば我々も準備をしなければならないな。王太子殿下他、王子、王女、よろしいですか?」
マリネン伯爵の言葉に、居合わせている王族全員が頷いた。
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新作書き始めました
「異世界は全てスキル制!? ~スキルで最強を目指そう!~」
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今度は普通に冒険物となる予定です。
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