第二百二話 勢いで起こした結果は?
二千人の冷凍睡眠状態だった人が起きて、既に一週間。アマツカミボシの協力があってなのか、起きた人達はすぐに仕事が出来る状態。おかげで建設が一気に進んだ。
ただ、個人的に複雑なのは、冷凍睡眠状態から回復した人達の方が、元々作業員としてきていた人達よりも多い事。そして、なぜか全員が『エルフ』となっている。
アマツカミボシによると、どうやらこの世界で適応できる肉体にするには、エルフに肉体改造するのが一番らしい。しかもこの世界で生きていくのに必要な処置として、最初からかなり魔力も高い設定なんだとか。実際、今までいた普通の作業員の数倍は魔力がある事が分かったくらいだし。
そこで問題になったのが、元々いる人達の魔力について。
アマツカミボシの協力があれば、魔力を高める事が出来るんじゃないかとイロが言い出したのがきっかけだ。そしてアマツカミボシによると、それは可能なのだとか。
でも、問題がここで発生。魔力を高めるには、一度アマツカミボシの管理下で肉体調整をしないとダメなんだとか。それに調整する時間として三日程度かかり、さらにその間は意識が無い状態になるらしい。
「悩むわね。確かに作業員が増えたのは嬉しいけど、今までの人達に『アマツカミボシが魔力を高くしてくれるから、一時的に意識を数日失うけど大丈夫?』って、流石に私でも言えないわ」
「僕も言えないからね。それにどんな事になるのか僕も分からないし」
もう一つ問題があって、魔力を高める処置をすると、その処置の過程でどんな種族の人でもエルフとして肉体を再構成されるのだとか。
当然ここにいる人達はエルフばかりじゃない。魔力が高くなる代わりに、種族まで変わるなんて、本人が納得するとは思えないんだよね。
「僕としてはエリーに一度聞いてみたいな。町の方の建設はあと二週間もあれば大体終わるんだよね? それからでも遅くないと思うし」
「私もクラディに賛成。それに、いくら魔力が高くなると言われても、私は肉体を改造されるとなると嫌」
ベティの意見が多分普通の反応なんだと思う。
「やっぱりそうよね……。私も無理強いは出来ないし」
「こればかりは、むしろ王様の許可もいると思うよ? いくらこの領地にいる人とはいえ、この国の国民なんだし。確かに領民ではあるけど、それとこれは違うと思うから」
「そうよね。一応後で、エリーに連絡の手紙を書いておくわ。それよりもクラディ、どうするの?」
「え?」
「だって、いきなりエルフが二千人増えたんでしょ? 私もちょっと前に気が付いたんだけど、これって王様に報告する必要があったんじゃないのかなって……」
「あ……」
「でも、今さらまた眠ってなんて私には言えないわよ? 確かに私達の言う事は聞いてくれるかもしれないけど、それはそれで無責任だと思うし」
「ねえ、イロ。何で二千人も必要だったの? それが私には分からないんだけど?」
ベティの言う通り、なぜ二千人も必要だったのか、理由をそういえば聞いていない。
「現場の作業監督の人が言っていたのよ。でも、考えてみれば多すぎよね。いくら急いで作る必要があると言っても、何でかしら?」
「え? 確認していなかったの?」
ベティが驚きの声を上げたけど、当然僕も驚きだ。
「エ、エリーにすぐ手紙を書くわ。でも、本当にどうしよう……」
「正直に話すしかないよ。僕だってどうしたらよいのか分からないし。それより、エルフの人達が一気に増えたって事は、他にも解決しなきゃならない事が出てくるんじゃ……」
「そ、そうよね。ベティ、何か問題になっている事とか聞いているかしら?」
「私は聞いていないけど、それって直接現場の人達に聞くしかないと……」
「あ、あー。私なんて事しちゃったのかしら! 不味いわよね!」
「と、とにかくイロは手紙を書いた方が良いと思うわ。その間に私とクラディで聞いてくるから。大きな問題になってなきゃ良いけど」
問題って、時間がある程度経過してから分かったりするんだよね。これ、どうするんだ? 本当に……。
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