第二百一話 それを人は奴隷と言うはずなんだけど……
「作業員が圧倒的に足りないわ。クラディ、何とかならないの?」
朝食が終わってイロの最初の一言がこれ。いきなり言われても、正直方法なんて無いと思うけど……。
「ねえ、確か三十万人くらい、あの地下で眠っているのよね? それを使う事って出来ないのかしら?」
「ちょ、ちょっと待ってよ。いきなりは難しいんじゃないかな? そもそも僕らとは色々と生活環境も違っているんだろうし、目覚めてすぐ働いて下さいってのは、いくら何でも無理だと思うよ? それに言葉がちゃんと通じるかだって謎なんだし」
アマツカミボシにはほぼ毎日会いに行っているけど、そこで話せる時間は限られている。当然今は、地下で眠っている人達の事は棚上げ状態。そもそも確認できない事が多すぎて、今はアマツカミボシがどこから来たのかとか、この星についての情報とかの確認だけで手一杯。
「確か前に聞いた時は、クラディの言う事をあの変な人みたいなのは聞くのよね?」
「それって、あのアマツカミボシの事かな?」
半透明の立体映像なんて、事前に何か知らなければ変な物扱いだってのは分かる。多分同じ立場なら僕だって同じように言っているはず。
「それは無理だって。さっきも言ったけど、僕らとは色々と考えが違う人達だと思うよ? そんな人達にいきなり働けって言われても、絶対に上手くいかないって」
この世界では、まだ倫理観とかそういうのが希薄な所がある。まあ奴隷制度が普通に残っているし、これはこれで仕方が無いと思うけどね。それにいきなり何でも変えようとすると、間違いなく国どころかこの星にある人達全部が混乱するはず。そんな事になったら、間違いなく色々と破綻しちゃうから、それは無理な話だ。
「それを何とかして欲しいのよ。確かにクラディの協力で、だいぶ建設が進んだのは認めるわ。感謝もしているし、そろそろ休んでもらいたいとも思っているの。でも、細かい所となるとやっぱり人が必要なのよ。建物が出来てきたとはいえ、まだ住める環境かと言えば違うのは知っているでしょ? そうなると、後はどうやって解決するかなの。とにかく人が必要なのよ」
こうなるとイロは話を聞いてくれない。言いたい事は分かっているけど、僕としては他の解決策がまだある気がする。でも、それを提案できる程の情報がないんだよね。イロを納得させるためにも、一度アマツカミボシと話をしないとダメなのかな?
「言いたい事は分かったよ。でも、保証は出来ないよ? それでも構わない?」
絶対に上手くいかないはずだし、それなら失敗しても大丈夫な事を確認しないと……。
「ええ、それで構わないわ。今日は上での仕事はしなくて良いから、とにかく交渉してきて」
何だか面倒な事になってきたな。後で変な事にならなきゃ良いけど。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それで、どうかな?」
あの後すぐにアマツカミボシの所に向かい、事情を説明した。まあ、どうせ上手くいかないはずだし、それで構わないと思うからね。
「なるほど。お困りのようですね。それでしたら協力できますが、いかがなさいますか?」
え?
「ちょ、ちょっと待ってよ。眠っている人って、多分僕らなんかよりも進んだ文明の人だよね? そんな人達がまともな道具も無い中で、いきなり知らない仕事とか出来ないんじゃ?」
「それでしたら問題ございません。眠りについた方々は入植可能な場所に到達した場合、そこの生活に合わせて記憶などの改ざんなどを許可されております。先に目を覚まされた方々は例外で、入植可能な可能性のある場所に到達した場合、残りの人々が最低限の生活が可能な程度に整備した後に残りの方々を起こす事になっておりましたが、この星で生活可能な状態になった後、冷凍解除の連絡がありませんでした。よって現在はクラウディア様に眠っている方々をどうするか権限がある事になります」
「それじゃあ、場合によっては僕らに対して隷属させる事も出来るという事? それって問題だよね?」
「いえ、その場合も問題ございません。入植地に到達してから一万年以内に冷凍解除処理が行われなかった場合、その後に冷凍解除を行った者が全ての権限を持つ事となっております。完全な奴隷という事は出来かねますが、労働力として適切な知識をこちらから提供し、その後の生活に支障がない範囲であれば、冷凍解除を行った者の命令が全てに優先しますので」
それを奴隷って言うんじゃ……。それとも、僕の認識が間違っているのかな? まあ、前世の奴隷ってのも、歴史の教科書で知っている程度でしかないんだけど。この世界で奴隷になった時も、結局は大事になる前に助けられたし。
「ですので、クラウディア様がお決めになる事を、私が現在冷凍中の方々に行うだけです。今のままですとこの星の大気では生存できませんので、冷凍解除を行うにしても呼吸可能なようにするため、二百二十時間の猶予は頂きますが。もちろん現在使用されている時間で、二百二十時間となります」
それで呼吸も何とかなるんだ……。
「と、とりあえず少し時間がかかる事は分かったから、それを相談してくるね。何か準備しておく事とかあるのかな?」
「現在のクラウディア様がお住みになっている地域の知識を基準として、記憶の操作を行いますので、特にありません」
これって、下手な奴隷化よりも酷いんじゃ……。
「わ、分かったよ。ちょっと相談してくるね」
結局この後、イロが『それって五日くらいよね? それならお願いするわ。とりあえず必要なのは、現場の人達の話だと三千人って話だし、それだけで良いわよ。どうせ食糧の事もあるから』ってなって、僕が危惧していた事はなんだったんだろうと思う。
ついでに付け加えると、どうやら起きた人達は原則として僕の命令で動くらしい。その次としてイロやベティ、そしてここにいないエリーの三人に優先権があるって話だ。
どうしてこうなったの?
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それと、今までいくつか頂いたご意見や、他の方の小説を見ると、やっぱり相応にバトル的な物があった方が良いのでしょうか?
この小説では原則としてバトルは描かないと決めているので、せっかく二百話を超えても周囲の方々の期待に応えられないとなると、バトルがメインとはしなくても、それなりにバトルがある小説を出した方が良いのかなって思い始めています。
一応、そういうのも前々から書き始めてはいるんですけどね……。
まだバトルが直接あるシーンまで書けてはいませんけど……。
今後ともよろしくお願いします。




