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第百八一話 子供達

2016/11/15 0:25

誤字修正を行いました。

子供の死亡率は凄く高い時いた事がある。→子供の死亡率は凄く高いと聞いた事がある。

人族換算→ヒト族換算

お茶までしているのは以外だった→お茶までしているのは意外だった

 ベティの出産が一段落して、エリーのいる部屋に向かう。


 体力的にも辛かったんだと思うけど、あの後ベティは眠ってしまった。赤ちゃん達はちゃんと面倒を見てくれる人がいるから、その辺は心配ないらしいけどね。いつの間にかそういった人達も揃えていたらしい。


 僕の知らない所で、色々な事が起きている。いや、色々な事が起きていたけど、僕が知らなかっただけだ。もしかしたら知る機会はあったかもしれないけど、結局僕には無かった。


 今までエリーに任せっきりだったツケだ。そりゃ……って、何を言っても言い訳だよね。


 そのままエリーのいるはずの執務室へ向かう。僕らは全員執務室を持ってはいるけど、エリーのだけは別格だ。何せエリーは領主だから。部屋の大きさだけでも三倍近くあるし、当然それに伴う物も色々と用意されている。僕の執務室と比べたら……って、ここしばらく入ってもいないや。


 エリーの執務室前には、メイドさんが一人と兵士が二人立っていた。兵士は護衛だろうし、メイドさんは部屋の中では出来ない事があった場合の待機だと思う。


 この領地に移ってから屋敷は色々と改装をした。その中でも重点的だったのが、やっぱり執務室関連。元々は一つあったんだけど、4人別々ともなると部屋の事とか色々あるので、中庭を若干縮小した。縮小した際の木々などは、今は屋敷の外の敷地に移設してある。


 基本的な構造は執務室としての部屋だけど、一応仮眠室も備わっている。その他にメイドさん達の待機室。これは呼び鈴ですぐ来れるようにしてあって、待機室の隣には小さな湯を沸かしたりする設備もある。まあお茶とかを用意するためだ。その他にも掃除用具などはこちらに一括されている。


 エリーの部屋が大きいのは、一つは防犯のため。中は僕ら三人とは違って、ドアから直接執務室を見る事は出来ない。ちなみに僕らの執務室には、小さな応接間のような物も備わっている。エリーの執務室はその応接間がきちんとあって、そこからL字型に曲がる形で執務室と繋がる。もちろんそれぞれにドアがあるから、直接執務室には行けないし、そもそも執務室の前には護衛の人が最低でも一人は常に居る。ただしエリーが中にいる場合だけどね。廊下の兵士は常に見張りがいるけど、これは中の物が盗まれないようにするための防犯対策だ。


 それと僕の執務室については、常に兵士はいない。何だか面倒だし、一応部屋にいる時だけって事でお願いした。この国だと異例中の異例だけど、お茶を淹れてくれるメイドさんが最低一人でも居れば十分だし。


 扉の前の兵士は、僕が中に入りたい事を告げるとすぐに扉を開けてくれた。扉は両開きタイプ。それぞれ片方ずつを兵士が開けてくれる。流石に僕らにボディチェックはしない。そもそも執務室に入るには専用の廊下を通るし、そこを通り前に兵士が待機しているしね。


 応接間をチラッと見ると、そこにはいくつか書類らしき物が無造作に置かれていた。何だか不用心だなと思いつつ、扉をノックする。僕である事を告げると、すぐにエリーから入室の許可が出た。これは常にどの執務室でも行われている。まあ、僕らの場合は扉一枚だけだけど。


 またも兵士の人達が同じように両開きの扉を開けてくれると、中にはエリーとイロ、そして子供達が集まっていた。どこからか椅子も運ばれたらしい。それと小さいけどテーブルも用意されている。普通は予備の椅子が一つだけメイドさん達の待機している部屋にあるけど、それ以上は用意されていないからね。


「いらっしゃい。ベティの調子は?」


「もう大丈夫だよ。三人も同時に産んだけど、回復魔法もあるからね。今は赤ちゃん達と一緒に寝ているよ」


 そのまま空いている席を勧められ、同時に紅茶を用意された。流石にこの辺は手際が良いかなって思う。ただ、その時にチラッとエリーの机の上にあった書類の束を見ると、流石にあれはどうかと思うけど。


「良かったわ。一応報告は受けていても、やっぱり心配だもの」


「そうね。何より二人と聞いていたのに、三人だったのは驚いたわ」


 エリーの言葉にイロが続く。


「まあ、僕にはその大変さが分からないけど、医者は大丈夫だって言っていたし、とりあえず僕としてはホッとしたかな?」


 何はともあれ、母子共に健康でいられたのは一番だと思う。この世界の医療は魔法に頼っている所もあるので、どうやら帝王切開みたいな事は行われていないみたい。そんな事もあって、特に庶民では赤ちゃんの死亡率がそれなりに高いそうだ。


 それでも貴族とはいえ、全部の子供がちゃんと成人するとは限らない。医療的な問題もあるみたいだけど、それよりも凶暴な動物や魔物に襲われる事が希にあるらしい。特に地方領主とかだと、狩りに子供を連れていって亡くなってしまう事も多いのだとか。同時に当主まで死亡する事もあるらしいのだけど。


 また王都にいる貴族も狩りに出かける事はあるらしく、どうやらある種のステータスみたいな事らしい。こちらも同様に事故はあるので、言い方は悪いけど予備の子供を作るのは当然といった感じ。


 それと僕やエリーならまだしも、治療魔法で治らない病気もあるらしい。早い話が魔法の練度不足や威力不足だ。なので貴族とはいえ特に十歳までの死亡率は、最低でも三割を超えるのだとか。


 この世界のエルフは前世の人間と同じように、別にエルフだからといって子供の数が少ないという事は無いのだけど、それでもこれだけ死亡率が高いと、どうしても人口増加の足枷にはなってしまうのだろう。確か江戸時代も子供の死亡率は凄く高いと聞いた事がある。その代わりにある程度の年齢まで成長する事が出来ると、案外長生きしていたらしいんだよね。なので江戸時代の平均寿命は三十歳を少し超えるくらいらしいんだけど、そこから死亡率の高い子供を差し引くと、おおよそ六十歳くらいまで跳ね上がる時いた事がある。


「ところで、エリーの仕事は一段落したの?」


 ベティの出産が終わってから、ここに来るようには言われていた。でもエリーは仕事が山積みだと聞いていたので、正直お茶までしているのは意外だったんだよね。


「終わってはいないわ。でも、たまには休憩も取らないと体が保たないのよ」


「言われてみれば……」


 再度書類が積み重なったエリーの机を見る。幅だけでも四(メントル)はある机の上には、文字通り大量の書類が積み重なっている。流石に思わず苦笑してしまう。


「私も手伝いはしたいのだけど、残っているのは領主の決済が必要な物ばかりらしいの。だから私やクラディでは何も出来ないわ」


「代理とかもダメなの?」


「そんな物があったら、先に私が片付けているわよ」


 それでもあの量か。


 基本的に領主がサインなどをする書類は羊皮紙が多いらしい。なので前世のコピー用紙程の量は無いにしても、量が多い事には変わりが無い。


「それよりも、今日は改めて子供達を紹介しないとね。前回は実際名前だけだったでしょ?」


 エリーの言葉に頷く。正直まだ誰が誰か分からなかったりもするし。


 そんな事を察してくれたのか、エリーとイロがそれぞれ子供達の事を紹介してくれた。子供達はまだ生まれて間もないはずなのに、正直とても礼儀正しい。実際見た目五歳というのは、ヒト族換算だ。エルフで五歳ともなれば、成長が早いと既に大人と代わらないくらいの体格になる場合がある。でも子供達には既に子供という雰囲気があまり無いのも確か。


「事前に私達で色々聞いておいたのだけど、私達のお腹にいる時にはそれなりに周囲の事が分かっていたらしいわ。この辺はハイエルフという理由があるのかもしれないけど、前例がないから分からない事だらけ」


 イロの補足に納得出来るような、出来ないような……。


「流石に即戦力とは言えないけど、それでも魔力は既に一流よ。少なくともイロよりは圧倒的に高いわ。立て込んでいたから正確な計測はしていないけど、その辺の一流魔術師とか名乗っている人よりも、間違いなく魔力は上でしょうね。ただ、まだその魔力の制御に難があるとは思うの」


 エリーの言う事も納得出来る話。そもそも現状子供達に魔法をちゃんと教えられる人材がいないのだから。


 それぞれエリーの産んだ長男でタルヤ。この子は将来の跡継ぎになるのはほぼ確定だろう。その妹のエミリアは、今後もしかしたら他の家……特に王家などに嫁ぐ可能性はある。王家が目を付けていないとはとても思えないし。イロの産んだ次女ブリタと三女のドロテーアも、基本的にはエミリアと同じ立場のはずだ。次男のミエスは、タルヤを補佐する立場と同時に、タルヤに何かあった場合の予備とも言える。あまり考えたくはないけどね。先ほどベティが産んだ三男ヘンリッキと四男ヨエルは、分家を創設する事になるのかな? 立場としてはタルヤやミエスの補佐がまず優先だろうけど、この二人はまだまだ文字通り赤ちゃんだ。今は余計な負担をかけるような事はしたくない。そして四女のタイナも、将来はどこかの貴族家などに嫁ぐ事になるんだと思う。こういった政略結婚って、前世の記憶があると、正直何だかなと思ってしまう。


「ああ、そうそう。クラディにお願いしたいんだけど、昔赤ちゃんにお乳をあげる仕事をしていたのよね? もし出来ればだけど、今後お願いしても良いかしら?」


 エリーの急な言葉に、一瞬何の事か分からなくなった。


「え? クラディってそんな事をしていたの?」


 流石にイロは驚いたらしい。


「私達が生まれたというか、生活していた頃は、そんな仕事もあったのよ。まあ、エルフやハーフエルフの男性だけという限定的な仕事なんだけど。で、どうなの?」


「そりゃ、どうしてもと言うなら……ただ、今でも母乳というのかな? 僕の場合は男だからその言い方が正しいか別として、出るかは分からないよ? そもそも最近はそんな機会は無かったし」


「出来ればで良いわ。私も無理にとは言わないから。それにクラディは少し不満があるのかもしれないけど、あのトラックも早速役に立っているそうよ。なので時間がある時だけでも、お願いしたいのよ。信用出来る人が少ないという事もあるから」


 確かにその問題はあるんだろうな。無理に断っても仕方がないし、ここはとりあえず了承しておく。


「もちろんクラディの作っている物はそのままお願いしたいけど、それよりも出来れば優先してもらえると助かるわ」


 研究ばかりだと確かに研究室とかに引きこもってばかりだから、エリーの提案は必ずしも悪くはない。でも恥ずかしいけど……。


「父上は、そのような事が出来たのですか?」


 タルヤが興味深そうに質問してきた。他の子達も興味津々みたいだ。


「昔はそんな事もしていたんだ。でも、君らは流石にいらないよね?」


 僕がそう言うと、なぜか子供達は顔を少し赤くしてから俯いた。


「ねえ、クラディ。忘れているのかもしれないけど、この子達も生まれてさほど時間が経っていないのよ? 確かに母乳が必要かどうかと言われると、私も疑問だけど……」


 イロがニヤケながら僕に言うけど、それって……。


「まあ、この子達にも色々あると思うし、少し相談してみたら? それに私は忙しいし、イロも今日はここに戻ってきているけど、本来なら新しい領都で仕事が山積みなのよ。でもまだこの子達を新しい領都に連れていくのもどうかと思うし、その辺の判断は任せるわ」


 何だかエリーに梯子を外されたというか、正直かなり複雑。


「ま、まあ。母乳が今でも出るか分からないから、その辺を確認して……」


「お父様……」


 そこへ追い打ちをかけるように、エミリアが僕を上目遣いで見る。こんな時、どうしたらって……。


 ついでに見てみると、他の子供達も似たような感じ。どんどん逃げ場が塞がれているのは気のせい?


「と、とにかく色々確認してからだから!」


 正直僕の顔はかなり赤くなっていると思うんだけど、こればかりは仕方がないよね?


 後で確認してみたら、母乳は前と同じように出た。何だか逃げ道がなくなった。これからどうしよう……。

毎回ご覧頂き有り難うございます。

ブックマーク等感謝です!


各種表記ミス・誤字脱字の指摘など忌憚なくご連絡いただければ幸いです。評価、ブックマーク、感想なども随時お待ちしております! ご意見など含め、どんな感想でも構いません。


今後ともよろしくお願いします。

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