第百七九話 大型車へエンジンの取り付け
失伝 第百六一話 クラディなりの戦い方 を試しに投稿してみました。
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本編と入れ替えるつもりは今のところありませんので、ご了承くださいますようお願いします。
2016/11/14
誤字、本文修正を行いました。
昨日は中型のトラックに一応だけど目処が付いたので、細かい装備は他の人に任せていたら、夜に何だか奇妙な物が三つも送られてきた。ゴムのような感触もあるけど、聞く限り僕の知るゴムじゃ無いのでとりあえずはそのまま。それよりも今日は大型車のテストだ。
大型車は当然車重そのものがあるので、四連の三十六気筒星形魔動エンジンを搭載するんだけど、基本的な仕組みは同じ。単にエンジンのシリンダーを増やしたのと、それに伴いギアボックスが大きくなった事くらいだ。
ちなみに車輪は共通にしている。そうでもしないといちいち作るのが面倒だし、そもそも森から新しい町の建設予定地は別に荒れ地でも無い。舗装がされている訳では無いけど、それなりに平坦な道だし部品は共用化したかったしね。
もちろん車幅が違うので車軸は長いけど、基本的には中型トラックを大きくしただけだ。ただ大きくなった分、車体の重量はかなり増している。実際基本的なフレームだけの重量で計算上は六リアモ。前世で言うと、多分六トンくらいはある。これにさらにエンジンを取り付け、さらにトラックとして使えるようにすると、計算上は十一リアモを超えるはずだ。
ちなみに昨日作った中型トラックは、エンジンは当然として全部を組み込んで四リアモを少し超えるくらい。なので大型に搭載する三十六気筒星形魔動エンジンでは、出力不足になるのではないかと危惧しているのだけど、急いで作るように言われたので今はこれが限界。一応回転数は十八気筒、二十七気筒、三十六気筒全て六千回転なんだけど、普通に考えてクラッチはやっぱりいると思うんだよね。それと、理想としては九気筒ずつになっている星形エンジンを、それぞれ最大四回に分けて運用出来るようになった方が効率も良いのかな? もしくはやっぱり回転数を順次切り替えるようにすることだね。どちらにしても今だと時間も僕の実力もなかったりする。これで前世がエンジニアとかだったら、また違うのかもしれないけど。
そんな訳で大型トラック用の星形魔動エンジンをとりあえず一台用意しながら、次の改善点を考える。とにかくエリーにはもっと時間を考えて作る時間を確保してもらわないと。
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大型トラックのフレームに星形魔動エンジンを取り付けながら、他の人たちが作業している様子を横目で見る。
僕が作業している牽引車側は、車体の長さが三Mを少し超えるくらいで、実際に人が乗る所は二Mもない。エンジンは運転手の下に置く形だ。前世のアメリカにあるような、大きなボンネットを前に配置することも一応考えたんだけど、車体を作る人達から待ったがかかった。どうやら牽引される側の製作で、牽引車の方までそれほど人を確保出来ないみたい。
そんな理由もあって、運転席に座るには梯子を上る必要があるんだけど、これはもう苦肉の策かな?
ちなみに牽引車側の幅はきっかり三Mで、高さは車輪を含めると四Mくらいある。ギアボックスとかのことを考えると、今の状態ではこれ以上小さく出来なかったんだよね。一応エンジンには冷却対策をしているけど、運転席の真下ではないにしても、下にあることは違いがないし、熱暴走とかしたら心配になる。これだったら多少時間を無理にとっても、ボンネットタイプのトラックにした方が良かったと思う。
その点中型はエンジンの位置を運転席の後方にした。なので少しだけ余裕があるんだけど、根本的には同じ問題を抱えていると思う。水温計をやっぱり付けておくべきだったかな? ただ、どの温度で危険になるのかが分からないというのが辛い。何せ初めて尽くしだ。
エンジンの主要部分の取り付けが終わり、同時に運転席の取り付けが始まった。もちろんハンドルやアクセルという名のクラッチ、ブレーキなど僕が最終チェックする場所は沢山あるけど、エンジンの取り付け程は難しくない。まあ、アクセル部分はギアボックスと直結するので、一番気を使う所はそこなんだけど、それ以外は前にも魔動車を一応作っているし、そんなに心配はしていない。
それに一応中型にしても大型にしても、安全対策として運転席の下に炭化チタン一Cの板を置いている。早々簡単にはエンジンの部品が爆発するような事は無い。これは何度もテストをしてきたからね。炭化チタンの防護壁もあるし、運転席は安全に配慮した。
そんな事を考えているうちに、運転席が一通り取り付け終わる。ギアボックスとの取り付けを重点的に確認して、後は実際に動かすだけだ。
昨日と同じように運転手が運転席に上る。早速昨日と同じようにエンジンを始動した。やっぱりというか、想像通りというか、豪快を通り越して騒音――それも爆音としか表現出来ない音を出す。周囲に何人かが思わず耳を押さえた。僕は一度起動した時に分かっていたから何とかなったけど、それにしてもエンジン剥き出しだから凄い音だ。
「それでは発進します!」
エンジン音に負けないように大声で運転手が叫んだけど、どこまで聞こえていたかな? 何人かは耳を押さえるどころか、下を向いている人も多い。これじゃあテストもまともに見ている人がいないんじゃないかな?
運転手がアクセルを踏み込む。その途端、何か異音がした。とっさに僕はアクセルを離すように叫んだけど、どうやら気が付いていない。確かに轟音の中じゃ無理はないはずだ。
その時エンジンの方から大きな音がして、周囲に先ほどよりも大きな音が周囲に轟く。それと同時に、周囲へ色々な物が飛び散ってきた。距離を置いていたから何とかなったけど、直撃したらかなり不味いことになるのは嫌でも分かる。
破片が飛び散らなくなって、周囲に真っ白な煙が充満していたけど、僕は慌てて運転席に向かって走り出した。すぐに梯子を上り、運転席を見る。乗っていた運転手には、とりあえず怪我はないようだけどそれ以外はまだ分からない。。
すぐに僕はエンジンを止めるようにしたけど、どうやらどこかでエンジンと繋がるミスリル銅合金が破損したのかも。エンジンは相変わらず回っている。ただ、その音は次第に小さくなっていた。
運転席の足下を見ると、炭化チタンに何ヶ所か凹凸がある。どうやら部品のいくつかが床を強打したらしい。もしこれが普通の鉄板だったら、運転手が死んでいたかもしれない。そう思うとゾッとする。
「誰か、すぐにこの人をここから降ろして! 医者も呼んで!」
思わず叫びながら、手首を取って脈を診る。少なくとも心臓は動いている。気絶しているだけなら問題ないけど、これだけの事があったのだから精密検査は必須だ。
その間にエンジンがやっと止まり、辺りには白い煙だけが蔓延していた。
すぐにこの人を降ろしたいけど、内蔵などが負傷していたら下手に動かせない。
「担架を早く! 内臓を怪我しているかもしれないから、すぐに精密検査を!」
僕の声を聞いてやっと事態を把握したのか、何人かが叫びながら遠ざかっていくのが分かる。まだ白い煙が周囲に充満していて視界が悪い。僕はとっさに風魔法を用いて運転席から煙を排除する。
数分して担架を持ってきた人達が、僕が指示した通りに出来るだけ体を動かさないようにしながら運転席から降ろした。そのまま近くの診察所に運ぶみたいだ。
彼の事は医者とかに任せて、改めてエンジンを見る。するとエンジンに大きな金属棒が刺さっていた。それはギアボックスから飛び出したようで、どうやらエンジンとギアを接続するのに問題があったみたいだ。やっぱり危惧していた事が起きた。
エンジンは金属棒が突き刺さっていただけだけど、ギアボックスは中から破裂したように原形を留めていない。
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それから二時間程して、運転手の人が目覚めた。多少打撲のような症状があるみたいだけど、命には別状はないらしい。むしろあのエンジンとギアボックスを見た後では、良く怪我をせずに済んだと思う。
とにかく大型車の開発は中止だ。出来れば中型車も開発をストップしたい所だけど、エリーは中型車だけでも運用するように言ってきた。
確かに開発をスムーズに行うために必要なのは分かるけど、あまりに危険だと思う。エリーにはそれを十分以上に伝えたと思うけど、それよりも開発が優先だと言い切られてしまって、大型車の開発こそ止める事が出来たけど、中型は無理だった。それでも中型に採用するエンジンは十八気筒の星形魔動エンジンに変更する事にして、エンジンの回転数を四千回転まで落とす事だけは認めさせる事が出来た。
結局急ぎすぎたのが原因だ。僕にももちろん責任はあるけど、エリーにはもっとエンジンがどれだけ危ない事を引き起こすのか分かって欲しい。
とにかく最初に製作した五台の十八気筒魔動エンジンを中型トラックに採用し、しばらくはそれを生産するように言われてしまった。とりあえず二十台分は確保するように強く言われた。
何とか早くマニュアルミッションを完成させないと。それにエンジンの回転数制御も早急な課題だ。シリンダーなどは既にあるのでそれを組み立てるだけだけど、すぐに問題点を修正しないと。また事故が起こってからじゃ遅すぎる。
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