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第百七三話 再開発の前に……

 再開発の前にやらなきゃいけない事がある。流民対策だ。


 元々この領地への入り口が少ないので、本来はそこさえ警備していれば十分だったんだけど、今はそんな事を気にせずに様々な場所から人が流れ込んでくる。それを止めさせるために、土壁を作る事になった。当然魔力が多い僕が担当。エリーは書類仕事で大忙しみたいだ。あの書類の山を見ると、流石にアレはアレで同情するしかない。


「でも、本当にそんな事して大丈夫なの?」


「どうして、クラディ?」


「そりゃ、エリーの言いたい事は分かるよ。でも、こっちに来ている人達って、逃げてきているんじゃ無いのかなって思って」


「私の所に集まっている情報だと、全部が逃げている訳じゃなさそうなのよ。この領地の混乱を狙って送り込まれている者も、少なからずいるらしいわ。それをいちいちチェック出来ない以上、領の境界線を封鎖する以外には手がないわ」


「え? でもそれじゃあ、既に領内に入っている人は?」


「そっちは、領内の兵士で手分けして事に当たってもらっているの」


「区別なんか付くのかな? 下手に尋問なんて出来ないんじゃ無いの?」


 すると、エリーは不敵に微笑しだした。ちょっと怖い……。


「それなら大丈夫よ。既に手は打ってあるわ。クラディはそんな事気にせずに、また壁だけ作って。ただし、今回は高さ三(メントル)程の土壁で構わないわ。まあ、それなりに硬くはして欲しいけど、すぐにこちらに来る事が出来ないようにすれば良いのよ。ここは他の領と違って、領境から町に来るまでも距離があるわ。馬車とかでも用意しない限りは、徒歩で来るのはまず無理。それに確認している限りでは、ほとんどが馬車で来ているみたいなの。もちろんそれで完全には防げないのは分かっているわ。でも、王都から何かしら連絡があるはずよ。それまで時間稼ぎが出来れば十分だから」


「えっ? ちょっと待ってよ! 領境って、かなりの長さがあるよ! それを王都からの連絡があるまでに終わらせるって事!?」


 境界線の距離は、ざっと数百(ケイロ)はある。正確には流石に僕も知らないけどね。一応ある程度は地図も出来てきたけど、まだ完全じゃないどころか、距離に関しては記載が遅れている。そんな状況で、しかも一人で、さらに単に移動するだけでも大変なはずなのに、境界線沿いに土塁を築くなんてのは、ある意味無茶を言いすぎじゃないかな……。


「普通の方法では無理な事くらい、私だって理解しているわ。だから普通の方法を採る訳無いじゃない」


「えっ?」


「魔動飛行船に乗って、上空から適当に壁を作ってくれれば良いのよ。一応低空飛行はさせるし、戦闘用に開発した魔動飛行船なら、防御力も多少はあるんでしょ? ちょっとやそっと攻撃されたくらいで墜落するような物をクラディが作るはずもないし、戦闘用の魔動飛行船なら、かなりの速度も出るって聞いているわよ? せっかく作ったのだから、有効利用しないと」


「ま、待ってよ! いくら何でも無茶苦茶だよ! そりゃ、飛行船から魔法を使う事は出来るかもしれないけど、魔法が影響する範囲は、距離が離れれば離れるほど難しいんだよ? それは分かって言っているの? 正直、エリーの発想とは思えないよ」


「あら、私の発想よ? それにクラディは魔力も高いじゃない。多少無駄な魔力を使った所で、全く問題がない事は分かっているわ。それと、これはこの領地の領主として、クラディに命じているの。必要なら命令書を書いても良いのよ?」


 命令書まで書くだなんて、こんな態度をエリーが見せたのは初めてかも。


「魔動飛行船については、既に出港準備も出来ているわ。だからクラディ、すぐに行ってきて。頼んだわよ」


 半ば強制的に部屋から退出され、そのまま護衛の騎士の人と一緒に魔動飛行船へと乗り込んだ。魔動飛行船は速度重視のため、余計な装備は全て降ろしてあるそうだ。もの凄く用意周到だと思う。


 結局僕はエリーに言われるがまま、その日の夜遅くまで魔動飛行船の中から領の境界線沿いに、山なのか壁なのか作っている僕自身が良く分からないけど、とにかく壁らしき物を作った。

毎回ご覧頂き有り難うございます。

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