閑話 二十三 二百話記念 エリーも色々やっている!?
全く話にならないわ。そもそも貴族っていきなり言われて、まだ二年程よ。貴族の常識とか、そんな簡単に分かるはず無いじゃない!
一応ペララとかが補佐をしてくれているけど、イロやベティだって元々は平民なんだし、彼女たちは今でも慣れないみたいだし。まあ、私だって慣れた訳じゃないのだけど。
クラディは領地の開発とか戦争とかで活躍してくれたけど、貴族としての教育なんて受けていないのは同じだし、むしろ私がこの中では最上位になるからって、優先的に色々言われても無理があるのよ。
かといって、クラディに八つ当たりしても仕方がないんだけど、たまに感情が制御出来なくなるのよね。少しは私も反省しないと……。
それにしても王国からの手紙、多分あれは偽造されているわね。ペララも同じ意見だし、他の騎士も同じ事を言っていたわ。
陞爵についての公式な文章は、本来陛下付きの専門文官が書いて、最後に陛下がサインをするらしいのだけど、手紙の所々の筆跡が違うのよね。案の定、本来は一人の文官が全てを書くらしいから、筆跡が統一されていないなんてあり得ないって言われたし。
「はい、これが今日の最後の書類です。お願いしますね」
待機していた、この領地に移ってから雇っている文官に書類の束を渡すと、私は部屋を出た。ちょっとイラついているのが自分でも分かるわ。こんな時には、私なりのストレス発散でもしないと。
向かった先はクラディに話していない地下室。私も本当はクラディの事を言えないって、こんな時に思うの。でも、立場としては仕方がないじゃない。
秘密の通路を通って、誰も来ていない事をきちんと確認する。まあ、屋敷の何人かにはちゃんと話してはいるのよ。何かあった時に困るのだから。クラディもそれくらい気をつけてくれれば、私も変に止めるつもりはなかったのに。
地下道を進み、先にある扉を開けると、中央に魔方陣の描かれた部屋に到着。ここが私のストレス発散をするための部屋。防音対策や防振対策もしっかりしているから、ちょっとやそっとでは誰も気が付かないわ。もちろん対魔法対策も壁にはしっかりとしている。
「顕現せよ。私の使い魔!」
クラディには話していないけど、普通に呪文を唱えるだけで、新しい魔法を私も作っているのよね。それで生み出したのが使い魔を生み出し召喚する魔法。
魔方陣が淡く青白く輝く。私なりに色々調べたら、実は汎用魔方陣と呼べる物があったのよね。実際には失伝していて、いくつかの本にあった物を組み合わせて、私が復活させたと言うべきかしら?
魔法が完成して、魔方陣の中央にちょっと大きめな私の使い魔が出現する。
「主様、お呼びですか? と言うか、その様子ですと、またですか?」
「悪いわね……。でも、嫌ではないのでしょ?」
「そもそも、主様には逆らえないのが使い魔ですよ?」
「それもそうね」
そうやって私が呼び出した使い魔に抱きつく。
使い魔は毛がフサフサした、私の身長よりも少しだけ大きなドラゴン。名前はフローラと名付けたわ。毛は白に少しだけ赤が入った色。とても綺麗な毛並みなの。
フローラはそのまま私が抱きつくと、おとなしくその場に座ってくれる。本当なら翼もあるので外に出してあげたいんだけど、まだ秘密にしているのよね。まあ、ペララとかは知っているんだけど。最初に見せた時は驚いていたけど、私に懐いているのが分かると、すぐに安心してくれたわ。
「エリーナ、あまり無理をしないで……」
使い魔だけあり、私の心がこの子には筒抜け。でも、だからこうやって私の心の平穏を保つために大人しくしてくれているの。
「ごめんね。本当なら外にもちゃんと出してあげたいのに……」
「大丈夫ですよ、エリーナ」
この子は普通に会話が出来るし、この部屋から外に出る抜け道もある。時々夜の空をこの子だけで飛んでもらっているわ。こんな部屋に閉じ込めたままなんて可哀想じゃない。
もちろん事前に見張りには話を通しているし、すぐに高空に飛んじゃうから、屋敷にある秘密の入り口付近以外では、まず見つけるのは無理ね。
もちろんこの子は戦えるだけの力があるけど、そんなために生み出したんじゃないわ。ペットと言ったらおかしいかもしれないけど、私のパートナーみたいな存在だもの。
「ごめんね。ちょっとしばらく外に出してあげられそうにないの……」
「仕方がないですね。理由は分かっていますから」
直接理由を話さなくても、心が繋がっているって、それだけで安心出来るわ。
「もうちょっとだけ、辛抱してね? そしたらみんなにちゃんと紹介するから」
そう言いながら、私はフローラの頭を撫でる。その間、目をウットリさせたような顔をこの子はするのよね。やっぱり召喚魔法に成功して良かったわ。
正確には召喚魔法ではなく、新しく意思の持つ何かを生み出す魔法みたいなんだけど、細かい事は良いじゃない。それよりも大切なのは、私の心の平穏を取り戻す事なんだから。
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