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間話 四 研究者達

2016/01/30 誤字修正及び内容の一部修正を行いました。

十六話の前に間話を入れました

「では、家族は関係ないのだな?」


 石壁に覆われた一室で、二人の男が話している。


 一人は真っ赤に染まった白衣のような衣服を纏った人族で、金髪の青い瞳。椅子に座りながら何枚かの紙を見ている。


 もう一人は帯剣してはいるものの、とくに鎧などは着ていない。ただし白い長ズボンに紺の服が映え、茶色の髪をしたブルーの瞳。直立不動で鎧などなくとも兵士と分かる。ただ、身だしなみなどを見れば普通の兵士でないのは一目瞭然。


「まあ、家族といえど養子だそうだな? 元の両親は分かるか?」


 兵士は首を振って、分からない事を伝えた。


「何かありそうだな……まあ、どちらにしろそれなら問題にはなるまい。むしろ好都合だろう。近日中に準備を終えてくれ。私の方で書類は準備しよう。できあがり次第行動に移せ。『素材』は多い方が良い」


 兵士は無言で頷く。


「私の方で準備するのに、何か他に必要な物があるか?」


「牢馬車の手配をお願いします。あと、例の首輪も必要になるかと。魔力がかなり高いそうですから。それ以外はこちらで対処出来るでしょう」


「ああ、分かった。それも準備させておこう。では後の事は頼む。間違っても悟られないようにな?」


 兵士は無言で頷くと、そのまま部屋を後にした。


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 白衣を着た研究員が数名紙を手にしながら歩いている。白いマスクと帽子もしており、人族である事以外は男女であることすらあまり外見が分からない。手袋まで白く、殆ど白ずくめのため誰が誰かといった特徴すら分からない。


 彼らのいる場所には様々な『装置』と呼べるような物が並んでおり、通路の両側に配置されている。通路は長く、端から端まではかなりの距離。


 通路自体は白一色で、そこに並ぶ装置の殆ども白い。ただし一定間隔で赤い液体で満たされた筒のような物が配置されており、その筒の幅は人族の肩幅の三倍程度はある。高さも人族の身長の三倍程度あり、白い空間に赤が栄える。ガラスのような透明感がある筒が並んでいるが、実際ガラスなのかは分からない。


 そしてその赤い液体の中には『人』が入っている。種族は様々で、ウェアウルフ族や小型のドラゴン族、ハピキュリア族やエルフ族など種類は様々。ただ、なぜか人族の姿だけはどこにもない。


 筒の中は時々空気が混じるのか、泡が希に下から上へと登ってゆく。ただしその速度は遅い。液体は水よりも粘度があるのだろうか。


 筒の中に入れられている者たちには、数本のチューブのような物が所々に刺さっている。しかし、それらは空気を送っている物ではない。何よりも口や鼻には何のチューブも繋がっていない。チューブは単に栄養を送っているだけなのかもしれないし、他の用途かもしれない。


 チューブは上から全て延びているけども、どれも多少ゆとりをもって繋がっている。繋がっている場所は様々だけども、一本だけどれもが臍のあたりに必ず繋がっている。


 そんな一角に、筒ではなく巨大な魔石が鎮座していた。大きさは人の二倍程度はある代物で、形は上下が正三角錐で、真ん中が真四角といった感じになっている。色は虹色に輝き周囲を照らしている。


 そんな人工魔石へ、下から八本のケーブルが伸びている。これも白いケーブルだが、太さは親指ほど。それが人工魔石の基部へと繋がっている。どうも人工魔石へと何かを供給しているようだ。


 人工魔石の最上部には、また別の何かが取り付けてあり、そこから人の太股ほどもあるケーブルが、どこかへ延びていた。途中から壁の中に隠れてしまい、どこへ繋がっているかは分からない。


 人々の入った筒をよく観察すると、筒から延びる一本のケーブルだけ、他のよりも少しだけ太い。それが人工魔石へと繋がっていて、かなりよく見ないと分からないが、そのケーブルだけ薄い赤いラインが破線状に付いている。


 巨大な人工魔石は、通路の入り口から四本を数えて、その後は八本ずつの間隔で同じ物が並べられている。筒にはほとんどに誰かが入れられており、種族どころか性別すら関係ないように見える。


 彼ら、彼女らは全員が全裸であり、ケーブルのような物で繋がれている以外は、一切の衣服も無い。筒は透明なため、体のどこかを隠すことも出来ない状態。ただ、その誰もが首に金属製を思わせる首輪を嵌められている。


 筒に入れられている人々には、全く意識が無い様子。誰もが目を閉じており、呼吸している様子すら無い。それでも見た感じでは、死んでいるとも思えない。仮死状態と思えるような光景。当然体も動く様子すらない。


 研究者達は、彼らの姿にはまるで興味が無い様子。実際、彼らはその筒に入れられている者たちを、何の感情も無い目で時折確認するだけで、その下にある様々な装置のような物を熱心に確認しているだけだ。装置には何かの情報が出ている。


 部屋中に並んだ円筒形の筒と、所々にある巨大な魔石が、まるで異空間を思わせる。少なくとも外の街並みとは明らかに異なる光景。


 筒は透明で何も入っていない物もあるが、それらは部屋の奥に多い。また奥の方には十字路もあり、列として配置された容器がいくつも鎮座している。容器は二列になっており、その度に十字路があるが、十字路の数だけでも二桁はあるだろう。


 正面入り口の容器には数字のみが小さく記載されているが、十字路を進んだ先にある筒には、それ以外の文字が一つだけ記載されている。文字はこの国のアルファベットに相当する物であり、何らかの規則性をもっているようだ。


 数字のみの物だけでもその数が百程ある。それ以外に文字が付いた物も含めれば、その数は数百では足りない。それらが白い床の部屋に、当たり前のように鎮座する光景は異様でしかない。


 当然文字が数字の前に付いている筒の中にも、多くの人々が捕らえられている。人族以外は、ほぼ全ての種族が入っているのではないかと思える光景だが、それを見ている白衣の者たちは気にする様子などまるで無い。


 この部屋はまるで何かの工場を思わせるが、特に目立った音はない。ただ静かに赤い容器や虹色に輝く巨大な魔石の色が壁などに反射され、むしろ一見しただけだと美しい光景にすら思える不思議さがある。


 そんな筒のような物に入れられている人々を目にしながら、確認するように歩いている集団がいる。白衣を着た彼らは、時々赤い筒の前で止まりながら、それぞれ手にしたボードの上にある紙に何かを書いている。それを繰り返しながら奥へと進み、筒と筒の間にある機械のような物も確認している。帽子やマスクをしているので、その表情はほとんど読み取れない。


 彼らは一つ一つ何かをチェックしながら、最後にそれを一人に渡す。受け取った者は通路の奥へ消えていった。


 残された者たちは近くのテーブルに集まると、さも当然かのようにお茶を用意して飲み始める。


 それはある意味異様な光景であり、同時にそれが当たり前かのように見える奇妙な光景。マスクなどで表情が見えないこともあり、普通の人から見れば怖くなってもおかしくないような姿。

毎回ご覧頂き有り難うございます。

ブックマーク等感謝です!


各種表記ミス・誤字脱字の指摘など忌憚なくご連絡いただければ幸いです。感想なども随時お待ちしております! ご意見など含め、どんな感想でも構いません。


また、今後以前まで書いた内容を修正していますので、タイトルに一部齟齬や追加が発生する可能性があります。本文内容の修正が終わり次第、随時修正していきますので、ご理解いただきますようお願いします。


今後ともよろしくお願いします。

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