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第百六三話 影響が大きすぎる!?

 さらにあれから二日後、僕らは王都からの連絡を待ちながら戦後処理? を行っていた。まあ、大半はペララさん達が主に行うんだけど、僕らも陣頭指揮みたいな事はしないといけない。


 何より僕が作った防護壁とかが、今では逆に邪魔になっている。かといっていきなり全部無くすのは大変だし、部分的に崩す事にした。早い話が東西南北にそれぞれ出入り口を設ける形。それでも作る時と違って、緊張感が無くなるからかな? 作業には結局丸一日かかったし。何より僕しかちゃんとした構造を把握していなかったから、僕以外に作業出来る人がいなかったんだよね。人海戦術にも限界があるし。


 その他にも魔動飛行船のチェックや鉄道の軌道を確認してもらったりと、それまで確認できなかったことをやるのだから忙しくもなる。むしろやる事が多すぎて人手が足りないくらいだけど、出来る範囲は限られているし人員も限られているので、後回しになっている事も多い。


 おかげで僕はせっかく生まれた五人の子供達にも会えず、いつになったら家族みんなでゆっくり出来るのか分からない。そもそも、最近ゆっくり出来たのっていつだったっけ?


 そんな忙しさの中で、やっと王都から魔動飛行船が戻ってきた。


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 魔動飛行船が着陸すると、船員に案内されて最初に降りてきたのはこの国の王様。王冠とかは付けていなかったけど、エリーが『国王陛下!?』と言っていたので間違いないと思う。王様の顔を正直あまり覚えていなかった僕としては、内心かなり焦ったけど、流石に平静を装うようにする。バレていないよね? そもそも僕と面識ってあったっけ? エリーがこっそり教えてくれたけど、名前はマヌ・ヘンリッキ・ラッシ・エストニアムア二世と言うらしい。あまりに長い名前なので、すぐに忘れそう……。


 ついでに言うと、王都から他に三隻の魔動飛行船も同行してきていた。その内二隻は貨物タイプで、どうやら食糧を運んできたらしい。


 王様の他にも、どうやら閣僚クラスの人などがかなり来ているみたいだ。流石に格好からして普通とはちょっと違うので分かる。問題は僕は誰がどの閣僚だか分かっていない事。名前と顔が一致しないどころか、どの閣僚が誰かすらまともに知らないのは不味いよね。


 それにしても、来ている人数が多すぎない? 明らかに貴族と分かる人だけでも二十人以上。そのお付きの人まで含めると、少なくとも六十人は間違いない。護衛まで含めたらもっとだ。もしかしたら、僕がやった事で大事になった? うーん、でも今さら色々言われても……。


 まずは挨拶を国王陛下とエリーが交わす事になる。当然僕も横にいる事になるけど、イロはまだ子供達の側で待機している状態。ベティもまだお腹が大きい状態なので、今回は欠席だ。後はペララさん達を含む騎士などの何人かが、エリーとともに出席。今回は急ぎだった事もあり、こちらの騎士代表はとりあえずペララさんだけ。他に三人後で合流するけど、どうやら間に合わなかったらしい。まあ、いつ来るかも分かっていなかったから仕方がないと思う。


 それにしても、これだけの人数を集めでどうするつもりなんだろう? 屋敷にはとても入りきれる数じゃ無いし、そもそも何を話し合うのかも分からない。もしかしたら僕の責任問題かもしれないし、そうなると頭が痛くなる思いだ。


 事前にエリーに言われていたので、とりあえず最低限の挨拶以外は黙っている事にしている。エリーは妊娠中に貴族としての教育をしっかり受けたらしい。そういえば僕は領内の開発ばかりで、そんな事ほとんどしていなかったっけ。流石に不味いかも。


 とはいえ、正直今から覚えるのは遅いんだよね。少なくとも今回の集まりでは間に合わない。少し後でエリーと相談しないといけない。その前に、一体何が話し合われるかで変わるとは思うけど。


 二隻の貨物魔動飛行船からは、次々と物資が今も降ろされている。元々積載量は多めに設計しているけど、それにしてもかなり多いと思う。もしかしたら無理をさせたのかな? 過積載だと魔動エンジンに負荷がかかるから、後でチェックもしないと不味いかも。何だかやる事がまた増えそうな気がしてならない。


 そんな事を思っていると、エリーが屋敷に案内を始めるみたいだ。ちょっと緊張するけど、とにかく話はちゃんとしないといけないからね。


 エリーが王様を横に連れて、一緒に屋敷に入っていく。何か話をしているみたいだけど、正直僕は緊張していて何を話しているのか分からない。僕の横にはどうやら王位継承権一位のアールニ・アールト・エストニアムア王子がいるけど、何だか難しい顔をしていて話が全く無い。これはこれでちょっと怖いんだけど。


 そのまま屋敷の中に入り、一番大きな部屋……普段はパーティー用という話だけど、実際にはパーティーなんてこの部屋でした事が無い部屋に案内。そもそもこの領地に移ってから、パーティなんてする暇は無かったんだよね。正直今まで無駄になっていた部屋だ。その奥に大食堂もあるんだけど、そっちも一度か二度ほど以前に使ったくらいで、普段は全く使っていない。その二部屋は仕切りを取り外せるようになっていて、当然今日は取り外されている。それでも全員は間違いなく入らないんだけどね。


 それで結局入ったのは、僕とエリー、そしてペララさん達を含めた十人が子爵家側として。王国側としては国王と王子はもちろんだけど、バスクホルド伯爵ほか閣僚が合計で十三人。全部で二十三人だ。その他に四名が給士として入っているのだけど、その四人は全員が王室の近衛兵らしく、簡易ではあるみたいだけど鎧も着装したまま。実際のところ、戦闘は終わっていてもまだ内乱状態であるといった認識らしい。その為の護衛兼給士役として、彼らが選ばれたんだと思う。


 今のところ、室内にはそれ以外の人は入れない。部屋の外には警備目的で近衛の人達が見張っているらしい。正直かなり物々しい状態だと思う。


「さて、今回の件についてなのだが……」


 国王陛下が重い口振りで何かを言おうとする。何だか嫌な予感しかしないのだけど……。


「先に伝えておくが、君らには特に罪は無い。それだけは安心してほしい。なので君らが処罰を受けることは無い」


 同席していた軍務卿のリーッカネン伯爵が割り込むように話す。本来なら不敬罪とかにならないのかな? 誰も指摘しない所を見ると、それどころじゃ無いのかもしれない。


「それで、問題なのは死亡した貴族なのだ」


 そう言って別の閣僚が立ち上がる。エリーがこっそり『貴族卿のヤルノ・マイニオ・フッリ伯爵よ』って教えてくれた。


「死亡または行方不明の貴族家当主は二十八名。うち、跡取りに指名されたものまで死亡している貴族家は十五。その内、継承権のある子供がいる貴族家は三家のみ。他の十三家についても、跡取りが成人していない家が六家。流石にこれだけの数の貴族家当主が死亡行方不明になりましたので、これから該当貴族家の混乱が予想されます」


 その数に思わず絶句する。エリーも同じみたいだ。


「ただ、王家としてはある意味感謝もしているのだ。それらの貴族家は、どれも王家に反乱を企てていた容疑があったのでな。証拠がまだ揃っていなかったので、残念ながら先手を打てなかったのが悔やまれるが」


 陛下がそう言うと、溜息をついている。国王ともなると政敵とかがいるのはおかしくないとは思うし、それを排除出来たのは幸運とも言えるのかもしれないけど、一度に多くの貴族家当主が死亡したので、これからのことを思うと面倒だと思っているのかも。


「普通に考えると、流石にそれだけの貴族家当主を殺害しているのですから、私達になんらお咎めナシとは思えないのですが?」


 さっき罪には問わないと言われたけど、影響を考えると当然の疑問をエリーがぶつける。僕だって普通はそう思う。


「それは法が整備されているのだ」


 フッリ伯爵が解説してくれた。


 どうやら領地を持つ貴族家が争う事自体はそれほど珍しいことでは無いらしい。ただ、普通は貴族院などにその旨を伝え、争っている両貴族家の仲裁を行うらしい。それでも妥協点が見つからない場合は、王国の法にて一定の紛争は認められているのだとか。もちろん紛争には色々と制限があるらしいので、これは本当に最終手段となるみたいだし、そこまでなる事はかなり希だとか。


 ところが相手貴族が貴族院などに届けること無く、一方的に紛争を仕掛けた場合は厳罰になるそうだ。最悪貴族籍の剥奪及び当主の処刑にまでなるらしい。


 それで今回は全く貴族院に届けが無かったどころか、勝手に紛争を始めているので当然厳罰は確定。まあ、問題の当主は死亡している訳だけど。


 それと僕らが戦っている間、王都でそれらの貴族家が反乱まがいのことをしていたそうだ。なので情状酌量の余地は全く無いらしく、どちらにしても関与した二十八の貴族家は、取り潰しが事実上決定しているのだとか。


 そこで問題なのが、二十八もある貴族家は一家を除いて全て領地貴族である事。当然二十七もある貴族家の領地に混乱が訪れるのは避けられない。


「そういった事情もあり、我々が君らに救援を送ることが出来なかったのだ。むしろその点ではすまないと思っている」


 バスクホルド伯爵が突然立ち上がると、深々と僕らに頭を下げてきた。流石にその光景は予想していなかったので、僕らはどうして良いのか分からない。


 そんな事を思っているとやっと頭を上げてくれて、王太子が立ち上がる。何だか凄い光景……。


「我々としても、君らには最優先で支援を行いたいのだが、このような状況となりどこから手を付けて良いのか混乱している。王家も最優先で事の沈静化を行うつもりなのだが、何分そんな事情で子爵家への支援が滞ってしまうことが予想されるのだ。むしろこのような状況を招き、そこに君らを巻き込んでしまったことについて、王家としても謝罪する」


 思わず息を飲む。普通に考えて、一貴族家に王族が頭を下げて謝罪などまずあり得ないことだという事くらいは分かるから。


「とりあえず、現状はそういった事なのだ。迷惑をかけてしまうが、こちらの事情も分かってもらえると助かる」


 それを陛下が引き継ぐように言う。流石にそう言われては僕らには何も出来ないと思う。


「そこでなのだが……」


 今度はこの中で数少ないコボルト族の貴族が立ち上がる。名前はオディロン・アルセーヌ・セニョボス伯爵というらしく、内務卿国土院長官らしい。国内の開発などを行う部署みたいだ。この国は一応エルフが主体だけども、能力が有れば他種族でも閣僚などになれるみたい。そういえば、前にもそんな事を聞いたかな?


「今は子爵領の安定化と開発を続けて行ってほしく思います。先に国内の混乱を抑えるのが先となるため、王国への直接な輸送や他の貴族領への輸出は、こちらから指示があるまで一度停止して構いません」


 伯爵なのだから僕らよりも地位としては上なのに、彼は僕らに丁寧に説明してくれた。


「尚、採掘した鉱石などは領内の開発に優先的に使用して構いません。どちらにしてもしばらく混乱が続くと予想されるので、王国としても混乱の収拾が優先されるのです。その点はハルコアホ侯爵及びマリネン伯爵も同意している事ですから」


 彼がそう言うと、二人の貴族が首を縦に振る。ハルコアホ侯爵が内務卿で、マリネン伯爵が財務卿らしい。


 そういった説明が三時間ほど続き、陛下他六名の閣僚などが退席すると、今度はその下で働いているらしい担当官が説明を続けてくれる事になった。


 結局それは夕方まで続いたけど、翌日にも説明が終わらないとの事で今日は会議がお開きになった。

毎回ご覧頂き有り難うございます。

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