第百五二話 非殺傷型超広範囲敵感知式無力化魔法?
2016/06/28 10:09 以下の誤字がありましたので修正しました
今頃捕まっている善意が→今頃捕まっている全員が
2016/06/28 11:42 誤字の指摘がありましたので修正しました
魔法防壁その物が見え辛い物としてい。→魔法防壁その物が見え辛い物としている。
エリー達と共に、僕は魔法防壁を展開している魔道具の所へと来た。
魔法防壁と名前をつけているけど、実際の所は『壁』と言うより『膜』に近い。何故なら壁は固い物で周囲を覆っているとすると、膜は柔らかい物で覆っているという表現になるから。ただ、この魔法防壁の『膜』は、壁なんかよりもずっと強固なんだけどね。
何よりこの魔法防壁は、全属性……火、水、風、土の全ての属性が組み合わさっている。
火属性は光の屈折を起こさせ、魔法防壁その物が見え辛い物としている。その他に魔法防壁の熱交換の役割をしていて、常に外気と同じ温度を保つ。水属性がこの魔法防壁の本体その物だけど、常に流動しているので一点突破をしようとしても、それを防ぐ効果がある。また水属性が分子レベルでの魔法結合を発生させて、防壁をより強固な物にする。風属性が水属性の流動を発生行わせているので、風属性がないと効果が極めて弱い。それと風属性が常に弱った防壁の修復を行う効果もある。そして土属性がその場に魔法防壁を固定する役割をしている。それと土属性は魔法防壁の形を保つ役割もしている。なのでどれか一つ欠けても防壁としては未完成になってしまう。
当然それだけの魔法防壁を発生させる装置だから、そこに使われている魔石はかなりの純度が求められるし、一つで間に合うような物じゃない。実際に起動するだけでも五個の魔石を使用するし、二十直列された魔石がさらに二十五並列されている。その魔力が尽きないように、同じ配列になった魔石が三セット備えられている。なので屋敷の地下はかなり深くまで掘り進めてある。
前に作った魔石へと魔力を補充するやり方の応用で、この装置に使われているのは僕とエリーが前に作っておいた超高純度の魔石ばかり。一つでも市場に売るとなると、多分白金貨数枚でも買えないような物。それを惜しみなく使っているのがこの魔法防壁の装置だ。
もちろん魔法防壁にも展開限界があって、何もしなければ三ヶ月で魔力が切れる。まあ三ヶ月もあれば十分相手に対処出来ている筈なんだけどね。
「さてと。そろそろこちらからも反撃を行うかな」
そう言ってから魔石に含まれている魔力残量を確認。残りはまだ八十パーセントを超えているので、当分魔法防壁が停止することはない。
「父上、何を行うのですか?」
タルヤが興味深そうに聞いてくる。その横でエミリアも興味深そうな顔をしていて、そのすぐ後ろにいるエリーは何だか微笑んでいる。ペララさんは何が何だか分からないといった感じ。
「敵を無力化させるんだ。と言っても、基本的には殺さないけどね。もちろん殺すことだって出来るけど、ここに来たことを後悔させるのには、まず彼らを捕らえることが重要かな?」
「お父様、何故です? ここは包囲されていると聞いております。それに相手はこちらを殺す気だとも。ならば死なせてしまった方が楽なのでは?」
エミリアの言葉にちょっとだけゾッとしたけど、まあ僕だってそれを考えなかった訳じゃない。ただ、生後一週間程度の子の言葉じゃないと思う。
「包囲している彼らだけならそれでも構わないと思うけどね。だけどその後ろには他の貴族達とそれに率いられた兵士もいる。なら、ここに攻め込んだことを後悔させる必要があると思わないかな?」
「はい、お父様。ですが、どうなさるのですか?」
「まあ、それはお楽しみって事にしておこうか」
それにしても、ちょっと普段使わないような言葉づかいを心かげているつもりだけど、何だかやけに喋りづらい。しばらく訓練しないとダメかも。
魔法防壁を制御している場所は、趣味で前世のアニメや映画に出てくるようなSFチックにしているけど、はっきり言ってほとんどが単なるイミテーション。まあ後で『誰かが操作しようとしても分からないように!』って事にしたんだけど、エリーには当然バレている。でも魔法の技術も使いどころによっては凄いよね。基本的には火魔法の応用なんだけど、立体ディスプレイのような物まで作れちゃうんだから。まあ、その為に作った魔方陣は、それこそバカみたいに時間がかかったんだけどね。
そして前世で見たアニメに登場する三つの人工知能を持ったコンピュータを参考に、僕なりに四つの『似非人工知能コンピュータモドキ』が一番大きな立体画像として表示されていたりする。一応四大元素を意識しているけど、実際にはこれも単なる飾り。しかもその側にはわざわざ数値や文章のように見えて実は違う文字列がどこまでも流れるように上から下に表示されては消えてゆく。こんな事のために魔石を一個使っているんだけど、当然無駄なことだから、この部屋に入るまでは照明も含めて消えている。
もちろん四台の似非人工知能コンピュータモドキにはちゃんと名前をつけていて、それぞれ『フォック』『アパン』『ベンティー』『ソロ』って名前をつけていて、これはミランダの所で分かった古代エルフ語から付けた物。まあ、本当に発音が合っているかは分からないというオチが付いているんだけどね。
時間でもあったら、魔法的というか魔術的というか、それで再現したSFロボットでも作ってみたい気分になるんだよね、ここに来ると。
そんな事を思いながら、いくつもダミーがある操作パネルの中で、本物の操作パネルに向き合った。基本的にはキーボードみたいな形をしているけど、当然こっちは魔法文明なのだし、細部ではちょっと異なったりする。
当然僕とエリー以外がこのキーボードを操作しようとしても、まともに動作しないようにしているし、見た目には動作しているような偽装工作まで付けた。安全管理って大事だと思うんだ。ちなみに僕とエリーを見分けるのは、操作する前にキーボードの傍にある水晶みたいな所を触れて認証を行う。人によって魔力の流れがどうも違うらしく、今のところ事前に同じ仕組みで作った物では僕ら以外反応がなかったのも確認済み。僕らが触ると水晶は緑色を放ち、他の人だと青や黄色、赤とか色々な色が出るようになっている。もちろん緑は絶対に出ない。しかも目の前にある記録結晶を応用した画面には、認証失敗はもちろんだけど、『認証可』『認証済』『コマンドエラー』とか、色々な文字が表示される。僕とエリーの場合には何も表示されないんだけどね。
「さてと。そろそろ正直邪魔だし、一旦彼らには退場してもらわないと」
そう言ってからキーボードで外の様子を映す魔動カメラの映像を、周囲にいくつもある画面へと表示させてから、まずは軽くジャブのつもりでいくつかキーを叩いた。
画面をよく見ると、そこに映し出された人達が急に周囲をキョロキョロ見回しているのが滑稽。
「クラディ、何をしたの?」
「町の外周には、魔動灯用という名目で配線をしているのは知っているよね? アレの中継器と言って付けさせたんだけど、実際には色々な魔法なんかを発動させる為の箱なんだ。で、今頃彼らは正体不明の耳鳴りが聞こえていると思うよ。まあ、十分に我慢出来る程度だけど」
「そんな事をしてたのね。で、それって何か意味があるの?」
「うーん、今のままだと意味はないかな? もちろん耳鳴りの大きさを変更すれば、即時に気絶すると思うけどね」
こんな事になったのだから、正直僕にだってイライラは溜まっている。それに時間はまだあることだし、ちょっとサディスティックになろうと思うんだ。
「さてと、次は……」
続けてさらにキーボードを操作すると、それまでキョロキョロしていた人達が頭を抱えて地面にうずくまりだした。
「ちょっと出力を上げて、耳鳴りから幻聴に近い物を再現させた。今頃彼らの耳には、金属板を引っ掻いた音がしているんじゃないかな? しかも色々な音が合わさっているから、かなりきついと思うよ」
これでジャブは終了。ところで、ジャブって実際どういう意味だっけ? 前世ではほとんどスポーツに触れることがなかったし、正確な意味って知らないんだよね。
そんな事をしている僕を見て、エリーは何だか苦笑している。まあ、止めようとはしていないから続けるけど。
「ここからが本番。それにしても魔法って便利だと思うな。僕らに敵対しているか判別することだって出来るんだから」
そう言いながらさらにキーを操作する。
「な、何が起きているのでしょうか?」
画面の一つを見て、ペララさんが困惑した声で尋ねてきた。まあ気持ちは分かるよ。全員という訳じゃないけど、急に苦しみながら地面を転がっている人が映っているんだからね。
「ちょっとしたショック魔法。ただし僕らに敵対心が強い人ほど、その効果は高くなる仕組み。だから命令でただ動いている人には、何が起きたのか奇妙に見えるんじゃないかな? まあ、敵対心がなくても軽い倦怠感はあると思うけどね」
そのまま画面をいくつか切り替えながら、ちゃんと動作しているか確認。一割ほどだけど、ほとんど症状が出ていない人もいる。三割くらいは地面を転がりながらのたうち回っているし、残りも頭を抱えながら地面にうずくまっている。少なくともこれらの人は僕らに敵対心が明らかにある人達だ。
当然連れてきている馬とかは何の影響もない。だから余計に奇妙な光景に見える。
「父上、甘いのでは?」
タルヤがそんな事を言い出すので、一応父親として『殺されないだけでも慈悲なんだよ?』と、苦笑しながら言っておく。実際殺すのは簡単なんだけど、じゃあその死体処理は誰がするって事になるし。まあ、それだってここから火魔法で一気に焼き払うことも出来るんだけどね。温度もマイナス百五十度くらいから、四千度くらいまで自在に操ることが出来るし。
「後でアルマルにはしっかり尋問をしたいから、そろそろ捕縛しちゃおうか」
大多数がもがき苦しんでいるのを確認してから、さらにキーを立て続けに打った。すると画面の向こうで突然土が変形して、彼らの手足を拘束していく。土魔法の応用なんだけど、土で出来ているはずなのに強度は鉄なんかよりもずっと強い。それが手足を拘束していきながら、特に暴れているのは胴体とかも拘束していく。
「で、最後に一カ所に集めると」
さらにキーを叩くと、捕縛した人達が少しだけ地面から浮いた。とは言っても地面すれすれだけどね。今度は風の魔法の応用。これで指定した場所に集める。
「さて。周辺は安全になったし、ちょっと話でも聞きに行こうか。今頃捕まっている全員が強烈な目眩に襲われていると思うけど、自業自得かな。あ、ついでだから向こうの援軍に偽装工作でもしておこうか」
そう言ってからさらにキーを叩くと、少し遠方で巨大な火柱が何本も現れたかと思うと、そのまま火災旋風のようになりながら周囲を動き始める。火柱の高さはざっと五百Mあるから、かなり遠くからでも見えると思うんだ。しかも煙が出ていないので、しっかりと火柱だと認識出来るはず。
もちろん彼らが連れてきた馬とか魔動車など、そういったのは、全く被害が出ていない。そのままこっちで徴収するからね。
「さて、アルマルはどんな顔をするかな? 尋問はペララさんにお願いするよ」
「畏まりました。お任せ下さい」
これで第一次サヴェライネン防衛戦は幕を閉じた。第二次がないと一番楽なんだけどね。
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