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第百四四話 これって鋼鉄だけど……

2016/06/09 誤字、表現内容についての指摘などがありましたので修正しました。

 鉄鉱石から銑鉄を作り、鋼鉄を作る工程も順調に進んでいる。むしろ順調すぎるくらい。


 石炭からコークスを作って、そこから銑鉄を作る訳だけど、銑鉄を作る際にどうしても大気汚染物質が多く出てしまう。それについては魔法で解決した。こんなのを前世の技術者が聞いたら、卒倒しちゃうんじゃないかな?


 方法はそんなに難しいことをしている訳じゃない。まあ、魔法があるから出来る事ではあるんだけど。


 まずは近くの森の大気成分を分析して、それを記録結晶に残しておく。それから普通にコークスと鉄鉱石で銑鉄を作るんだけど、排気されるガスから記録結晶よりも成分が多い物を次々と分離。流石に一つの魔方陣では無理があるので、そこは百個ほどの魔方陣を連続して使うという荒技だったりする。


 最初の煙路はとりあえず横向きにして、その中の上に魔方陣を張り巡らせ、魔方陣の下を通過する際に、特に重い成分から粉末状に色々な成分が落下していくんだけど、当然炭素系の成分が多くなる。横になった煙路の下側には、風魔法を応用した吸塵装置が置かれているので、まずはそこで様々な物を一度に集めている。


 下に溜まった残留物は、これまた魔方陣で重さを量り、一定量になったら魔方陣を組み込んだ小型のコンテナに収納する。コンテナの下にはレールがあり、満タンになったコンテナを次のコンテナが押し出すような仕組みだ。最終的には再処理の施設に送られることとなる。


 その間に横向きにされた煙路を通る排気は、森の中と同等の空気成分になっているのだけど、そのままだとまだ熱を持っているので、水の配管が多数ある場所を通して温度を下げていく。常温になった所で排気だ。


 温まった水は最終的に水蒸気になるほどの熱を帯びているので、当然これは有効利用。この辺は前世の知識かな。この世界では過去にもそこまでは行っていなかったみたいだ。当然水蒸気になるほどに暖まっているので、そのまま発電施設へと送っている。本当はちゃんとしたタービンを作りたかったけど、流石にそこまでの知識はない。それでも羽根が多数ある扇風機のような物を用いて発電。効率の悪さはとりあえず無視。


 資材に使えない木材とかそういった物は、いくら他で有効利用しようとしても限界があるし。このせかいというか、今の時代はほとんど薪を使っていないんだよね。だから本来薪とかで使う物も、案外余っている。キャンプとかでも火の魔石を使って物を温めたりしているから。むしろ貴族が鑑賞用? 目的の暖炉を使うくらいで、暖房ですら魔石を用いた魔法なのだし。もちろん柵木が使えないような時のために、それなりには物資として保管はしているのだけど。


 問題は、この世界にはまだ電気の概念がないんだよね。そもそも発電にしたって直流と交流がある訳で、確か距離がある所に電気を送るには交流が適しているはずだけど、前世の家電製品はほとんどが直流だったはず。今のところ町で電気を必要としていないのと、魔法文明で電気の必要性が一般の生活では必要ないので、正直電気を作っても持て余してしまう。


 本当はボーキサイトが見つかったので、それをアルミニウムに加工するための電気が本来必要だったんだけど、それも魔法という物が解決してしまった。魔法その物が、ある意味チートだと思う。


 そもそもアルミニウムは、通常ボーキサイトという形で天然に存在している訳だけど、それはアルミニウムと酸素が化合している状態で、さらに他にも色々な化合物が混じっていたはず。それを前世では単体のアルミニウムにするために、電解処理をしていたとは記憶しているんだけど、具体的な設備となると話は別だ。


 アルミニウム精錬工場で仕事をしていたとか、そういった事情でもない限り、普通はボーキサイトからアルミニウムを都合良く取り出す方法は分からない。分かったとしても、一人で出来るような事じゃない。


 でもこの世界には魔法があって、しかも僕みたいにアルミニウムのイメージ(といっても、一円玉だけどね)が比較的しっかりしていると、ボーキサイトからいきなりアルミニウムだけを取り出せるという、前の世界の人が聞いたら卒倒するような話になる。もちろんやり方は他の人にも積極的に教えているので、今では量産体制が整った。一つ見本を見せることが出来れば、そこから真似することはそんなに難しいことじゃないというのも、この世界の面白い所だったりする。


 そして量産するにしても、その魔法を魔方陣として作ってしまい、ボーキサイトをそこへ送るだけでアルミニウムは当然として、他の資源まで採取出来るというアホなことになってしまう。そこに電気が関与する余地はない訳で、これって科学文明が発達しない原因なんだよね。今さらそれを否定するのも難しいと思うけど。


 一応簡単に電気のことを知ってもらうために、前に偶然見つけた磁石と、コイルを作って、さらに利用出来ない廃材を用いて簡易フィラメントを作り、空気中で発光させて電気と電球のことを一応伝えた。まあ、空気中だからすぐにフィラメントがダメになるんだけど、これはあくまで研究用出し廃材だしと、個人的に良いことにしていたりする。


 確か前世では有名な某発明家が日本の竹を使ったとか聞いた気がするけど、この世界ではまだ竹を見たことがない。それに製品化を目指している訳じゃないし、あくまで電気の理解と研究用だ。なので電気抵抗で熱を帯びて発熱、発光してくれれば構わないからね。


 肝心の電気だけど、結局発電設備だけは作っておいて使わない事にした。まあ研究で必要になるという話があればいつでも許可するし、僕も全部に手を出せるほど暇じゃない。


 それとアルミニウムを製造出来たので、超々ジュラルミンを作りたかったんだけど、銅はあるのにマグネシウムがなかなか見つからない。あるにはあるんだけど、量を確保出来るほどじゃなかったりする。たしか超々ジュラルミンは亜鉛とマグネシウム、銅を混ぜた合金の筈だけど、細かい配合比率までは知らないし、どちらにしても領としては少なかったはず。見つかったら魔法でサンプルをいくつか試作すれば良いかなって思っている程度。


 水蒸気にまでなっていて、電気を効率よく作る事も出来る筈なんだけど、その温度を下げるのにどうしようか試行錯誤中。エリー達に相談したいんだけど、最近色々やり過ぎて呆れられているんだよね。自重しないといけないって思ってはいるんだけど、色々と出来るからそれが出来ない。なので最近は作った物の報告だけ。


 何か忘れている気がするんだけど、今さら聞くのが恥ずかしくて、それも出来ずにいる。


 それよりも大発見があった。


 さすがに配合比率は極秘なんだけど、鉄にミスリル銀とニューロトスと過去に呼ばれていた、本来は遺失金属が見つかり、それを試験的に合金化していたら、鉄系等の金属としては過去最強の強度と粘りを発揮した。


 ちなみにニューロトスは本来魔法金属との相性が悪く、対魔法金属として使われていたらしい。それを魔法金属であるミスリル銀に混ぜるという、とある研究者が何となくやってみたら予想外の効果が出て、かなり厳密に配合を行った結果が19-8-7超々鋼鉄として生まれたって感じかな。


 19-8-7は配合率ではなくて、試験を行っていた番号。なのでこの数字を元に合金を作った所で、同じ物は作ることが出来ない。それと名前が長くなるので、誰が言い出したのか34鋼鉄って名前を普段は使っていたりする。単に数字を足しただけなんだけどね。


 色々試験を繰り返した結果、同じ重さなら、34鋼鉄は鉄の六倍の強度と三倍の粘りがある合金である事も分かっている。これって下手にチタン合金とか使わなくても大丈夫じゃないかなって事で、現在色々と調査を繰り返している。


 他にも鉄に一定の割合でアダマンタイトを主体とした金属を混ぜると、強度はそのままで粘りが七倍になる合金もあるし、ガラスのように割れやすいヒヒイロラムナという金属を混ぜた所、粘りに変化はなかったけど、強度が同じ重さでも九倍になった。ただヒヒイロラムナはほとんど採取が出来ていないので、量産出来る見込みはないんだけどね。


 そんな感じで今までの僕が知っている常識とはかけ離れた鉄系等の合金が次々と生み出されている。量産出来る物もそれなりにあるので、新しく作成している魔動車や魔動鉄道、魔動飛行船などに試験運用で使い始めているけど、今のところ結果は上々。むしろ魔石を使っているとはいえ、魔石の魔力は有限なんだけど、その減り具合が小さくなっていると報告を受けている。早い話が燃費が良くなったという事だよね。


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 そんな感じで開発は相変わらず比較的順調なんだけど、どうやら悪い噂が流れ始めている。


 隣接する貴族領の内、挟み撃ちになるような形で二つの貴族領がこの領に兵を送る準備をしているという噂と、それを支援している他の貴族がそれなりにいるらしいとのこと。


 まさか馬車の襲撃の次は戦争?


 一応国内における貴族同士の戦いは、原則として『戦争』ではなく『紛争』という扱いになるらしいけど、王国経由の情報では『戦争』に近い戦力の集結を行っていると情報も来ている。


 流石にこれは無視出来ないし、早急に対応を考えないといけない。


 ただ、うちの女性陣が相変わらず産休状態なので、二方面作戦はただでさえ難しい状況なのに、余計に難しそうだ。


 一応王国から魔動飛行船などを使って内密の戦力を送ってもらうことになっているのだけど、どこまで間に合うかは未知数。


 エリー達にも簡単な説明はしたけど、さすがにこれらの事を任せる訳にはいかない。妊婦に任せることじゃないくらいは僕だって分かっているからね。


 それにどうやら三人が産休になったのを聞きつけて、これ幸いと挙兵したとの情報。まったく頭にくる方法だと思う。人の弱みにつけ込むって、最低だと思う。


 王国としてはどちらの貴族も『統治に問題がある』と判断されている貴族領らしく、今回は出し惜しみなしで迎撃する必要があるようだ。


 とにかく僕は一般の住民に対しての避難処置を指示しつつ、どうやって迎撃するかを早急に考えなければならなくなった。

毎回ご覧頂き有り難うございます。

ブックマーク等感謝です!


各種表記ミス・誤字脱字の指摘など忌憚なくご連絡いただければ幸いです。評価、ブックマーク、感想なども随時お待ちしております! ご意見など含め、どんな感想でも構いません。


今後ともよろしくお願いします。

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