第一三七話 領地の地図を作ろう(四)
「考えてみたら、別に写真みたいに風景を撮影するだけが作り方じゃないんだよな……」
地図を作るには測量というのが最も確実なんだろうけど、それはそれで広大な領地全域を調べるのは大変。何よりこの世界には魔物だっているから、草原だって安全とは言い切れない。
「確か前世だと人工衛星で……」
色々な方法があったはずだけど、レーダーで地表を調べる方法もあったなって思う。まあ、そういったのはきっと静止軌道とかにあったりとか、軌道が一定になるようにされていたとは思うけど。
「だったらソナー魔法である程度代用出来たりするのかな?」
僕が勝手に作った魔法だけど、方法論としては間違っていないはず。後はそれでちゃんと出来るか。
さっそく魔方陣を考える。上空から真下に向けて、尚且つ下の人とか作物に被害が出たり、不快感が無いようにしないといけない。その点では今までとちょっと違うかもしれないけど、理論的には出来そうな気がする。
そもそも魔方陣は魔法を放つ代用品でしかない。魔方陣に指定した間隔で指定した魔力を送れば、後は魔方陣がその通りの魔法を放つ。魔力は魔石で代用出来るし、放つ間隔は魔方陣でこれも指定すれば良い。反射してきた物を順次記録していくのに記録結晶が必要だけど、もしかしたら記録も魔方陣を使って、魔石で出来たりする?
それが分かればとにかく実験。ミランダから簡単な記録用の魔方陣に関しては教わっている。余りに簡単な仕組みなので、実際のところそのままでは使い道が無い物だけど。
そもそも記録結晶って名前が付いているけど、あれは魔石を加工した物。魔力がある石の事を総称して魔石と呼んでいるだけってミランダから教わった。実際に調べたら、魔石の元になった物は様々な成分を含んでいる。それも同一の性質ではないので、十分な魔力をその辺の石に供給するだけで魔石を作れたりする。
「えーと、魔方陣を描きやすい平らな石っと……」
適当な物は無いかなって近くを見ると、建築資材の見本という事で置いてあったタイル貼りの板があった。
「理論的にはこれでも大丈夫だったりする?」
試しに魔力をその板に魔力を流していく。大きさは一辺が十C四方程度の物。前世で十センチ四方くらいの大きさかな?
しばらくゆっくりと魔力を送り続けて、それを止めて確認すると魔石化していた。
「うーん。確かに僕の魔力が高いってのもあるんだろうけど、こんなに簡単に出来て良いのかな? 何か間違っている気がするけど、出来ちゃったのは事実だし……」
光ったりはしていないし、純粋に魔力だけを流したので属性の無い魔石だ。無属性の魔石とでも名付けた方が良いのか分からないけど、魔石である事は間違いない。
「えーと、記録するための魔方陣はこうやって……」
それから三十分ほどかけて魔方陣を作っていく。一回だけしか記録出来ない物で、記録用の魔方陣と投影用の魔方陣の二つ。投影用は何度でも使用可能だ。記録については、魔方陣が向いている方向からソナー魔法を出して、その反射を僅かな時間だけ受け手記録する。それを投影用魔方陣で壁とかに映すだけの簡単な物。
「周囲に迷惑がかかったら不味いよね……」
今回はソナー魔法について何も対策をしていないので、どこか適当な人のいない場所で試した方が良い。
「形が分かれば構わないだけだから……部屋の中でも良いのかな?」
魔石化したタイルの板を持って、部屋の壁に寄った。そこから部屋の中に魔方陣の魔法を発動させる。一応これでテストは出来たはず。
そのまま作業台に戻って、板を天井に向けてから投影魔法を発動させると、ちょっと粗いけど部屋の中の形が天井に映し出された。
「あれ? もしかしてこれで使えるんじゃ……」
そんなこんなで、試作を何度か重ねていくうちに、使い捨てタイプで良ければ詳細な記録が出来る板型魔石状記録結晶みたいな物が完成した。
まあ、改良する所はまだまだあるかもしれないけど、飛行船だって一度の飛行で領地全部を巡る訳じゃないし、これはこれで良かったのかもしれない。
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