表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/331

閑話 二 ハーフエルフの日常

2016/01/28 誤字修正しました

2014/09/25 漢字のミスなどを訂正しました

2014/10/31 指摘のあったミスを修正しました

2015/04/14 内容修正しました。

本文に『ふたなり』を一部連想する表記がありますが、主人公その他を含め『フタナリ化』する事はありません。あくまでこの小説の中での民族的特徴と考慮いただければ幸いです。

 僕がこの世界に転生してから六年が経過した。


 魔力とかその辺りに問題はあるけど、それ以外は生活にもさすがに慣れた。


 名前は違っても食事には慣れたし、この街か、この世界かは知らないけども、味噌や醤油に該当するような物は無いみたいだ。まあ、日本食が他の世界――少なくとも前世の世界と違うところに、早々あるとは思えないし、だからといって、それを作ろうとは思わない。


 『日本人は食に五月蠅い』いってよく言うけど、僕からしたら『郷に入れば郷に従え』の方が重要だ。何より日本食に重要な調味料の作り方なんて知らないし。


 完璧では無いみたいだけど前世の記憶もある。それを総動員すれば、それなりの事は出来るとは思ってる。じゃあ何でしないのか? 理由は簡単。面倒だから。


 まだ魔法も上手く使いこなせないのに、それで何かを作り出すのは無理だと思っている。出来る事と出来ない事ははっきりと区別を付けないと。


 それに醤油や味噌を一から作るとすると手間がかかる。今の家族がその味を理解出来るか分からないので、そんな手間暇をかけて作る事じゃない。


 それに僕が狼系統の混血だからか、肉に塩を振っただけの焼き肉でも美味しく感じてしまう事が多い。まあ、安上がりな食事でも済むのは、生きていく上で重要だと思う。


 そもそも生物は、水と塩さえあれば多少は生きていけるのだから。詳しくはもう思い出せないけど、アデノシン三リン酸とクエン酸サイクルには水と塩分が必要だったはずで、これが無いと筋肉や脂肪にエネルギーが供給されなかったような気がする。だから生命活動には水と塩が必須だったはずだ。


 今養われている僕の家は比較的裕福。少なくとも他の家に比べれば、食事に困る事もないし、日常生活だって十分に行えるお金があるみたい。


 お母さんが魔法の講師として塾のようなものをしている。生徒の数は一日に三十人近い。父さんも剣術の講師をしているけど、こっちは一日に三人いれば良い方。この世界では剣術はあまり重用されないのかな?


 授業料は日払いらしく、毎日それぞれがお金を持ってきている。支払ってからの授業なので、無償でというほど甘くはないみたいだ。生活がかかっているから仕方ないよね?


 ちなみに魔法の授業で最も基礎的な魔力の授業は一日銅貨三枚。普通の外での食事一食分らしい。一番高い授業でも銅貨四枚と青銅貨五枚。高いのか安いのかよく分からない。


 青銅貨十枚で銅貨一枚になる。銅貨十枚で刻印銅貨一枚になるんだけど、刻印銅貨一枚の価値はごく普通の家庭の一日分の食費らしい。もちろん家族構成で変わるみたいだけど。


 刻印銅貨の上に銀貨があるらしいけど、それはまだ見た事が無い。一般的には使われていないのかもしれない。まあ、実際まだ僕は子供なんだし、大きなお金があったところで使い道なんて分からないけど。


 僕たちの家は広くて、台所が二カ所と隣接する食事をする八畳くらいの部屋が二カ所。その他に十畳程ある応接間に父と母の書斎が一つずつ。本専用の部屋が二つあって、こっちは三畳くらいと六畳くらい。ちなみに家は石造りだ。石造りの家はお金がある人らしい。


 お風呂は結構広くて、多分三坪くらいある。浴槽は石だけど綺麗に面取りされていて、お湯は魔法で沸かしている。広さは二畳くらいありそう。その他にも洗濯をするための部屋があって、大きな壺の中に洗濯物を入れられる。その中に全員の洗濯物を入れて、お母さんが魔法を使って一気に乾燥までする。洗濯は多分三十分くらいで終わっている。魔法は一度で済むので、一度魔法を唱えればお終い。


 二階は全部家族の部屋。二十畳くらいの寝室が一つあって、そこはお母さんとお父さんの部屋。今は三歳の弟も一緒にいる。その他に僕と妹の共同部屋があって、広さは十畳くらい。もちろんベッドは別々だけど、ベッドの大きさはかなり広い。生前の時と簡単に比較出来ないけれど、多分ダブルベッドより大きいと思う。もしかしたらクイーンサイズとか、キングサイズ?


 その他に空き部屋が三つ。一つは倉庫代わりに使っていて、木箱とかも置いてある。部屋の大きさもそれぞれ十畳くらいある。片付けるのが面倒で、個別の子供部屋としては使っていない。


 さらに別棟が三つあって、一つは剣術道場。大きさは二十畳くらい。もう一つは魔法の教室。こっちは四十畳くらいある。魔法の教室には机と椅子が置かれていて、最大で八十人は入れるらしい。最後の別棟は工房。最近知ったんだけど、錬金術兼用の作業場と、魔法道具や錬金術のための部屋が一つずつ。ただ、最近はほとんど使っていないみたい。なので比較的最近になって知った。


 あとは魔法兼剣術などの練習広場が家の裏にあり、多分六十坪くらいある。今はどちらかというと魔法の練習にばかり使われているけど、一応剣術用の用具も置かれている。


 なので僕らの家はかなり大きな家と言っていい。まあそれなりの人数に教える事を仕事にしているのだから、あまり狭いと駄目だろうし。


 収入は主に教えている生徒からの学費だけど、お母さんがたまに小さな怪我を治していたりして、その副収入もある。怪我の度合いによるけど、大体一回銅貨一枚。もちろん治せないような時は、簡単な止血とかをしてから病院に行くように伝えている。前世でいう所の診療所的な存在なのかな?


 お母さんの収入がかなり多いので、お父さんはハッキリ言って尻に敷かれる状態。でも、夜は色々別らしい。


 興味が無いといえば嘘になるけど、その件についてはあまり触れないようにしている。そもそも前世では縁がなかったな……。


 本当の家族じゃないって知っているのもあるし、この家族の営みにケチを付ける程馬鹿じゃない。余計な事をして嫌われる事の方が嫌だ。まあ、これは前世からの教訓だけど。


 それはそうと、どうしても慣れない事がある。


 種族的な民族衣装はこの世界にも当然あって、ほとんどの人はそれにあわせた衣装を着ている。それこそ千差万別だ。


 例外は純粋な人族くらいだけど、その場合でも他の種族と結婚している場合は、その種族の衣装を着ている場合が多い。


 その理由は『私はこの種族と結婚(婚姻・お付き合い)をしています』というサインらしい。


 当然僕にもそれが当てはまるわけで、外見上はほぼエルフな僕はエルフの民族衣装を纏っている事が多い。


 じゃあ、エルフの民族衣装はどんな物かというと、前世で言う所の女性の衣服に近い。


 普段着用している事が多いのは長めのワンピース。次に多いのがチュニック。色こそ好みで良いのだけど、基本はその二種類。その他にブラウスを着る事もある。大体はこの三つのどれかを着ている。


 一番面倒なのは正装。この世界のエルフは、男女ともに正装の種類は同じ。ロングドレスが基本になっている。違うのは男性が黒で女性が白である事だけ。子供の場合は例外的に他の色が認められているらしいけど、それでも大抵は色を守るらしい。


 またエルフ族の下着は男女共用で、下着は原則一種類。タンクトップのキャミソール。


 これにはいくつか理由があって、実はエルフ族やハーフエルフだと、男でも女性のようなバストがある。もちろん女性のエルフとかから比べればサイズは劣るのだけど、それでも普通にCカップくらいの大きさは標準らしい。希に男性でもFカップの人もいるのだとか。


 なぜそんな胸が大きいかというと、この世界のエルフ族は一定の年齢を過ぎれば男女関係なく母乳が出るのだそうだ。


 今ではエルフ族やハーフエルフの数も多いらしいけど、大昔はかなり少ない民族だったらしい。その進化の結果、男女ともに母乳が出るようになったようだ。だからといってもちろん男性のエルフが子供を産むなんて事は出来ないのだけど。


 最近ではエルフ族でも下着を上下別々にする場合があるらしく、その場合はもちろん男性でもブラジャーを付ける。でもそれはまだまだごく一部。まだブラジャーが一般的には高価らしい。


 体がそんなだから、男性であっても顔が女性的な人は多いし、せいぜい中性的な顔立ち。なので他の人たちから見ると当然男女が分からない事も多い。


 ちなみに僕のバストは六歳にしてすでにDカップになっている。まだ母乳こそ出ていないけど、それも時間の問題らしい。純粋なエルフ族よりは遅くなるらしいけど、ハーフエルフである僕は遅くても十歳程度で出るそうだ。


 そしてもう一つ面倒なのが、エルフ族は大抵長髪である事。それも最低でも腰まで。普通は膝くらいまで伸ばす。もちろんハーフエルフでも見た目がエルフ族に近ければ同じようなスタイルにするのが常識で、僕も例に漏れず太ももまで銀色の髪がなびいている。


 ほとんどのエルフ族は髪を結んだりする事がなく、数個のヘアピンで髪が前に来ないようにするだけ。だけど当然そんな状態だから、風の強い日には髪が邪魔になる事が多い。エルフ族が髪を長くするのはいくつか理由があって、そもそも髪自体に魔力がある事。そして普通の種族よりも高い強靱性を備えているそうだ。


 それが理由なのかは分からないけど、エルフの髪から作られた弓は高額になる。一般的な弓の五倍以上の価値があるらしい。滅多に市場には出ないらしいので、場合によっては普通の弓の百杯くらいの値段もするのだとか。ほとんどの場合、抜けた髪の毛を保管しておき、ある程度束になったら売るそうだ。魔力があるためか、抜けても髪の毛は簡単に劣化しないのも保管される理由の一つ。


 例外的に生まれてからしばらくの間の髪は独自に保管して、一定の量が集まると自分の弓を作る材料にする。場合によっては最初に生えた髪の毛を切ってから弓の素材にする。昔からの風習でお守り的な意味があるようだ。もちろん僕も自分の髪で作った弓を持っている。僕の場合は後者だ。


 そんなハーフエルフの僕だから、日常生活も結構面倒な事が多い。


 お風呂がある家では毎日お風呂に入る風習があるんだけど(無い家は共同浴場などで三日に一度とか)、髪を洗う時間がとにかくかかる。当然時間がかかるので、エルフ族に男女別々の入浴習慣はないらしい。なので今でもお母さんと妹三人でお風呂に入っている。


 普通の人からすると羨ましいと言われるんだけど、お母さんもクォーターのエルフにしては外見がエルフに近いので、僕と同じように髪を伸ばしている。それで妹と一緒に三人で髪を洗う事になるわけだ。妹は五歳だけど、エルフの血が濃く出ているので髪も腰まですでにある。身長こそ違うけど、長い髪を一人で洗うのはやっぱり大変だ。なので髪を洗うときは共同作業の場合が多い。唯一救いなのは、魔法で簡単に髪を乾かす事が出来る事だけど、それでも髪を整えるのは大変だ。


 周囲からは『混浴が羨ましい!』なんて言われたりもするけれど、エルフ族の習慣を事前に知っている人はそんな事を言ったりはしない。でも知っている人は少ないので、ちょっと面倒だったりする。


 それにしても、なんでハーフエルフなんかで転生したんだろう……。正直面倒な事が他の種族より多いや。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ