OP01 ブラッド・レクイレム
―数日前。
英人の意識は仮想世界へダイブし、とある一つのゲーム世界に到着した。
『エンチェインドマスター』
いかにもゲームっぽい感じの題名のそれは、プレイヤーが人型ロボットを操縦し、相手を倒すというシンプルなルールのゲームだ。だが、難しいのは操作方法で、実際にアニメなどでよく出てくるコックピットに座り込んで操縦桿を動かさなければならないのだ。さらに設定を忠実に再現すべく、意識はずっとコックピットの中。地を蹴って飛ぶことも、前に前進することすら、今までのTVゲームで簡単だったことがこんなにも難しいと理解する。
英人は通信プレイに入るとすぐさま自分の機体のコックピットに意識が飛ばされた。自機は自身でカスタマイズ可能であり、英人は接近戦に特化したロボットにカスタマイズした。
通信プレイでは他のプレイヤーと戦うことになる。雑魚が現れるか、それとも強敵が現れるか……
「楽しませてくれよ……俺は退屈なんだ」
ステージは荒れ果てた廃墟ばかりの街。素人の目で見ても分かるほど、すさんだその地域で人が住むことは困難だ。
仮想視界のウィンドゥに『デスマッチスタート』という表示が現れた。ゲームが始まったのだ。
英人は操縦桿を握る手に力を込めた。やり慣れていると言っても、リアルに再現された戦争跡の地は醜く荒れ果てている。見るだけで耐え難い。
汗が出るはずがないのに、全身を汗が伝う感覚がする。
「まず状況を確認しないと」
操縦桿を後ろに下げ、機体を後退させる。建物の影に隠れて銃を構えた状態で機体を停止させると、サイドモニターで戦況を確認した。
どうやら先程から始まっていたゲームに割り込んでしまったらしい。このゲームは攻め落としたらステージクリアである敵軍の『コア』が存在する。『コア』を破壊すれば、自軍の勝利。自軍は他に十一機いるが、どうやら『コア』を攻撃されている真っ最中のようだった。
「よし、『コア』を護りきっている方々には悪いが、先に敵陣に切り込む」
敵軍の『コア』を見つけた英人だが、直前に敵機に捕捉された。英人は慌てて銃口を敵に向けるが、一瞬早く発砲されてしまい、右肩を損傷した。
モニターに被害状況が表示された。
「よし、まだいける!」
銃を放棄し、片手装備剣を左腕に装備。敵機に突進をしかけた。
「!」
相手はきっと驚いたんだろう。英人のはなった攻撃をよけたときにかすかにひるみ、英人はその隙を見逃さなかった。
すぐさま剣で切りかかり、両手両足を切断する。
そして、最後にコックピットを一突き。たちまち敵機は爆発し、全てのモニターに炎上する爆炎が映っている。
その後、すぐに『コア』を破壊し、ステージクリアとなった。
だが、英人は満足した表情を一つも見せなかった。