木の実遊びと聖剣
「理由ですと? 旦那様、聖女陛下と皇帝陛下のご命令より重要な理由が、一体何だというのですか」
「これが何か、見てみろ。聖グラディスがかつて竜を屠った時に用いた聖剣だ」従者が馬の荷から、羊皮紙に包まれた一振りの長剣を取り出した。金色の光が刻まれた刀身に明滅している。それを受け取り、衛兵隊長の前に差し出す。
「セナトール伯爵閣下が教会より聖遺物を賜ったことは存じております。ですが……それと出城に、どのような関係が?」衛兵隊長が困惑した面持ちで問うた。
「聖遺物がいかに貴重であるか、わかるだろう。自分の所領に持ち帰って保管したい。そんなに理解しがたいか? 首都には相応しい保管環境がないんだ」
「それは……」衛兵隊長の声に、迷いが滲んだ。
「名前は? 保管が済み次第すぐに戻る。聖女と陛下への説明は、自分で行う」剣を手の中で弄びながら、少しずつ刃の角度を傾けていく。刀身に宿る金色の光が、衛兵隊長の目に差し込んだ。
「……承知いたしました。私はファレク・スパッサ。教会に属する封臣で、つい先日、誓約を立てた司教の命により北方から参った者です」ファレクはそう名乗りながら、手を差し出した。
「通せ」その号令とともに、門番の兵士たちが長槍を引き、城門が開かれる。私は身を翻し、馬車へ戻ろうとした。
「旦那様、お手を——護手をお着けになった方がよろしいのでは?」だがその時、先ほど聖剣を渡してきた従者の声が、気遣わしげに追いかけてきた。噛み破られ、さらに意図的に抉り広げられて血が滲んでいる傷口が、目に入ったのだろう。
「大丈夫だ、エクレ。大した傷じゃない」手を振ってみせ、何でもないと応じてから、馬車の扉を開けて再び乗り込んだ。
「シアティ、クスタ、お前たち二人は俺の馬を見ていろ。——出発だ」命令とともに、馬車がゆっくりと動き出す。
「あなたのいつものやり方なら、部下と一緒に剣を抜いて威嚇するところでしょうに。どうして弁論なんか試みたの」チェルシーが嘲るように言いながら、再び私の手を握った。白い爪が、桃色に腫れた傷口の中に沈み込んでいく。
「好きなだけ笑え。確かに後悔してる。子どもの頃の誤った印象が、誤った判断を下させた」
——
同じ聖タク暦一七五三年。ただし、時刻は夕刻に移っていた。幼い私と幼いチェルシーは庭園を歩き回った後、骰子遊びや盤上遊戯など様々な遊びに興じ、今は木の実投げの真っ最中だった。
遊びの手順はこうだ。まず木の実を一つずつ積み上げてピラミッド状にする。それに向かって木の実を投射し、崩す。
跪坐の姿勢を静かに保ったまま、手を後ろに引く。投槍の練習で身につけた動作を模して、木の実を放った。
「勝った」木の実は一本の滑らかな直線を描いて土台に命中した。丁寧に積み上げられたピラミッドが四散し、大理石の床を転がっていく。
「ずるい、あなたは投射の訓練を受けてるじゃない。やり方を変えよう。板を置いて、それで転がして当てるの」小さなチェルシーが不満げに言った。
「わかったよ、別のやり方にしよう」チェルシーの提案を受け入れ、周囲の侍女に板を持ってきてもらい、ピラミッドの再建を手伝ってもらっていた時だった。一人の侍女が外から駆け込んできて、私の姿を見るなり走り寄ってきた。
「セナトール伯爵閣下のご子息様でいらっしゃいますか」侍女は息を切らしている。よほど急いで来たらしい。
「そうだけど、何かあったのか?」訳がわからず、侍女を見つめた。
「叔父上様、ポンフィロ司教のお言いつけで参りました。聖女殿下がお会いになりたいと。司教会までお越しいただきたいとのことです」
「聖女が? 父上は知っているのか?」困惑が深まる。
「セナトール伯爵閣下と国王陛下には既にお伝えし、ご許可をいただいております」
「行っちゃうの? 私たちの遊び、どうするの」チェルシーが名残惜しそうに、私の手を掴んだ。
「次また来るよ」
「じゃあ約束して」
「ああ」私はチェルシーの手を握り返して、約束した。
「あ、チェルシーお嬢様、お嬢様も宮相様のお側にお戻りいただけます。お話はもう済んだそうです」侍女は私たちのやり取りが終わるのを静かに待ってから、続きを口にした。それからまず、私とチェルシーを主殿に連れ戻し、国王陛下と宮相に別れの挨拶をさせた。その後、私を叔父のもとへ送り届け、聖女への謁見に向かわせた。
あの時の私は思いもしなかった。聖女の傍らに、もう一人——膝を抱えて蹲る少女がいることを。
そして彼女が、未来の女皇になることを。




