1 君は誰?
放課後の一本樹高等学校の美術室で、十一人の男女の生徒が石膏でつくられた人の頭部のスケッチをしていると、美術室の戸が開き、エコバッグを肩から下げた男子生徒が中に入ってきた。
「部長、部活に来るのが遅いよ」
「ごめん、ごめん。顧問の先生に呼ばれたんだ。先生は会議があって、今日は部活に来られないんだって。代わりにジュースの差し入れを貰ったよ」
「やったーっ!」
部員たちは、部長が机の上に置いたエコバッグの中からペットボトルに入ったジュースを一本ずつ取ると、席に戻って飲み始めた。
「あれ……? 一本足りない……」
部長は、自分の分のジュースが残っていないことに気がついた。
「え? 美術部員って、俺を入れて十二人だよね? 十三人いる……」
生徒たちはお互いの顔を見合わせたが、部長が何を言っているのかが理解できず、不思議そうに部長の顔を見つめた。
「どういうこと? みんな部員だよね? 部員じゃない人は見当たらない……。なのに一人多い……」
部長は、きょとんとしている部員たちを見回しながら言った。その時、一人の男子生徒が俯きながら立ち上がった。
「え? 君って、うちの部員だってことはわかるんだけど……、誰だっけ?」
立ち上がった男子生徒は顔を上げると、ニタッと笑った。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああっ!」
美術室から十二人の生徒の悲鳴が響いた。