割り切れない男殺人事件
何も考えずに呼んでいただけたら幸いです。
「てなことがあってさー...」
「ふうん、大変だったね」
私、善巻こまれは先日のペンションでおきた殺人事件の顛末を話しながら、昔ながらの友人、果無の住んでいる神奈川県北部の子汚い家で昼間っから安酒を煽っています
「でも神奈川県北部にそんな有名な探偵がいるんだねぇ」
「有名っていっても、果無も知らないでしょ?自称ってやつだよきっと」
「なんて名前なんだっけ?」
「たしか...波次郎とか言ってた気がする」
「な・み・じ・ろ・う...っと...。あ、検索したら出てくるじゃん」
「え?うそ?」
「えーっと、なになに...。どこでも配達。最高級の寿司を提供する漢の這い寄る一撃...」
「なにそれ...」
くだらない話をしていると、小汚いワンルーム
アパートのインターホンが鳴りました。
「お、ピザ届いたかな?」
「お〜、やっぱし昼間から飲む9%にはピザだよね〜!」
私は彼女に付き添ってワクワク気分で玄関に向かいました。
「毎度ぉ!寿司の波次郎でさぁ!」
そこにはねじり鉢巻に白いタンクトップ、ビニールの腰巻き前掛けに長靴、逞しい筋肉を携えて、しゃくれた四角いお口には何故かでかめのカイワレを咥えているオジサンが腕組みをしていました。
「うわぁああ!波次郎だぁ!!」
「へい!俺は波次郎でぃ!ピザお待ち!」
「寿司屋じゃないの!?ピザなの!?」
「俺ぁそんじょそこらの寿司屋じゃないぜ!配達なら弁当だろうがピザだろうがラーメンだろうが何でもござれだ!」
「それもうただのUber Eatsじゃん!?」
「てやんでぃ!うだうだ言わねえで受け取れ!」
「縦!?ピザなのに箱縦にして持ってきたの!?」
私がそうツッコむと同時に、向かいの部屋から大きな悲鳴が聞こえました。
「よいしょぉぉおおお!!!!」
更に同時にピザを配達する波次郎さんは向かいの部屋の扉にタックルをかまして扉をぶち破りました。
すると、外開きなのに内側に折れた扉の目の前には一人の女性がうつ伏せで倒れていました。
「おいおい!こいつぁ殺人事件だぜ!」
すると家主と思われる男性が一人と、その友人と思われる方々総勢18人が六畳一間から姿を現しました。
悲鳴が飛び交う現場は騒然です。
「一体どうしたんだね!なんだこれは」
そこにたまたまアパートの階段を昇り降りして勤務時間を潰していた茶色いコートの刑事さんも現れました。
「おおちょうどいいとこに!これは殺人ですぜ警部!」
「波次郎くんか!君がいれば百人力だ!だが私の刑事の勘が間違っていなければ、犯人の目星はついている!家主のお兄さん、君が犯人だね?」
「そんな!ボクっすか!?」
「君の名前は裏見有蔵。27歳独身勤め先は神奈川県北部で魚河岸をやっているね」
「そんな!ボクのことを知っているんですか!?」
「毎日ここの階段で暇をつぶしているからね。私にはわかる。君は被害女性と恋仲だったが、浮気現場を目撃して逆上したんだ。それを友人達がいるパーティの最中に殺したというわけだ」
「そんな!」
「よし逮捕だ!」
「そんな!」
「口答えをするな。公務執行妨害だ!」
「そんな!」
「まあ待ってくださいよ警部さんよぉ!この事件、裏があると見たぜ俺はよぉ!」
「なんだって!波次郎くん!詳しく教えたまえ!」
「まず、白昼堂々友人を呼んだパーティの中家主が人を殺すなんてあると思うか?」
「たしかに!!!!」
「しかも総勢19人。素数だ。それによく見てくれ、被害者のダイイングメッセージを!」
「こ、これは!?」
被害者の方をよく見ると、手のあたりには血文字で何かが書かれていました。
「...313って書いてありますね」
「お嬢ちゃんの御名答だぜ!313これの意味するものはなぁ...!」
私はゴクリと唾を飲みました。
果無は横でゴクリ酒を飲みました。
緊張の最中、波次郎さんはビニール製の前掛けを両手でパンと叩きました。
「素数だ!」
「なるほど!!!!!」
「つまり犯人はこの中で一番割り切れなさそうな顔をしているやつだ!」
「確かに!!!!」
刑事さんはそう言うとすぐさま一番割り切れなさそうな男に手錠をかけました。
「オレの名前は梨見伊作...、ちっ、まさか、オレがこの女と割り切れない関係だったことまでお見通しだとはな...。行ってくれ刑事さん」
「ああ、詳細は地獄で聞いてやろう。一件落着。ありがとう波次郎くん」
「へっ、いいんでさぁ刑事さん。なんてったって俺は神奈川県北部の名探偵、人呼んでゴリ押し探偵、寿司の波次郎だぃ!」
神奈川県北部の「か」のあたりで扉を閉めてしまったのですが、とりあえず私達には関係なさそうでよかったです。
ちなみに犯人はとくにおらず、被害者は虫に驚いて悲鳴を上げたところ波次郎さんのタックルで気絶しただけらしいです。
ピザは冷めてたけど美味しかったです。
めでたしめでたし。