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パンケーキを作ろう



◯月◯日 晴


今日から、日記をつけてみた!エレノアには、内緒!

沢山書いたら、サプライズで一緒に日記を読み返すんだ!


今日は初めてエレノアとパンケーキを作ったよ。

少し失敗しちゃったけど、楽しかったし、温かくて、美味しかった。

また一緒に作りたいな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「エレノア、おはよう!」

「おはよう、ルーチェ」


鳥の鳴き声に目が醒める。

ベッドから身体を起こすと、隣で寝ていたエレノアも同じタイミングで、瞼を開けたので、挨拶をした。


「ルーチェ、寝癖ついてるよ」

「え、後で鏡見て直さなくちゃ」

「ふふふっ」


※※※※


私とエレノアは同じ時期に生まれた魔族だ。

魔族はみんな、魔王様から生み出された存在で生まれる場所はバラバラらしい。

だからか分からないけど、会ってもお互いに同族とは思うけど、仲良くしたいなとかは思わない。

でも、エレノアは違う。

エレノアと私は同じタイミングで同じ場所で生まれて、初めはなんとなく一緒にいたけど、エレノアの隣は楽しくて、とっても居心地がいい!

今ではもう、エレノアがいない生活は考えられないくらい。


そんな生活をしていた中、ある日、私の中でちょっとした欲が生まれた。

今までは、ふらふらと色んな場所で寝起きしていたけど、エレノアと『お家』というものに住んでみたい!そう思うようになった。

勿論、エレノアと一緒だとどこでも楽しいけど、雨風がなくて、岩がゴツゴツしてなくて、起きたら虫が身体を登って痒くない生活をしたいし、他の生き物みたいに自分達の場所を持ってみたかった。

そのことをエレノアに言うと、同じ事を考えてくれたようで、嬉しくて思わず抱きついてしまったのはいい思い出。


それから私たちは、理想の『お家』を探したけど、思っていたよりも、それはあっさりと見つかった。


人里から少し離れた森の中に小さな可愛いらしい、まさに理想の『お家』を見つける事が出来たんだ。

でも、ちょっと心配だったのは、人間の村が近くにある事位だったけど、私達は既に人間に見た目を変える事が出来ていたから、多分大丈夫かなと思ってそのお家に住むことに決めた。


お家に住むにあたって、元々私達には名前はなかった。万が一人間が訪ねできても怪しまれない様に、私は『ルーチェ』、エレノアは『エレノア』って名前をお互いにつけて、その名で呼び合うようにした。

始めは慣れなかったけど、今ではすっかり私達の名前として馴染んでいる。


「じゃ~ん!みてみて!!寝癖治った!」

「お、キレイ。櫛の使い方、上手になったね」

「でしょー、練習したもん」


お家に住むこと数週間。

一応、バレたら危ないから常に人間に変身している。

最初こそ人間の道具の使い方が難しかったけど、今では徐々に慣れてきた。

それに、出来るようになると楽しい。


それは、エレノアも感じているようで、今では私よりも道具の使い方が上手い。

ちょっと悔しいような、でも流石エレノアって思う。

エレノアは、人間への関心が私よりもあって、家に元々置いてあった人間の本を熱心に読んだり、こっそりと道具の使い方も練習している。

前になんで?って聞いたら、『敵を知ることはゆくゆくは、魔王様の勝利に繋がる、かもしれない』って言ってた。

エレノアは、私よりも努力家だ。

そこが、尊敬するところで好きなところ。

だから、一緒にやりたいと頑張りたいと思えるんだ。


※※※※


「ねぇ、ルーチェ。提案があるんだけど。料理をしてみない?」

「料理?料理って人間が食べ物でこねたり、焼いたりして遊ぶやつ??」

「んー、ちょっと違うらしいんだけど⋯」


エレノア曰く、料理というものは、食べ物を美味しくしたり、保存がしやすくするためにするものらしい。

正直魔族は、それぞれ好みはあるけど毒でも腐ってても食べる事が出来るから必要ないと思うけど⋯。まあ、エレノアがやりたいっていうなら⋯。


「うん!やってみよう!」

「よかったっ。ルーチェだったらそう言ってくれるって思ってたんだ」

「⋯でも、何をするの?私やり方が分からないんだよね⋯」

「ふふん、もう決まってるんだ。パンケーキっいうのを作ろうと思うの」

「パンケーキ?」


名前は知ってはいる。

エレノアと読んだ、絵のたくさん描かれた本の中にあった。

確か、小麦粉と牛乳と卵でできたやつ。


「そう、パンケーキ。前に一緒に見た本の中にあったでしょう?材料を偶々みつけたの。この家、地下に小さな食料庫があったのよ」

「え!そうなの!?気づかなかった」

「昨日、ルーチェが森で食料を取ってた間にみつけたの。その中にパンケーキの材料があって、せっかくあるんだからやってみたいなって思ってたの」

「いいね!でも、作り方分かんないよ⋯」

「大丈夫!パンケーキの絵が描いてある本に作り方あったから」

「え!?」


あの本にそんな事が書かれてたのか。

途中で飽きてしまって気づかなかった。

エレノアには、飽きていた事は気付かれていたようで、ルーチェはまったくーなんて、笑われちゃった。


早速、料理をしようとキッチンに向かうと、材料は既にエレノアが揃えてくれていた。


「エレノア、これなぁに?」

「エプロンっていうんだって。料理するときは、服の上から着るらしいよ」

「なんで?」

「さぁ⋯?儀式着みたいな感じなのかな?」


これも家にあったらしいエプロンを、服の上から着るのは少し大変だった。

服には慣れたと思ったけど、ちょっと違くて、途中からどこに頭や腕を通すか分かんなくなる。

特に後ろの紐も結ぶのが難しいので、エレノアに手伝って貰った。

流石のエレノアも、後ろ手に結ぶのは難しかったようでそれは私が手伝った。

が、エレノアみたいにキレイに結ぶのも難しく、苦戦した結果、輪っかのない結び方しかできなかった。

悔しいから、後で絶対エレノアと練習しよう。


ようやく、エプロンを着終わった私達は、料理を始めた。


「あ、ルーチェ、混ぜるとき力加減優しくね。人間の物は壊れやすいから」

「はーい」


ボールに卵を割り入れ、牛乳と小麦粉を入れる。

てっきり、卵は殻も入れるのかと思ってたけど、殻は必要ないらしい。もったいない。

泡立て器というもので、優しく混ぜた後、エレノアが魔法で火を出して、温めたフライパンに混ぜたものを流し入れる。

ふつふつと小さな泡がでてきた。ちょっと好きな匂い。

ふつふつが、ひっくり返す合図だとエレノアが教えてくれたけど⋯


「あれ?フライパンとくっついてる。取りづらい〜」

「本当だ。おかしいな⋯、絵の本だと綺麗にひっくり返してたのに⋯」

「うーん、でも頑張れば取れそうだよ!あ、ちょっと崩れちゃった⋯」


本に描かれたパンケーキとは違い、すんなりとは剥がれず、崩れてしまったが何とかひっくり返す事が出来た。

もう片面も焼けたか確認して、またフライパンから引き剥がすともっと崩れてしまった。

けど、なんとかお皿にのせる事が出来た。


「やったー!エレノア、机に持っていって食べようよ」

「うん。あ、でも先に持っていって。私持っていく物があるから」

「?わかった」


出来たばかりのパンケーキが乗ったお皿2枚。フォークも2本机の上に置く。

お皿を置き終わったタイミングで、エレノアは果物と黄色の液体が入った瓶を持って机に置いた。


「それは?」

「蜂蜜。食料庫にあったの。かけると美味しいんだって。果物も昨日採ってくれたのがあったから、持ってきたの」

「素敵!ありがとう!」

「ふふっ、じゃあ食べようか」

「うん、蜂蜜つけて食べてみよう」


とろりとパンケーキに蜂蜜をかける。

沢山、使い方を練習したフォークで刺して、恐る恐る口に運んだ。

口の中に入れたパンケーキは、、焦げている部分もあるのか、苦さもあったが、少しふわふわしていて、温かさと蜂蜜の甘さを感じた。

噛むとほろ苦さとパンケーキに染みた蜂蜜の甘さが染み出て、好きな味だった。


「⋯美味しい、温かいね!料理って凄い!」


目を輝かせて、エレノアに顔を向けると、同じ思いを感じていたようで、フォークを加えたまま目をキラキラさせて何度も頷いていた。

その後、残った牛乳と一緒に食べると、また違った美味しさを味わいを発見し、楽しい時間を過ごした。


※※※※


夜。お互いにベッドに入りながら、眠る前にお喋りをする。

それが私達の日課だった。


「ね、パンケーキ美味しかったね。でも、どうしてフライパンとあんなにくっついちゃったんだろう。お片付けも本当に大変だった⋯」

「そうだね。あの本には描いてなかったから、また調べてみようね。ルーチェ、また一緒に料理してくれる?」

「勿論!エレノアと一緒にまたやりたいよ!」

「ふふっありがとう。私ね、人間のやる事もっと知りたい。今日の料理をして思ったの。なんで人間はあんなに面倒な事をするのか。でもやってみたら、やる意味がちょっとは分かったの。今まで、人間は敵だからって知って来なかったけど、でもやっぱり私、人間の事もっともっと知りたい。ルーチェと一緒に」

「エレノア⋯、私もエレノアと一緒に人間の事知りたい!そして、いつか私達で人間博士になろうね」

「人間博士⋯、いいね。約束、ルーチェ」

「うん、エレノア。約束」


今日も1日が終わる。

私は、正直人間の事はあまり敵である事にしか認識はないし、知りたいとは思わないけど、エレノアが楽しければいい。

明日は、何をしようか。

そこっそりと書いた日記をいつかエレノアと見返す

日はいつ来るだろうか。

そんな事を思いながら、エレノアと眠るまで話を楽しんだ。





※※※※





「それにしても、よかったね。ルーチェが、丁度いいところに家が見つけてくれて。まさか、人間が4匹もいるとは思わなかったけど、ルーチェが助けてくれたし、弱くてよかったね」

「そうだね!何とか、エレノアと力を合わせて頑張ったもんね」

「ねぇ、ルーチェ、明日は何しようね?」

「ね!楽しみ!」

ルーチェ(魔族)

エレノアが大好き。


エレノア(魔族)

ルーチェが大好き。





エレノア(人間)

引っ越したばかり。

これから新しい生活が始まると思っていたら、襲われた。

妹を最期まで守っていた。


ルーチェ(人間)

引っ越したばかり。

これから新しい生活が始まると思っていたら、襲われた。

姉が誕生日だったので、母とケーキを作る約束をしていた。


両親(人間)

父は薬師。母は少し身体が弱かった。

前に住んでいた村が襲われて、ようやく引っ越したばかり。

これから村人に挨拶をと思っていたら、襲われた。

襲われた後、一瞬意識を取り戻したが、守ったはずの子ども達はもういなかった。

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