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第三章 静寂が満ちる港 セリオス

迷いの森を抜け、リズとベルはようやく港町セリオスに辿り着いた。

潮の香りが鼻をくすぐり、遠くからは静かに波の音が響いている。

町の入り口に広がる白い石畳が二人を出迎え、どこまでも続く美しい街並みに、リズはしばし立ち止まった。

白い石で作られた建物は、どれも古びていながらも威厳を持ち、太陽の光に照らされて眩しく輝いていた。


「ここがセリオスか…」


リズはベルに語りかけながら、目の前の光景に目を奪われた。

港に向かって坂道を下ると、漁師たちが船を行き交わせ、波間に揺れる小舟の間を忙しなく動いているのが見えた。

港にはアコーディオンの音色が響き渡り、赤いドレスをまとった女性が音楽に合わせて踊っている。昼間の港は活気に溢れ、リズは思わず微笑んだ。


宿を探して歩くうち、二人は小さな宿屋に辿り着いた。

古い看板が風に揺れて軋む音がする。


「ここに泊まろうか、ベル」


リズはベルの頭を軽く撫で、宿の扉を開けた。

中に入ると、店の奥から一人のおばちゃんが姿を現した。

背は低いがどこか朗らかな雰囲気を持つその人は、リズを見ると笑顔で迎え入れた。


「おやまあ、旅の若い娘さんかい? 今日はどこから来たんだい?」


おばちゃんは、リズとベルを見つめ、目を細めてにこりと笑った。


「隣の小さな村からです。これから隣の大陸に行こうと思って、今夜はここで一泊しようかと…」


リズが答えると、おばちゃんは頷き、彼女たちを暖かな部屋に案内してくれた。


「そうかい、夜になったらね、少し町を歩いてみるといいよ。セリオスの夜は特別だからね」


おばちゃんは、リズに微笑みかけながら言った。


夜になると、昼間の喧騒とは打って変わって、町は静寂に包まれた。

おばちゃんに言われた通り、リズはベルと一緒に外へ出てみた。

石畳の道を歩き、港に向かって進むと、彼女の目に驚くべき光景が飛び込んできた。


月が高く昇り、その光が海面に反射していた。

静かに波打つ海に映し出された月光は、まるで水面を揺らめく鏡のようだった。

リズはその幻想的な景色に思わず息を飲んだ。


「すごい…こんなに美しいなんて…」


彼女はベルを抱き寄せ、しばらくその光景に見入った。


海から吹く風が二人を包み込み、心地よい冷たさがリズの頬を撫でた。ベルも月明かりに照らされた港の景色をじっと見つめている。

セリオスの静寂に満ちた夜は、どこか懐かしくもあり、同時に彼女に新たな旅の始まりを感じさせた。


「さあ、明日は隣の大陸に向かう船を探さなきゃね」


リズは静かに呟くと、再び宿へと足を向けた。

静かな夜の街を歩きながら、リズの胸には少しずつ明日の船旅への期待が膨らんでいた。


宿に戻ると、おばちゃんがちょうどカウンターで帳簿をつけていた。


「おかえり。夜のセリオスはどうだったい?」


おばちゃんが笑顔で尋ねる。


「すごく綺麗でした。こんなに静かで、月がこんなに美しいなんて…」


リズは、興奮を抑えきれずに答えた。


「そうだろう? ここは昔から、海と月が出会う場所って言われてるんだ。夜になると特別な静けさが広がる。きっとお前さんの心にも何かを与えてくれるだろうさ」


おばちゃんは、遠い目をしながらそう言った。

リズは微笑み、ベルと共に部屋へ戻る。

窓の外には、まだ月が高く輝いていた。部屋の中にほんのりと月明かりが差し込み、二人を静かに包み込んでいた。


「明日は大陸へ向かう船に乗るんだね、ベル」


リズは窓際に座りながら、ベルの頭を軽く撫でた。ベルはリズの膝の上に座り、静かにゴロゴロと喉を鳴らす。


「私たちの旅も、まだ始まったばかりだよ。もっと色んな場所を見て、もっと多くの人に出会って…」


リズは、小さな声で呟いた。

彼女の心には母との思い出がよぎる。

母もまた、同じように旅を続け、様々な場所を見てきたのだろうか。

その夜、リズは穏やかな眠りに落ちた。

窓の外では、静かな波音が続いていた。


翌朝、リズとベルは朝日と共に目を覚ました。

澄んだ空気が窓から入り込み、昨日の夜とはまた違った活気を感じさせる。

セリオスの港には、早朝から船乗りたちの声が響き、町は動き出していた。


「さあ、今日は大陸へ向かう船を探さなきゃ」


リズは、いつもより少し背筋を伸ばし、準備を始めた。


朝食をとり、荷物を整えて宿を後にする際、おばちゃんが再びリズに声をかけた。


「気をつけて行くんだよ。あんたのような若い娘さんがこんなに遠くから旅してるなんて、ほんと立派なことさ。強くなるんだよ」


その言葉に、リズの胸はじんと熱くなった。

母の存在が再び彼女の中で強くなり、背中を押してくれるような気がした。


「はい、頑張ります!」


リズは、力強く答え、笑顔で宿を後にした。


港にはすでに大きな船が何隻も停泊していた。

リズとベルは船着場を歩き回り、船乗りたちに声をかけながら、隣の大陸へ向かう船を探した。何隻かの船を見て回った後、ようやく目的地へ向かう船を見つけることができた。


「この船なら大陸まで行けますよ。少し長い旅になるかもしれませんが、安全は保障します」


船長の太い声が港に響く。大きな船は、真っ白な帆を広げ、風を受ける準備を整えていた。


「よかったね、ベル。この船に乗れば次の目的地に行けるみたい」


リズはベルの顔を覗き込み、ベルもリズを見つめ返して軽く鳴いた。


船に乗り込み甲板に立つと、広がる海の青さにリズの心は高揚した。

彼女の冒険はまだ始まったばかり。これからどんな新しい場所が待っているのだろうか。どんな試練が、どんな出会いが、彼女を成長させていくのか。

リズは波打つ海を見つめながら、決意を新たにした。


「行こう、ベル。母が旅した道を、私たちも歩んでいくんだ。」


静かな海の向こうに、リズとベルの新たな冒険が待っていた。

巡りの世界と見習い魔女の旅 第三章

静寂が満ちる港 セリオス

https://youtu.be/DeUoziVoH4o

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