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神になりたい神野球~アマテラス、スサノオに憧れて

作者: 高見しず

八百万の神様の、はじのはじのはじっこに入れてもらうため、多くの予選を勝ち上がった、チーム冷蔵庫とチーム家電が、天上ポイポイドームで野球対決! 超大物神様、アマテラスやスサノオも見に来た、天覧試合だ。超うすうすテレビが、マヨネーズが、延長コードたちが、野球で雌雄を決する! 八百万の神様のはじのはじのはじっこの神様になれるのは、いったいどちらのチームなのか⁉ 衝撃の結末が待っている!

「キャー! スサノオ様よー!」

「アマテラス様もいるわー! なんて神々しい……。」


ファンたちの声に、にこやかに手を振るスサノオとアマテラス。


「キャア―!」

「キャーキャー!」

「う、うーん。」



あまりの感動に、失神して女子がバタバタと倒れる。

ここは、天上ポイポイドームだ。


今日は年に一回の「神様になりたい神野球」が行われる。

しかも、今日は天覧試合で、アマテラスやスサノオが貴賓室に姿をあらわした。



「神様になりたい神野球」とは、トイレの神様やかまどの神様のように、小さいながらも「神様」と呼ばれ、あがめられる存在になりたいと思い願うモノたちのためにできた、野球大会である。



いろんなモノたちが、八百万の神々のはじのはじの、はじっこに加えてほしいと願っている。



9つのモノがチームを組み、勝った方が、八百万の神のはじのはじのはじっこに加えられるのだ。



気の遠くなるような数の予選を勝ち抜いて、今日、このグランドに立つのは、チーム冷蔵庫と、チーム家電である。



「オレはご飯にかけても、野菜につけても、『神!これまさに神!』って称賛する信者が、老若男女にいるんだぜ! オレらが神にならなくて誰がなる!」

 と言うのは、チーム冷蔵庫の四番、マヨネーズだ。

マヨラーという言葉までできた誇りを胸に、勝利を渇望する。



チーム家電の四番は、超うすうすテレビである。

「オレほど、人間に必要とされているモノがあるか? いやない。テレビを、DVDを、ゲームをするにも、オレが必要だ。夢中になりすぎて、中毒になってしまうものもいるほどだ。お、天上テレビの取材かい? みんな、オレに夢中になりすぎんなよ♡」



チーム家電の一番、延長コードが超うすうすテレビに注意する。

「おいおい、自分の自慢ばっかりじゃなくて、めざせ神! とか言えよ! 目標は、そこなんだからさ。」



「あーごめんごめん! 神に夢中! 神にまっしぐらな超うすうすで~す!」

チーム家電の四番はちょっと軽い。

しかし、超うすうすでありながら、バッターボックスに入るとパワーヒッター型のバッターだ。



整列し、挨拶が終わる。

さあ、試合開始だ! 先攻はチーム冷蔵庫。

「さあ、ちょっくらひねってやるか。」

チーム家電のオーブンレンジが、マウンドに上がる。



チーム冷蔵庫の一番は、ロックアイスだ。

バッターボックスに入る。初球を見事にヒットにした。

「イヤあ、軽い軽い。ところでさ、なんで電子レンジの君がピッチャーじゃないの?」



一塁を守る電子レンジが、ピーピーと音を立てて怒り出した。

「オレは! すべてにおいて万能なんだよ! でも、でも、てんぷらをさっくり揚げるのはあいつのほうがうまいって……。球のスピードも変わらないのに……。」



下を向いて、ぶちぶち言いだす電子レンジ。

それを見て、ロックアイスは走った! あっという間に二塁に盗塁だ!

「く、くそう!」



電子電レンジが言っても、もう遅い。チームの白い目が、痛い。

「ドンマイドンマイ! しまっていこうぜー!」

と自分で言う始末だ。



チーム冷蔵庫の二番は煉りわさび。2球で上手に送りバントをした。

三番の冷凍そばがカキーンと二塁打! 1点をまずゲットだ!

「冷凍だって、冷凍だって、神様になりたいんだ! そばは日本の伝統食だぞ!」



四番のマヨネーズがホームラーン! 

つぎつぎに打ちまくって、8点を先取してようやくスリーアウトとなった。

「なんだよ、チーム家電、余裕だなー(笑)」

マヨネーズが、余計な口をきく。



「なんだとー!!!!」

と、殴りかかろうとしたチーム家電のブルーレイレコーダーを、全自動掃除機が羽交い絞めにして止める。後ろ姿を見ている他のメンバーは、全自動掃除機がどのように羽交い絞めにしているのか? と一瞬思った。



「おいおい、なんだよ8点くらい。予選では、おれたち35点取ってコールドにしたこともあったろ?」

ブルーレイレコーダーも、冷静になった。



「そうだった。8点くらい、へみたいなもんさ!」

1回の裏。チーム家電の攻撃。

相手のピッチャーは、プリンだ。



プリンって、冷蔵庫チームでありなん? いや、ありなのだ。日本人なら、冷蔵庫に必ずプリンを入れておく。厚生労働省の調査によると、75%の国民が冷蔵庫にプリンを入れているという統計もある。

冷蔵庫の定番中の定番である。



「へ~、ピッチャーはプリンか~(笑)。」

チーム家電の一番、延長コードは鼻で笑う。

第一球、投げた! 

あーーーーっ、ピッチャー強襲! 

プリンの左側がぱーんとはじけ飛んだ。



「う、くうう。オレの弱点を……なぜ、」

とプリンがうめく。

「オレたち、神になるんだぜ? 相手の弱点なんかすぐにわかるさ!」



プリンは、第一球を投げただけで交代となった。

第二のピッチャーは、冷凍ピザだった。

「オレをぶち抜けるなら、ぶち抜いて見んさい!」



ドカーン! ドゴーン!

冷凍ピザをぶち抜きはしなかったが、チーム家電の二番、まわらない扇風機、三番の回る全自動掃除機、そして四番のオーブンレンジが満塁ホームラーン!

その後も、ドカンドカンと打ちまくり、15点でチェンジとなった。



「ちぇ。この倍の点数は取りたかったんだけどなあ。」

と、四番のオーブンレンジ。

「まあまあ、まだ一回じゃないか。これからだよ。ファイ!」

と声をかけたのは、電子レンジだった。



「いいよなー。八番は気楽に打ててさー。」

との言葉に、電子レンジはグッと気持ちを抑えた。



どっかんどっかんと、両チームとも打ちまくり、点を入れまくる。



スサノオ「ああ……。どっちもピッチャーが弱いチームだったんだな。打ち勝つしかない、いつかの西武みたいだな。」



アマテラス「そうだな……。冷凍ピザなんて、ストレートとカーブしか投げてないぞ。中学生か! よくここまで来られたなあ。」



両チームとも、どかどか打ちまくり、ホームランも29本出た。

ずいぶん、大味な試合だなーと観客も思っていたが、そこは応援している熱狂的なファンばかり。



「いけいけ! 練りわさび!」

「ゴーゴー!ドライヤー!」

と、応援合戦も熱が入っている。



 そして、九回。チーム冷蔵庫は82点、チーム家電も82点という、およそ野球の点数とは思えない状態になった。これじゃ、バスケの点数だ。

しかし、82点だろうが2点だろうが、相手より1点でも多く取った方の勝ち、というのが野球のルールだ。



九回の表は、チーム冷蔵庫の攻撃。

七番の中濃ソースが、打席に立った。カキーン。もちろんヒット、二塁打だ。

ピッチャーは37番目に出てきた、ルーターだったが、もうがっくり。



「おれ、もうWi-Fi飛ばす自信がなくなってきた……。」

キャッチャーの炊飯器が、慰める。

「いやいや、いい球きてるよ。かでーんファイ!」



しかし、そこからまた、チーム冷蔵庫が打ち出す。

岩海苔が打ち、ダブルスチールを成功させ、ケチャップがまたホームラーン! 

三点を先制した。



そしていよいよ、九回の裏。家電チームは、四点入れないと勝てない。

キャプテンの給湯器がはっぱをかける。

「いけるよいけるって! みんなで神様になろうぜ!」



パソコンが打ち、超うすうすテレビががつーんと三塁打。1点を返す。

その後、しぶくリモコンがセーフティバントを決め、白物家電の雄、古いタイプの洗濯機がドカーンとホームラーン!



1点差となった。

そして、LED電球が打とうとした、そのときである。

へろへろへろへろ~。体が、バッドが、へろへろしている!



チーム家電が、衝撃を受ける。あいつはそんなバッティングをするやつじゃあないのに!!


二球目が来た! へろへろへろへろ~。

三球目、へろへろへろへろへろへろ~。


なんてこった! まさかのへろへろ三振! ゲームセット!



チーム冷蔵庫がマウンドに出てきて、監督の冷凍刻みネギを胴上げしている。

冷凍刻みネギがどんどん解凍されて、胴上げのたびにネギが飛び散る。



「なんだったんだよ……。あのへろへろは……。」

超うすうすテレビがLED電球を責めようとした、その瞬間である!

ばーっと光り輝く二人が歩いてきた。



「こんにちは~! イザナギ、イザナミで~す!」




ええっ!!!!!!!!!

この世を作ったという、超VIPが、この試合をご覧になっていた?



超うすうすテレビもエアコンもドライヤーも延長コードも。その場で固まって直立不動になってしまった。



イザナギ「ごめんね~。だってさ、イザナミが『冷蔵庫チームが神になってほしいな~』って言うから。ちょっと、神業使っちゃった~。」



直立不動のチーム家電は、ああ、あれが本当の神業か、目の前で見られるなんて……と感動していた。



イザナミ「やっぱりー、冷蔵庫の中のものと、家電と、って考えたら、冷蔵庫の中のほうが神っぽいっていうかあ~。」


イザナギ「ほら、君たちって工場で作られたじゃん? それってやっぱり、神っぽくないかなって。」



はっと意識が戻った超うすうすテレビが言う。


「え、でも、でも、練りわさびだってマヨネーズだって、人間が作ったものじゃないですか!」


イザナミ「うーん。でもさあ。マヨネーズの神! ってなんかわかる気するじゃん。でも、やっぱ家電はねえ……、ドライヤーの神って、あがめたくなる? 延長コードの神って、拝みたい?」



グッとつまってしまった、ドライヤーと延長コード。

「でも、でも、超うすうすテレビは人間から好かれていると思うんです!」



と延長コードが言う。しかし……。

イザナギ「超うすうすテレビもさあ、どんどん新しいのが出るじゃん?

神様って……ほら、イメージが大事だし。」



自分たちは、そもそも神になれなかったのか……と全員が落ち込んだ。


イザナミ「いやいや、きみたちが神になれないってわけじゃないんだよ? あと100年くらいしたら、君たちくらいの型番は貴重になるから、神様になれるかもしれない。ただ……延長コードくんは難しいかもしれないけど。」



「そこまで、オレたちのパーツや部品が持つとは思わないけどな。」

という言葉をぐっとかみしめたチーム家電なのだった。



恐れ多い気持ちをふりきって、超うすうすテレビが声を振り絞って聞いた。

「じゃあ、じゃあなんで今日、ぼくたちと試合をさせたんですか?」

全員が思っていた疑問だ。



イザナミ「だって~、冷蔵庫の中のものと、家電が戦うなんて、超おもしろいじゃん! おかげで天上テレビの視聴率、95%。すごいっしょ~!」



絶句する、チーム家電のメンバー。

なあんだ。オレたちは高貴な神々の気まぐれな遊びに、ほんろうされていただけなのか。



神にはなれないオレたち。

「よーし、じゃあ今度は全国仏セレクト仏野球選手権に出るぞ! 動物がまつられることもあるんだから、家電だってありだろ!」


「おう!」


かまどの神様、トイレの神様などのように、オレたちも神様になりたい。実は、日本中のモノというモノが、渇望している。そんな「モノ」たちの熱き思いを、大好きな野球で表現したいと思いました。突拍子もないお話を書くのが好きです。

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