きっと僕は
「白いねー!」
彼女は吐く息を見て言った。突き刺さるような寒さを感じながらいつもの道を歩く。
「ねぇ!耳真っ赤だよ。音楽聞いてないでさ、耳当てすればいいのにー」
口を尖らせる彼女。
君のおすすめの曲を聞いてるんだけどなと聞こえないふりをする僕。
「風邪ひいても知らないんだからね。」
少し声のトーンが下がった気がしてわかったよ、とイヤホンを外しリュックから耳当てを取り出した。
「私さ君が耳当てつけてる姿好きなんだ。だから冬が1年で1番好き!」
僕は君がいつもそう言うから春も夏もずっとリュックに耳当て入れて待ってたんだよ。
「知ってるよ。ありがとう。」
そう言って彼女はまた僕の前から消えた。きっと次の冬も僕は耳を赤くして歩いているのだろうなと笑った。