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88 幼馴染兼彼女との初デート。

 正月パーティーで思い切り騒ぎまくった後、グレゴリー王子がコニーを連れて帰ったのを見届けて、俺と明希は家を出た。

 残してきたダニエラたちのことが心配ではある。だが今日だけはその心配はしないことにしよう。




 初詣をかねた初デートの場所は、近所の駅から電車に乗って一時間ほど揺られた先にあるかなり有名な神社だった。


 年の変わり目の時間ではないが、元日であることには変わりない。境内には人がひしめき合っていた。


「明希と一緒に神社に来るのは半年以上ぶりだな。確かゴールデンウィークの時以来か」


「そうだね。……あ、そうだ。誠哉には言ってなかったけどあそこ、縁結びの神社だったんだよ。今こうして誠哉と一緒にこられてるわけだし、私の願いを神様が聞いてくれたみたい。そのお礼もちゃんとしなくっちゃ」


「縁結びの神社!?」


 驚きに思わず声を上げながら、俺は大型連休恒例の家族旅行――もっとも明希もダニエラもいたわけだが――に行った時のことを思い出す。

 やけに明希が楽しげにしていたが、まさかそういう理由だったとは……。当時はまだ明希の気持ちを知らなかったせいもあり、気づかなかった。


「そうそう。じゃあ行くよ」


 初耳過ぎる情報に驚く俺とがっちり腕を組んで、明希は鳥居を潜り、神社へと足を踏み入れた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「確か初詣ってお守りを買ってから参拝するのが正しいんだったよね」


「……そういえばよく知らないけど、そうなんじゃないか?」


「よし決まり。まずはお守りを買いに行こう!」


 手水所に立ち寄った後、俺たちが真っ先に向かったのはお守り売り場。

 人でごった返す中、明希はお守りを物色していた。


「無病息災でしょ、金運上昇でしょ、夫婦円満でしょ……」


「金運上昇って、俺たちまだ学生だしいらないだろ。それに夫婦円満はまだ気が早いと思うが」


「来年のうちに結婚するかも知れないじゃん?」


「それはないそれはない」


 結局、買ったのは無病息災のお守りだけだった。

 もちろん俺と明希、二人お揃いで。


「なんかラブラブカップルって感じだね」


「バカップルともいうな」


 ……そんなことを言って誤魔化したが、明希とお揃いのものを持てたことが俺は最高に嬉しかった。


 お守り売り場から離れ、今度は賽銭箱へ。

 賽銭箱の前はお守り売り場以上に人だらけで、手を繋いでいなかったら人混みの中で逸れてしまっていたと思う。


 一時間ほど待ち続け、やっと俺たちの順番が回ってきた。


「明希は何をお願いするんだ?」


 俺が訊くと、明希は少しの躊躇いもなく言い切った。


「大好きな人と結婚できますように、だよ」


「……もう決まったようなもんだろ」


「念のためだよ念のため。誠哉は自覚ないみたいだけどすっごくモテるんだから、誰かに掻っ攫われかねないでしょ?」


 俺がモテるわけはないと思うのだが、事実ダニエラと銭田麗花、それに明希の三人もの女子から好意を寄せられていたわけで、否定できない。

 どうしてあんなに好かれまくっていたのか自分でも謎である。あれが噂のモテ期だったのだろうか。


「もし誰かからアプローチされても簡単に靡くわけないだろ」


「浮気しない?」


「しない」


「わかった、誠哉のこと信じてるからね。――ところで誠哉は?」


 以前は『これからできるだけ穏やかな毎日が過ごせるように』という願いだった。

 しかし今回は違う。


「明希が幸せな人生を送れますように……にしようと思う。ありきたり過ぎるけどな」


 明希を彼女にして、初めて彼女の幸せを考えるようになった。

 今まではただの幼馴染でしかなかったので――少なくとも俺はそう思い込んでいた――それぞれの人生を生きていくのだろうと考えていたが、付き合っている上婚約までしているとなると話は別だ。

 俺は明希に幸せになってほしい。笑っていてほしい。明希の笑っている顔は可愛いし、好きだ。


「ふへへ。ありがとう」


 いつまでもイチャついていたいところだったが、背後からの無数の鋭い視線をひしひしと感じたので、慌てて賽銭を入れお祈りをし、その場から離れた。


「リア充爆発しろっ」


 そんな声が聞こえて来たのは、きっと気のせいだろうと思いながら。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 明希との初デートは、想像以上に楽しかった。


 おみくじを引いて俺が吉、明希が大吉を引き当てたり。神社内の屋台を回り、遊びまくったり。

 内容は大したものではなくても、彼女と一緒だと思うだけで浮かれてしまう。


 明希も終始楽しそうで、神社から出ても満面の笑みだった。


「今日は最高だったね! おみくじも大吉だったし新年早々絶好調!」


「楽しかったな」


「おっ、珍しいね、誠哉がそんなこと言うなんて。でもデートはまだ終わってないよ?」


 明希が悪戯っぽく笑った。

 彼女の意図を読めずに首を傾げる俺だったが、すぐにわかった。

 ――彼女の顔が、俺に迫って来ている。何をして欲しがっているか、いくら鈍い俺でも察せる。


 俺は明希の顎と後頭部を両手で挟み込んで自分の方へ引き寄せ、口付けた。


 道のど真ん中でのキス。

 大勢がこちらに目を向けており、普段なら恥ずかしいと感じたはずだが、気持ちが昂って周囲が見えなくなっている俺たちにはどうでもいいことだった。

 俺と明希は心のまま、互いの唇を味わい続けた。

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[一言] リア充爆発しろっ( ˘ω˘ )
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