71 優柔不断な男は嫌われるかも知れないが浮気男はもっと嫌われると思う。
銭田麗花のところへ勝利報告をし、ダニエラが驚愕の――と言っても実はダニエラ陣営には随分前から明かされていたのだが――辞退を告げると、俺とダニエラは教室に戻った。
そこにはシスコン野郎とサキ、それから塁が待ち構えており、それぞれダニエラを出迎えていた。
「ダニエラ嬢、わかってはいたことだがさすがだね。それでこそ僕の伴侶に相応しい」
「お疲れ様です、ダニエラ様。すっごくかっこ良くて素敵でした!」
「当然の結果だな、ダニエラ。この結果は私の協力あってのものだ。そうだろう? だから今夜こそ私の愛に応えてくれないか?」
「セデカンテ令息、それは誤りです。彼女を支えたのは僕なんだ。臣下としておとなしく聞いてほしい」
「いけません、イワン様。ダニエラ様を困らせちゃ」
ダニエラを取り囲み、自分が自分がと主張し合うシスコン野郎と迷惑有能王子。
止めようとするサキの声に耳を貸さない彼らは平常運転というか、相変わらずうるさい。
だが、今回の件がうまくいったのは確実にこの二人のおかげでもあるだろう。だから今だけは好き放題させてやろうと俺は思った。
男二人に挟まれるダニエラは助けを求めるような目で見てきたが、無視しておく。
「それにしてもすごかったよね、ダニエラさん。まさかあそこまで圧勝するとは。……でも生徒会長にならなくて、本当に良かったのかな?」
中立だというのであえて事情を知らせていなかった明希は、今更なことを言った。
「ダニエラが生徒会長だなんて考えただけでもゾッとしないか? 俺はこの結末で良かったと思うぞ」
「セイヤ、聞こえておりますわよ。ワタクシを何だと思っていらっしゃるの?」
「……色々な意味でとんでもない美少女だと思ってるよ」
そんなこんなありつつ、生徒会選でのダニエラの勝利により、彼女の危機は無事に回避された。
そのことを祝し、その夜は盛大な祝賀パーティーが開かれることになった。
なぜか俺の家で。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――午後六時、佐川家にて。
俺の両親がいないのをいいことに、パーティーはどんちゃん騒ぎだった。
主役のダニエラは太らないかと心配になる勢いで夕食――俺が急遽、大人数分を作ったのだ――を食べているし、塁は何度も彼女に絡もうとしては冷たくされて消沈中、シスコン野郎とサキはどこからともなく高級酒を出して飲み比べを始めるし。
今回の戦いに全く関係のなかった明希、さらにはコニーまで我が物顔で参加し、喋りまくっていた。
そして騒がしさについていけず、ポツンと取り残された男が二人。
俺と、コニーの付き添いで来たグレゴリー王子である。
「……どうして私まで巻き込まれてるんだ」
「想い人がパーティーと聞くや否や乗り込んで来たからだろ。俺なんか勝手にダニエラに家をパーティー会場に指定されて準備させられた上、この仕打ちなんだからな」
「貴様みたいな庶民が目立たないのは当然だろう。だが私は王太子だぞ。もう少し注目されても良くないか? ……いくらここが異界とはいえ」
はぁぁ、とグレゴリー王子は大きなため息を漏らし、肩を落とした。
俺の方がため息を吐きたいというのに。
俺だってダニエラの協力者だったはずだ。
それなのにどうして、こんな隅に追いやられているのだろう。なんならパーティーでダニエラと二人、いい雰囲気になれないだろうか……なんてうっすら期待していた自分が馬鹿らしくなる。
そんな風に自己嫌悪に陥っていた時、先程まで自分のことを嘆いていたグレゴリー王子が追い打ちをかけてきた。
「貴様、もしやダニエラに惚れているのか」
「――は?」
「あんな女のどこがいいのか、私にはわからんな。確かに美しいがとんでもない女狐だ。コニーもたぶらかされた」
それからしばらく、ダニエラの悪女っぷり――例えば失敗をぐちぐちと言われたとか、不敬な発言を繰り返されたとか――を語られた。
が、どれも大した内容ではなかった。まあダニエラならやりかねないな、程度の話である。
「まあそれでも好きだというなら別に私は構わないが。女の好みは人それぞれだしな。
そうだ、私から一つ忠告してやろうか。躊躇わずにグイグイいかないと、相手は逃げていくぞ。優柔不断な男は嫌われるからな」
自慢げな顔で宣うグレゴリー王子には腹が立つものの、彼の言い分は何も間違っていない。
事実、彼はコニーとの恋を叶えているわけだから、恋愛ごとに関しては先輩なのだ。でも――。
「余計なお世話だ。それに、確かに優柔不断な男は嫌われるかも知れないが浮気男はもっと嫌われると思う」
「ぐぬっ……。私が浮気をしたと言うのか。コニーとは真実の愛で」
なんと言い訳しようと浮気は浮気だ。
そこから惚気が始まりそうな予感がしたので、俺は黙って席を立った。
「おい、待て」
「待たない。ダニエラの料理のおかわり持って行かなくちゃならないしな」
睨んでくるグレゴリー王子に構わず、その場を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
優柔不断な俺は、惚れた美少女に想いを告げることなく、最後までパーティーの輪に混ざることなく給仕係に徹することしかできなかった。
心底情けない。
生徒会選挙のことで恋敵は今まで以上に増えるに違いないのに、我ながら危機感がないなと思った。
面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。
ご意見ご感想、お待ちしております!




