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68 お嬢様VSお嬢様。【中編】

 九月末から十月中旬まで、約二週間の間に全校生徒が投票を行い、生徒会長を決めるのがこの学校の常である。


 銭田麗花はなんと一年生の頃から二年間も生徒会長を務めており、つまり二年連続選挙に勝ったわけだ。

 本当にすごいと思う。


 そんな彼女が後任候補として推薦した女子生徒の名は、海老原凛。

 言わずもがな、校内四大美少女の一人であり、料理部の副部長である彼女だ。


 実は彼女、生徒会の会員だったのだとか。俺もダニエラも全く知らなかった。

 彼女は生徒会の全員から信頼されていて、当然校内四大美少女だからして知名度が高いらしい。


 生徒会長選挙には、海老原凛以外にも三人ほど立候補している。

 一年生の男子に二年生の男子が二人。

 しかし誰も海老原凛には敵わないに違いないと目されていた。それほどに海老原凛が有力候補だったのだ。


 だから今までは彼女が次の生徒会長になるのはほぼ確定だったのだとか。

 ……しかしそこに現れたのが、ダニエラ・セデカンテというわけだった。


「ワタクシとて無策で応じたわけではございませんのよ。ほら、もう味方がこんなにも」


 ダニエラは得意げに微笑みながら、そんなことを言う。


 たった今まで完全に忘れていたが、そういえばこの学校にはダニエラのファンクラブが存在するのである。

 ファンクラブの活動としてはダニエラの姿を拝み、彼女の尊さを密かに広めるというものらしい。おかげでファンクラブの会員はこの学校の半数近くまで膨れ上がっていた。


「これはかなり拮抗するんじゃない!? 生徒会長選挙の行方は果たして――!?」


「明希、実況者にでもなるつもりか?」


「ごめんごめん、別にそんなつもりじゃないよ。ただちょっとテンション上がっちゃって。だってこれって実質清楚系お嬢様VS異世界お嬢様の対決なわけでしょ。燃えないわけがないッ!」


 空き教室の外からダニエラと銭田麗花の話を立ち聞きしてからというもの、明希は興奮状態である。

 一方の俺はというと……。


「俺は見てるだけにしたいけどダニエラの援護に回らなきゃいけないから憂鬱だな。楽しめる明希が羨ましいよ」


 それに、これからどんな顔をして料理部に顔を出せばいいのやら。

 ため息を吐かずにはいられなかった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「見ましたよ〜、セデカンテさんのポスター。急拵えとは思えないほど綺麗でちょっと嫉妬しちゃいました」


「当然ですわ。十年以上かけて美しさを磨いてきたワタクシですもの。最近は髪の手入れなどサキにやらせておりますし。

 しかしエビハラ様もなかなか麗しくいらっしゃいますわよ?」


「そうですね〜。自覚はあります。ふふふ」


 ――放課後。

 ダニエラが立候補を表明してから初めて料理部に来たが、心配していた海老原凛との会話は意外に穏やかだった。

 バチバチと火花を散らすようなことなく、お互いに友好的。まるでライバル同士ではないかのようだ。


 拍子抜けした俺は、無神経にも思わず訊いてしまった。


「ダニエラに対して警戒とかしないんですか?」


「警戒〜? どうしてわたしが警戒なんてする理由があるんですか?」


 海老原凛は本当に不思議そうに首を傾げた。


「あっ、もしかして、一年間かけて地盤固めをしてきたわたしがぽっと出のセデカンテさんに負けるとでも思ってます〜? それは身内贔屓ってものですよ、佐川くん」


 その一言で、わかってしまう。

 海老原凛がダニエラをライバルとしてすら見ていないことが。


 完全に舐められている。

 ダニエラは下に見られることを嫌う。これは間違いなく彼女は大激怒するだろう……そう思ったのだが、彼女は意外にも余裕の笑みで言った。


「油断なさっていますのね。もちろんその方がワタクシとは好都合ですけれど?」


「おお、言いますね。期待してますよ〜、あなたの泣き顔。多分泣き顔も美し過ぎて嫉妬しちゃうだろうなぁ」


 穏やかな笑顔で、思い切り煽り合う二人。


 ――そうか、すでに戦いは始まっているのか。

 この時初めて、俺はそんな風に思ったのだった。

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