表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/100

67 お嬢様VSお嬢様。【前編】

「なんか大変なことになってるみたいだね」


 ダニエラのマンションに駆け込んだその後、さらに明希にも同じ話をすると、彼女は難しい顔をした。


「生徒会長に目をつけられるとはね。銭田財閥といえば海外に名を馳せる大手企業でしょ。私のお父さんも一応会社の社長だけど、全然比べ物にならないし」


「だよなぁ……。どうする?」


「どうするって言っても。ダニエラさんを守るって決めたのは誠哉なわけなんだから何か手を考えなよって言いたいところだけど、確かにこれは難問だと思う。

 魔道具にも頼れないとなると、八方塞がり感が半端ないよね」


 はぁぁ、と深くため息を吐きつつ、一緒に考えてくるらしい明希。

 それからしばらく膝を突き合わせて話し合うことになる……かと思いきや。


「心配いりませんわ。ワタクシを誰と心得まして?」


 ダニエラがそう、強気に言って笑ったのだ。

 ……その笑顔は強がっているとかそういう類のものではなく、心からそう思っている風だった。


「ダニエラ、何か考えがあるのか?」


「――ええ。ですからセイヤとアキ様が心配する必要はございませんわ。ワタクシにお任せくださいませ」


 それからどんなに俺たちが訊いても、ダニエラはとうとう口を割らなかった。

 彼女は彼女なりの考えがあるのだろう。それ以上のことは、俺にはわからない。


 そして、「明日のために体力をつけなければ」と言って、勝手に帰って行ってしまった。


 俺はなんと言っていいかわからず黙り込み、明希は不安そうにしている。


 ダニエラがそこまで言うのなら、信じてみようかとも思う。

 さらに事態がとんでもない方向に行ってしまうような気がしてならなかったけれど。


「……まあ、悩んでも仕方ない、か」


「そうだな」


 すっきりしない気持ちのまま、俺は明希の家を辞した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――そして翌朝。

 マンションにダニエラを迎えに行ったが、彼女の姿はどこにもなかった。


「ダニエラ?」


「留守みたい、だね」


 もしかして誰かに協力を仰ぐために朝早くからどこかへ行っているのかも知れない。

 仮にそうだとしてもおそらく学校では会えるだろう、そう思って登校したのだが、なぜか教室にもダニエラの姿はなくて。


「……手分けして探すか」


「うん」


 いつもこの時間、彼女は教室で荷物を広げている。だからいないなんてことは異常事態なのだ。


 昨夜のうちに退学処分がなされ、彼女がどこかに連れ去られてしまったのではないか?

 そんな嫌な考えが何度も頭を過り、いよいよ授業開始時間が迫った頃、明希が走ってきた。


「いた、ダニエラさん、空き教室に!」


「落ち着け明希。思いっきり倒置法になってるぞ」


「そんなのはいいの、今は! 誠哉お願いだから来て、とにかくやばいの。生徒会長と一緒にいるんだよ、ダニエラさん!」


「……生徒会長と?」


 銭田麗花とダニエラが相対している。

 そう聞いた瞬間、俺は明希と一緒になって走り出していた。




「……力での決闘が望ましくないとおっしゃるなら、あなたは何をお求めになるのかしら? まさか財力、だなんて品のないことをおっしゃるわけではございませんわよね?」


「当然です。私が望むものはこの学校の平穏、そしてあなたの排除。ですから、公平な勝負をいたしましょう」


 空き教室の中からそんな話し声がしていた。

 言わずもがな、話しているのは例の二人である。彼女らは落ち着いているようで、少なくとも喧嘩にはなっていないらしい。


 ……話の内容はともかくとして。


「失礼します」


 俺は少々躊躇ったが、すぐに突入することを選んだ。


 俺が入ると、銭田麗花が意外そうに、そしてダニエラは「来なくてもよろしかったのに」と呆れた様子で俺を見た。

 彼女らは空き教室に置かれたパイプ椅子にそれぞれ優雅に腰を下ろしている。両者とも、お嬢様らしい凛とした佇まいだ。


「……ダニエラ、もうすぐ授業が始まるだろ。心配したんだからな」


「見ての通り取り込み中ですのよ。静かにしてくださいませ。

 話を戻しましょう。セイトカイチョウ様……ええと、ゼンダ様でしたわね。あなたのおっしゃる公平な勝負とは?」


「九月の後半、生徒会長を決める選挙があるのをご存知でしょうか」


「不勉強で、存じ上げませんでしたわ」


 俺はこの時点で、ダニエラを止めようと思った。

 次に銭田麗花が言うであろうことがわかったからだ。でもダニエラは俺を制し、無言で話の先を促した。


「あら、そうなのですね。(わたくし)は現在三年生なので、この十月で生徒会長を引退することになっているのです。そこで後任にとある女子生徒を推薦することに決めました。(わたくし)の後任に相応しい、将来有望な少女です。

 あなたにはぜひ、その女子生徒と戦っていただきたい。そして当選を自らの手で掴み取ること――それがあなたの勝利条件です」


 絶対無理ゲーだろう、と俺は思った。

 だって、銭田麗花はこの学校で絶大なる人気を誇っているのだ。いくらダニエラとて、銭田麗花の息がかかった女子生徒に勝てるとは思えない。


 しかし――。


「その程度のことでよろしいんですの? それなら、その挑戦、受けて差し上げますわ。

 ワタクシを舐めないでくださいませ。ワタクシ、これでもかつては社交界で名を馳せていましたのよ?」


 ダニエラは華やかに笑った。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


作者の作品一覧(ポイント順)



作者の連載中作品
『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜

両刃の斧のドワーフ少女はダークエルフの姫君に愛でられる

乙女ゲームのヒロイン転生した私、推しのキラキラ王子様と恋愛したいのに相性が悪すぎる



作者の婚約破棄系異世界恋愛小説
【連載版】公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます


あなたをずっと、愛していたのに ~氷の公爵令嬢は、王子の言葉では溶かされない~

【連載版】婚約破棄なんてしたくなかった。〜王女は婚約者を守るため、婚約破棄を決断する。〜

この度、婚約破棄された悪役令息の妻になりました

婚約破棄なさりたいようですが、貴方の『真実の愛』のお相手はいらっしゃいませんわ、殿下

悪役令嬢は、王子に婚約破棄する。〜証拠はたくさんありますのよ? これを冤罪とでもおっしゃるのかしら?〜

婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?

婚約破棄されたので復讐するつもりでしたが、運命の人と出会ったのでどうでも良くなってしまいました。これからは愛する彼と自由に生きます!

公爵令嬢と聖女の王子争いを横目に見ていたクズ令嬢ですが、王子殿下がなぜか私を婚約者にご指名になりました。 〜実は殿下のことはあまり好きではないのです。一体どうしたらいいのでしょうか?〜

公爵令嬢セルロッティ・タレンティドは屈しない 〜婚約者が浮気!? 許しませんわ!〜

隣国の皇太子と結婚したい公爵令嬢、無実の罪で断罪されて婚約破棄されたい 〜王子様、あなたからの溺愛はお断りですのよ!〜

婚約破棄追放の悪役令嬢、勇者に拾われ魔法使いに!? ざまぁ、腹黒王子は許さない!

婚約者から裏切られた子爵令嬢は、騎士様から告白される

「お前は悪魔だ」と言われて婚約破棄された令嬢は、本物の悪魔に攫われ嫁になる ~悪魔も存外悪くないようです~

私の婚約者はメンヘラ王子様。そんな彼を私は溺愛しています。たとえ婚約破棄されそうになっても私たちの愛は揺らぎません。
― 新着の感想 ―
[一言] 盛 り 上 が っ て ま い り ま し た( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ