66 奪わせませんわ。
「ダニエラ、聞いてくれ」
――夜。
サキがわざわざ届けに来た夕食を一人でいただいていると、鬼気迫る様子でセイヤが転がり込んできました。
また何か事件でも起こったのでしょうか。
お兄様……セデカンテ侯爵令息がやらかしたのか、ルイス殿下がろくでもないことを始めたのか。
そんな風に考えるワタクシにセイヤが話し始めたのは、予想外のことでしたの。
「そのセイトカイチョウとやらが、ワタクシを陥れようとしているとおっしゃいますのね?」
「そうだ。それで俺をわざわざ連れ込んで、情報を吐かせようとしてたらしい。逃げ出してきたけど」
「ありがとうございます。しかし、困りましたわね」
セイトカイチョウといえば一度、セデカンテ侯爵令息が起こした事件の際、話をした覚えがございますわ。
しかし彼女のことをワタクシはよく存じませんし、気にも止めませんでした。
「どうして彼女、ワタクシに敵意がございますのかしら。一度しかお会いしたことがございませんのに」
「ダニエラは存在感強いからな……。それとやっぱりお嬢様同士ってことだろ」
「あら。その方も令嬢でしたの?」
セイヤの話によれば彼女はこの国の有力者の令嬢とのことですから、ワタクシのことを一方的に敵にみなしていたということのようですわ。
……なんと迷惑で自分勝手な方なのかしら。
しかも、アキ様と一緒ではなくセイヤを一人きりで連れ込んだことから考えて、色仕掛けを実行する気だったのでしょう。
鈍感過ぎるセイヤがその程度で惑わされるとは考えられませんけれど、もし何かの間違いで色仕掛けが成功していたとすれば、ワタクシはその女を手にかけていたところですわ。
ああ、なんて腹立たしい。
グレゴリー殿下ならどうでも良かった。しかしセイヤは話が別です。
セイヤはアキ様と争うと決めましたのに、余所者に邪魔されることなど許容できかねましたわ。
セイトカイチョウを……名前を忘れてしまいましたけれど、その方をワタクシ、許しはいたしません。
「――奪わせませんわ」
ここでの日々も、初めて好意を寄せた殿方であるセイヤのことも。
一度ならず二度までもこのダニエラ・セデカンテが貶められるわけにはまいりません。
コニー嬢の時できっちり学習しましたのよ。政敵は、放置しておかずに真っ向から殴り倒すのがいいのだと。
ですから――。
「覚悟してくださいませね、セイトカイチョウ様」
必ずや、ワタクシに争いを仕掛けたことを後悔させて差し上げますから。
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