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64 生徒会長に強引にお呼ばれされる俺。

 二学期は、順調に進んで行った。

 勉学という学生の勤めはもちろんのこと、部活も張り合いがある。

 一つ問題があるとすれば恋の悩みだが、これはなかなか解決策が見つからないままだった。


 しかしきっとまたすぐに何かが起こる、と俺の――いいや、全員の本能が告げていた。

 そしてそれは大抵的中するものだ。


 九月も後半に差し掛かろうという頃のこと。

 部活を終えてダニエラを送って行った後、帰宅しようとしていた俺の背中に声がかかった。


「――ごきげんよう」


 鈴の音のような美しい声だった。

 俺は思わず振り返り、その声の主の姿を見やる。聞き覚えがある声だったから、それが誰のものかはわかっていたが、見ずにはいられなかったのだ。


「生徒会長」


 なんと呼んでいいのか躊躇い、とりあえずそう呼んでみる。

 俺を呼び止めたその人物は、生徒会長で超絶美少女なお嬢様の銭田麗花であった。


 銭田麗花に声をかけられたというのは、少なくとも異常事態だ。

 彼女は普段専用の高級車で帰るという噂を俺は聞いていた。つまり今彼女がここにいる理由は、間違いなく俺目当てだ。


 俺が何かしてしまっただろうかと考えてみるが、思い当たる節はない。

 シスコン野郎の魔道具事件以来、何かの問題に絡んだことは皆無なのだ。かと言って褒められるようなこともないことは自信を持って言えた。


「佐川誠哉さん、でしたね。少しお話ししたいことがあります。もしよろしければ、(わたくし)の自宅へいらっしゃいませんか?」


 上品な微笑みを浮かべながら、銭田麗花は俺に手を差し伸べる。

 手を取れ、という意味らしい。


 女の子が男を家に連れ込んですること、それは何か?


 そう考えて、いやらしい妄想をしてしまいそうになるのをグッと堪えた俺は、首を振った。

 例え健全な理由であれそうでないものであれ、大金持ちの娘の家に呼ばれるというこの状況は、あまりよろしくない。


「あの、俺、用事あるんで」


「あなたにしかできない、大事な話なのです。大してお時間は取らせません。ですから……」


 よろしければ、などと言いながら、実際は俺を逃がさないつもりのようだ。

 誰かに助けを求めたいところだが、今は明希もダニエラもいない。俺は唇を噛んだ。


「話なら、俺の家でもいいですか? 親が共働きで、家にいないんで」


「申し訳ございませんが、万全なセキュリティのところでしかお話しできないことなので」


「どうしても俺を連れ込みたいのか、この美少女は……」


「何かおっしゃいましたか? ――ともかく、タクシーはもう手配してあります。どうぞお乗りくださいませ」


 それからは本当にあっという間だった。

 目の前に高級車が現れたかと思えば、俺は銭田麗花に強引にタクシーの中へ連れ込まれ、即座に車が発進。

 あれよあれよという間に銭田邸へ着いてしまった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 銭田邸は豪華だった。

 金やぎんといったわかりやすいキラキラした感じはなく全くその逆で、昔ながらの和風の屋敷だったし、前庭には赤く色づき始めようとしている紅葉が広がり、よく映えている。

 山奥にあるため背景は一面の緑で、それがまた風情があった。


 歴史ある城と言われても全く違和感がないほどだ。


「ここが家って、どんだけ大金持ちだよ……」


 俺が思わず呟いたと同時にタクシーのドアが開けられ、俺はやっと降りることを許された。

 行き道はかなり険しい山道だったので、一人で帰るのはあまり現実的ではない。まず銭田麗花の要件を伺い、話とやらを聞いてから穏便に帰る方法を探したほうが良さそうだ。


「ようこそ、我が屋敷へ。(わたくし)がご案内いたしますね」


「……あ、はい」


 銭田麗花が俺の手を取り、静かに歩き出す。

 彼女の手の感触は滑らかで、柔らかい。ダニエラのものとよく似ており、さすがお嬢様という感じだった。


 屋敷は広く、まるで迷路のように廊下が入り組んでいたが、銭田麗花は自宅とだけあって迷わず進んで行った。

 その道中、使用人をざっと百人ほどは見かけた気がする。屋敷といい使用人といいどれだけ金持ちアピール――もちろん当人たちはそのつもりがないのかも知れないが――をすれば気が済むのだろう、銭田家は……。


「佐川さん、こちらが(わたくし)の部屋です。監視カメラで二十四時間体制で見張らせておりますので、不埒な考えはお持ちにならないようお願いします」


「げぇぇっ。わかりました、気をつけます……」


 実は今もどこかから護衛的な人が俺を監視し続けているのではなかろうか。そう思うとゾッとした。


 そんなこんなありつつ、銭田麗花の部屋へ招かれた俺。

 使用人が淹れた紅茶の香りが漂う中、彼女と机を挟み、真正面から対峙した。


「俺も暇じゃないので、単刀直入に聞きます。話って何ですか」


「……そうですね。ではお話しさせていただきましょう。

 ここで話されることは外部では決して漏らさぬよう。その約束だけ守っていただけますか」


 銭田麗花の問いに、俺は頷く。

 内緒話にするような内容とは、一体何なのだろう。俺は果たしてここから無事に帰れるのだろうかという一抹の不安を抱えつつ、無言で先を促す。


「要件は単純明快。あなたがよく連れ添っていらっしゃる、ダニエラ・セデカンテさんについてです」


 ダニエラについて、と言われて驚いた。

 だってここに彼女はいないのだ。まさかダニエラ絡みの話をされるとは思ってもみなかったのである。


「ダニエラが、どうしたんですか。何かやらかしたりしたんですか」


 ――嫌な予感がする。


 ダニエラについて生徒会長に咎められる可能性があることはたくさん浮かんだ。染め髪にしか見えない青髪だとか、彼女が来てからというもの生徒会長より目立っているための嫉妬だとか。

 でも、それならまだいいのだ。本当の意味で最悪な事態とは――。


「彼女の――あの自称お嬢様の出自をあなたは知っておいででしょう、佐川誠哉さん」


 ダニエラの正体が、バレることだった。


 終わった、と俺は思った。

 銭田麗花の微笑みは美しく、しかし決して優しくはない。彼女は本気だ。


 こんな事態にならないでほしいと思っていた。でも、そんな甘い話があるわけはなく、一度しか話したことのないこの生徒会長に暴かれたということらしい。

 とうとう来てしまったのだ、悪役令嬢ダニエラ・セデカンテの危機が。

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