表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/100

43 勘弁してくれ。

 そして十分ほど後。

 俺に連れて来られた私服姿のダニエラは佐川家の前に仁王立ちになり、ひどく不満げに言った。


「何ですの、これは」


「こっちが聞きたい。多分、ダニエラの知り合いなんだろ?」


「メロンディック王国の王太子でありワタクシの元婚約者、グレゴリー殿下とその愛人の女ですわ」


「あー……」


 その話はダニエラから聞いたことがあった。

 ダニエラをこの世界に追放した張本人である、顔だけはいい馬鹿王子。それがこの倒れている金髪の少年だというのだろう。


「それでどうする? できればこれ以上の厄介事は御免だからお引き取り願いたいんだが」


「ワタクシも同感ですけれど、おそらく不可能だと思いますわ。可能であればとっくにお兄様がワタクシを連れ帰っているはずですもの」


 ダニエラの言葉に俺は頷くしかない。

 シスコン野郎にできないなら、なぜだか知らないが新たに異世界からやって来たこの二人組をどうにかする他なさそうだ。


 なんでこのタイミングなんだとか、ダニエラにしろシスコン野郎たちにしろどうして毎度俺の家にばかりやって来るんだとか色々と言いたいことはあったが、言っても無駄なのだろう。

 俺はゲンナリして俯いた。


 と、その時、俯いた俺の視界の隅、むっくりと起き上がる人影が。

 それは金髪の少年、他ならぬ馬鹿王子だった。


「コニ――」


 起き上がるなり周囲に視線を巡らせ、ピンク髪の少女の元へ行こうとした馬鹿王子は、しかしダニエラを見て固まった。


 ……ああ、もう少し長い時間眠っていてくれさえすれば、適当にどこか別の場所にでも捨ててきて無関係でいることもできたかも知れないのに。

 そんな風に思った俺だが、もう遅い。ダニエラと馬鹿王子ことグレゴリーの視線がばっちり交わり合っていた。


「ご機嫌麗しゅう、殿下。お久しぶりですわね。まさかこのような場所でお会いすることになるとは思いもいたしませんでしたわ」


「お、お前はどうしてここにいる!」


「それはむしろ、こちらがお訊きしたいところなのですけれど」


 微笑みながら、しかし目は全く笑っていないダニエラ。

 彼女は馬鹿王子たちのことも相当嫌っているらしかった。


 まあ当然か。冤罪で故郷を追放されたなんてことになれば……誰だって少なからず恨むものだろう。


「私はだな、お前が自らの罪を隠蔽し、私に責をなすりつけた証拠を探しにお前の屋敷に行ったんだ。そうしたらお前の兄の魔道具にコニーが引き摺り込まれ、こんなところに。どうしてくれるのだ!」


「さて? 申し訳ございませんが、ワタクシ、兄とはすでに絶縁しておりますの。あちらはまだそのつもりではないようですけれど……。ともかく、ワタクシに何をおっしゃられても困ってしまいますわ、殿下」


 金髪の少年はぎりりと歯噛みする。

 そして今度は俺に噛みついてきた。


「そこの男、お前は一体何者なのだ」


「ああ、俺? 俺は佐川誠哉だけど」


「お前、この女をなんとかしろ。ダニエラは罪人だぞ」


「知るか。じゃあ異世界からやって来たあんたらも罪人ってことになるだろうが。迷惑だから早く俺の家の前から退いてほしいんだが?」


「この屋敷はお前のものなのか!? どういうことだ、お前はこの世界の貴族か!」


「庶民だよ庶民。いいから早く退いてくれってば……」


 この様子では埒が明かない。

 そう思った俺は、馬鹿王子にピンク髪美少女を起こすように言った。まだそちらの方が話が通じるかも知れないし。


「コニー、起きろ。大変なことになっているぞ」


「ふわぁ、どうしたんですかグレゴリー様ぁ……」


 ゆっくりと瞼を開け、眠たげな声を出しながらピンク髪美少女が伸びをする。

 その時にぽよん、とドッジボールのような胸が揺れ、薄いピンクのドレスの裾から白い脚が見えた。


 馬鹿王子がこの女のどこに惹かれたのか、わかった気がする。


「あれぇ、ここは……?」


「ダニエラを送ったのと同じ異界らしい。困ったことにな」


「ダニエラ様……? うわ、ほんとですぅ。ダニエラ様がいますぅ」


「あの悪女からは私が守るから安心してくれ。だがすまない、コニーを妃にするのは難しくなったかも知れない」


「えぇっ、どうしてですか? もしかしてグレゴリー様、わたしのことを嫌いになって……?」


「そんなわけないだろうが。私が愛するのはコニー、お前だけだ」


「ふへへ。嬉しいですぅ、グレゴリー様ぁ」


 人前でベタベタとリア充アピールをするグレゴリー王子とピンク髪爆乳美少女コニー。

 つまらない芝居を見させられているような気になってきて、俺は思わず顔を背けた。


 依然として勝手に俺の前に居座っているままだし、下手なイチャラブシーンを見せつけてくるし。

 異世界人はどうしてこんな非常識な奴ばかりなのだろう。


「本当に勘弁してくれ」

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


作者の作品一覧(ポイント順)



作者の連載中作品
『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜

両刃の斧のドワーフ少女はダークエルフの姫君に愛でられる

乙女ゲームのヒロイン転生した私、推しのキラキラ王子様と恋愛したいのに相性が悪すぎる



作者の婚約破棄系異世界恋愛小説
【連載版】公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます


あなたをずっと、愛していたのに ~氷の公爵令嬢は、王子の言葉では溶かされない~

【連載版】婚約破棄なんてしたくなかった。〜王女は婚約者を守るため、婚約破棄を決断する。〜

この度、婚約破棄された悪役令息の妻になりました

婚約破棄なさりたいようですが、貴方の『真実の愛』のお相手はいらっしゃいませんわ、殿下

悪役令嬢は、王子に婚約破棄する。〜証拠はたくさんありますのよ? これを冤罪とでもおっしゃるのかしら?〜

婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?

婚約破棄されたので復讐するつもりでしたが、運命の人と出会ったのでどうでも良くなってしまいました。これからは愛する彼と自由に生きます!

公爵令嬢と聖女の王子争いを横目に見ていたクズ令嬢ですが、王子殿下がなぜか私を婚約者にご指名になりました。 〜実は殿下のことはあまり好きではないのです。一体どうしたらいいのでしょうか?〜

公爵令嬢セルロッティ・タレンティドは屈しない 〜婚約者が浮気!? 許しませんわ!〜

隣国の皇太子と結婚したい公爵令嬢、無実の罪で断罪されて婚約破棄されたい 〜王子様、あなたからの溺愛はお断りですのよ!〜

婚約破棄追放の悪役令嬢、勇者に拾われ魔法使いに!? ざまぁ、腹黒王子は許さない!

婚約者から裏切られた子爵令嬢は、騎士様から告白される

「お前は悪魔だ」と言われて婚約破棄された令嬢は、本物の悪魔に攫われ嫁になる ~悪魔も存外悪くないようです~

私の婚約者はメンヘラ王子様。そんな彼を私は溺愛しています。たとえ婚約破棄されそうになっても私たちの愛は揺らぎません。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ