表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/100

40 一方その頃異世界では。

 ――日本へ渡ったイワン・セデカンテが日比野明希と手を組み、そして佐川誠哉がダニエラ・セデカンテへの想いを自覚したのより二ヶ月ほど時は巻き戻る。

 ダニエラ・セデカンテがこの世界を追放された数日後の真昼時、異世界にある王国メロンディックの王城の一室にて国王と王太子が対面していた。


 いいや、対面というのは正しくないかも知れない。なぜなら国王が王太子の背中を思い切り踏みつけていたからである。






◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「なぜです、父上ッ! 私はただ、コニーを不当に虐げるあの悪女、ダニエラ・セデカンテに正しき裁きを与えたまでのこと!」


 ああ、最悪だ、と私は思っていた。

 私はメロンディック王国で国王に次いで高貴なる身。つまり王太子である。

 それがこうして床に這いつくばらせられているなど、屈辱以外の何者でもなかった。


 本当なら不敬罪で処してやりたいところだが、それができないのは私を組み伏せているのが他ならない国王、つまり父だからだ。


「痴れ者が! ダニエラ・セデカンテには王妃教育をほぼ受けさせていたのだぞ。それを平民上がりの男爵令嬢を正妃にしたいだと!? 冗談も休み休み言え。

 お前を一時的にとはいえ国に一人で残したのがいけなかった。リリアンが死んでからというものお前は馬鹿をやらかしてばかりだ」


 リリアンというのは五年ほど前に亡くなった母上のことだ。

 だが、どうして今母上の名を持ち出されなければならないのか、私には理解できなかった。




 私は先日、ダニエラ・セデカンテに婚約破棄を告げた。

 十年間婚約者として振る舞ってやり、彼女の可愛げのない冷たい態度に耐えてきたがとあることをきっかけに我慢ならなくなったのだ。

 それは、私が心より愛するコニーを傷つけたことだった。


 ダニエラを正妃に据え、コニーを妾として愛でようと思っていたが、そうなれば話は別だ。

 ダニエラ・セデカンテを異界に送ると、コニーは心から喜んでくれた。そこで私はプロポーズをし、正真正銘彼女と心が一つになった。


 ……残念ながら王族としてのしがらみ上、まだ体は一つになれていないが。


 しかし喜びも束の間で、外遊に行っていた父が慌てて帰って来て、かと思えば私を無理矢理呼び出しこうして踏みつけにしたというわけだった。


 正直、わけがわからない。


「ダニエラ嬢はこの国の宝と言ってもいい才媛だったのだぞ。それにセデカンテ家の長男、次期侯爵イワン・セデカンテが彼女を溺愛しているのは周知の事実ではないか。彼女を異界送りだと? セデカンテ侯爵令息に魔道具でこの城ごと消されてしまうではないかッ!」


「で……でも、悪いのはダニエラで」


「言い訳など聞かぬ! お前はしばし自室での謹慎処分とする。コニーとやらとは二度と会うな!」


 父は私を強く蹴り飛ばし、吠えた。

 部屋の隅までゴロンと転がされた私は屈辱で顔を赤くしながら父を見上げる。だが、すぐに鬼の形相で睨みつけられたので大急ぎで部屋を出て行った。


 なぜだ。なぜだなぜだなぜだ?

 私の行動は全て正当なものだったはずだ。ダニエラはコニーを虐げ、果ては暗殺しようとした悪女だ。異界追放処分にするべきなのではないのか。なぜ私が罰せられなければならない。なぜ――。


 私は部屋を出るなり護衛騎士に捕まり、自室へと連行された。

 鍵をかけられ、自室に閉じ込められる。「コニーを呼べ!」と大声で叫んだが、近衛騎士たちが私の言葉を聞き入れることはなかった。




 それから一ヶ月半ほど私は謹慎させられていた。

 外から入ってくる情報は少ない。たまに私の弟の第二王子ルイスがやって来て、愚痴混じりで私に一方的に聞かせることがあるくらいなものだった。


「ああ、畜生。魔道具の使い方がわからないんだ。今すぐにでも彼女のところへ行きたいのに。馬鹿な兄さんに言ってもしようがないけどね。

 本当に兄さんは馬鹿だよ。兄さんはただ、婚約破棄をするだけで良かったんだ。なのにどうして追放なんてした。父の外遊について行かなければ良かった。本当なら僕が、僕が……」


 ルイスがぶつぶつ呟く内容の中からかろうじて知れたのは、イワン・セデカンテが妹を追って自ら古代の魔道具を再現して作り異界へ渡っていったということくらいなもの。

 そんなことは私にとってはどうでもいいことだった。ダニエラのことも、もはや興味がない。


 ただコニーに会いたかった。

 謹慎させられてからというもの、彼女の声すら聞けていなくて、もう限界だった。


 ある日、私はルイスが私に愚痴を漏らしにくるため扉を開ける隙を狙い、彼を突き飛ばして扉の外に出た。

 ルイスが護衛騎士を傍に置いていなかったのが幸いだった。途中でメイドに見つかったりしたが、買収してコニーの男爵家へと連れて行かせた。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


作者の作品一覧(ポイント順)



作者の連載中作品
『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜

両刃の斧のドワーフ少女はダークエルフの姫君に愛でられる

乙女ゲームのヒロイン転生した私、推しのキラキラ王子様と恋愛したいのに相性が悪すぎる



作者の婚約破棄系異世界恋愛小説
【連載版】公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます


あなたをずっと、愛していたのに ~氷の公爵令嬢は、王子の言葉では溶かされない~

【連載版】婚約破棄なんてしたくなかった。〜王女は婚約者を守るため、婚約破棄を決断する。〜

この度、婚約破棄された悪役令息の妻になりました

婚約破棄なさりたいようですが、貴方の『真実の愛』のお相手はいらっしゃいませんわ、殿下

悪役令嬢は、王子に婚約破棄する。〜証拠はたくさんありますのよ? これを冤罪とでもおっしゃるのかしら?〜

婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?

婚約破棄されたので復讐するつもりでしたが、運命の人と出会ったのでどうでも良くなってしまいました。これからは愛する彼と自由に生きます!

公爵令嬢と聖女の王子争いを横目に見ていたクズ令嬢ですが、王子殿下がなぜか私を婚約者にご指名になりました。 〜実は殿下のことはあまり好きではないのです。一体どうしたらいいのでしょうか?〜

公爵令嬢セルロッティ・タレンティドは屈しない 〜婚約者が浮気!? 許しませんわ!〜

隣国の皇太子と結婚したい公爵令嬢、無実の罪で断罪されて婚約破棄されたい 〜王子様、あなたからの溺愛はお断りですのよ!〜

婚約破棄追放の悪役令嬢、勇者に拾われ魔法使いに!? ざまぁ、腹黒王子は許さない!

婚約者から裏切られた子爵令嬢は、騎士様から告白される

「お前は悪魔だ」と言われて婚約破棄された令嬢は、本物の悪魔に攫われ嫁になる ~悪魔も存外悪くないようです~

私の婚約者はメンヘラ王子様。そんな彼を私は溺愛しています。たとえ婚約破棄されそうになっても私たちの愛は揺らぎません。
― 新着の感想 ―
[一言] 愚かな( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ