37 悪くありません。
あの自称お嬢様――ダニエラ・セデカンテと親しくしている男子生徒、佐川誠哉に初めて接触してみました。
話してみたところ、遠くから見た際の印象は間違っていなかったらしく、平凡を絵に描いたような男ではありました。
影が薄いというか、とらえどころがないというか。人混みの中に紛れていれば決して見つけられないでしょう。
でも、本当に平凡だけの男かといえばそれは断じて否でした。
なぜなら銭田財閥の娘である私を前にしても、媚びる様子を一切見せなかったからです。
かと言って不良のように威張り散らすわけではなく、ただ、他の娘たちと接する時と変わらぬ態度でいました。
ただそれだけのこと。
しかし私には、それが非常に価値のあるもののように思えたのです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
伊湾などという怪しげな転校生が問題を起こしたのは、六月初頭から中旬にかけての頃。
ダニエラ・セデカンテの断罪の計画を、生徒会の中でも信頼できるメンバー数人と共に粛々と進めている中でのことでした。
この時期には、五月の中間テストが終わったからと気を抜いて馬鹿をやらかす生徒が多いので、最初はその類かと思っていました。しかしこの件に関しては違うとすぐに気づきました。
科学的にはまるで説明のつかない、玩具のようでありながらただの玩具ではない小物。
これは絶対何か裏がある――おそらくはダニエラ・セデカンテとの関連でしょう。
周囲の生徒に聞き込みを行ったところ、新たな転校生二人と彼女が顔見知りだと判明しました。なんらかの協力者に違いありません。伊湾と咲という生徒は、一見ありふれた高校生にしか見えませんがスパイ仲間なのかも知れません。
ダニエラ・セデカンテとまとめて追い出す必要がありそうです。
ですがとりあえずはダニエラ・セデカンテ、そして佐川誠哉に接触する大義名分ができたので、転校生の処分は停学一週間で済ませてやりました。本当はもっと重い処分になってもおかしくないことだというのに。
私の寛大さに感謝してほしいものです。
今回の騒動の関連の質問に見せかけ、佐川誠哉から様々な情報を聞き出すことができました。
彼の生活環境、境遇、そして自称お嬢様であるダニエラ・セデカンテとの関係性も。
彼はあくまでダニエラの友人に過ぎないと言っていましたが、それ以上には親しげです。
たとえ恋人同士だったとしても構いません。私は一度手にすると決めたものはどんな手段を用いてでも己のものにする主義なのです。
今まで出会ったどんな男よりも平凡で、それなのに特別に私の興味を惹いたあの男、佐川誠哉。
――悪くありません。
これから積極的に佐川誠哉とコンタクトを取り、機を見て行動を起こそうと私は決めたのでした。
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