34 シスコンお兄様とメイド、アニメ部入部。
一悶着あった昼休みの後、その日の授業は比較的いつも通りに進んで行った。
シスコン野郎もメイドも大して成績が良いというわけではないらしく――もちろんわざと平均的に見せている可能性もあるが――そこまで特筆して目立つ存在ではなかったのだ。
ただし、放課後になれば話は別。
俺とダニエラが料理部に向かうための準備をしていると、ダニエラの後ろの席と斜め後ろの席にワッと女子たちが群がった。
言わずもがな、転校生二人が目当てである。
「たった一ヶ月で三人の転校生とか珍しいねー」
「ねぇ咲さん、どこに住んでたの?」
「友達になってよ!」「メアド交換しよ?」
「伊湾くんかっこいいねー。咲さんって従妹なんでしょ。あの人の好きなタイプとか知ってる?」
「あわわっ、さ、サキはただのメイ……じゃなくてイワン様の従妹と言ってもその」
質問攻めにあわあわとするサキ。その一方でシスコン野郎はというと、非常に素っ気ないものだった。
「私はダニエラ……もといセデカンテ嬢以外に興味がないんだ」
「うぅっ」
そしてなぜかそれににダメージを受けているのは隣のサキだった。どういう状況なんだ、これ。
「セイヤ、今のうちにブシツへ参りますわよ。セデカンテ侯爵令息たちにブカツにまでついて来られてはたまりませんわ」
「ああ、そうだな。そうしよう。でも俺たちがちょっと先に行ったくらいじゃシスコン野郎はすぐに追って来そうな気もするが……」
そう呟きながら、俺はダニエラと一緒に教室を出た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺の予想に反し、その日、シスコン野郎が料理部に姿を見せることはなかった。
「それにしてもなんで料理部に来なかったんだろうな、あのシスコン野郎」
「わかりませんわ。セデカンテ侯爵令息のことなど、何一つとして理解したくありませんわ。……けれど確かに、不思議ではありますわね」
そんなことを言い合っていた俺とダニエラだったが、結局わからずに互いに帰宅した。
ちなみに、ダニエラは久しぶりに高級マンションに帰ることに。その代わりシスコン野郎とサキには格安マンションの部屋が与えられ、そこで住むことになったらしい。
……それはともかく。
俺たちが不思議がったことの答えは翌朝に判明した。
俺の幼馴染、明希の言葉によって。
「ねぇねぇ、聞いて誠哉。私、ついにリアル異世界人をアニメ部に引き入れちゃった!」
「え」
「だから、伊湾さんと咲さんを部員にしちゃったってわけ。すごいでしょ?」
なんと明希が、かなり強引に二人をアニメ部に勧誘したのだという。
あのシスコン野郎をどうやって言いくるめたのはまったくもって謎だったが、実際学校に行ってみるとそれは確かな話のようで、学校では明希が他の女子たちにかなり羨ましがられたりしていた。
何せ伊湾は日本男子風に変装しても、超絶イケメンなのである。
一日にして女子たちの憧れの的になっていたのだった。
「あにめ、というのはなかなかに面白いものだな。セデカンテ嬢、私と一緒に入部しないか? 絶対後悔しないと思うぞ」
朝一番、シスコン野郎がダニエラを誘って来る。
ダニエラはまるで彼がそこにいないかのように無視をしつつ、俺に向けてにっこりと微笑んだのだった。
「アキ様に感謝しなければいけませんわね」
明希はきっとダニエラのことを考え、シスコン野郎たちを部員にしたのだろう。
少しでも彼らに関わらない時間を持てることが嬉しいのは俺も一緒なので、ダニエラと一緒に明希に感謝したのだった。
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