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32 兄妹喧嘩は勝手にしてくれ。

 せっかくの休日だというのに、佐川家から朝から騒々しかった。

 もし日比野家以外に隣家があったとしたら間違いなく苦情が入るだろうレベルだ。


 何せ、激しい兄妹喧嘩が繰り広げられているのだから。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 メイドのサキが飛び込んできたおかげで、ダニエラの連れ去りという暴挙はなんとか防がれた。

 サキはとにかく腕っぷしが強いのである。シスコン野郎を押さえつけることに成功したのだった。


 だが、そこからが問題だった。

 身の自由は封じられてもシスコン野郎の極度のシスコンっぷりは健在で、依然としてダニエラを連れ去ろうという発言を繰り返すので、ついにダニエラがブチ切れた。


 そして、今に至る。




「お兄様、現実を受け入れなさいませ。ワタクシあなたのことが世界で……いいえ、どの世界でも最も嫌いですの。あなたと血縁があると考えるだけで穢らわしいですわ」


「ダニエラ、お前はそんなことを言う娘ではないはずだ。どこの誰に吹き込まれた? やはりその男なのか? その男なんだな。本当は火炙りにしてやりたいところだが魔法が使えないなら仕方ない。我が魔道具で地獄の苦しみを味わせてやってから殺してやろう」


「セイヤは殺させませんわ。お亡くなりになるならお一人でどうぞ」


「ダニエラ、お前」


 ピリピリした空気が張り詰めた中、ダニエラとシスコン野郎が言い合っている。

 互いに声を荒げているわけではない。全くその逆で、凍てついた氷のような声と刺すような言葉だった。


「ダニエラ様もイワン様もおやめください! ダニエラ様は今、イワン様とお会いできたのが嬉しくて恥ずかしがっていらっしゃるだけなんです。だからイワン様、ダニエラ様のお心の準備が整うのを待ちましょう?」


 サキが仲裁しようと必死で声を上げる。だが、兄妹共に彼女の言い分など全く聞き入れない様子だった。


「……どうする?」


「どうするって言われても、ねぇ。私には止めるような力はないし。ところで誠哉、お腹減ったんだけど、朝ごはんにしない?」


「この状況でか」


「だって喧嘩が終わるのがいつになるかわからないでしょ」


 一方で、部屋を荒らされるだけ荒らされまくった俺たちは、完全に傍観するしかない状態になっていた。

 いつまでも兄妹喧嘩を眺めていても仕方ないという明希の意見はもっともで、俺は頷いて明希と一緒に階下のダイニングキッチンへ向かった。


 朝からどっと疲れてしまったので簡単に作れる朝食にしよう。

 事前に買ってきていたトーストを焼き、上に卵を乗っけた。


「先に俺たちだけで食べるか」


「そうだね。じゃあ、いただきます」


 ダニエラは「今日という今日は許しませんわ」と怒り心頭で徹底的にシスコン野郎を言い負かす気満々だったので、間違いなく昼前までは言い争いが続くだろう。

 そしてシスコン野郎が簡単に引き下がるとは思えない。一時休戦になったとしても、これからも二人が敵対するのは間違いなかった。


 ゴールデンウィークが終わるまでずっとこんな毎日が続くのかと思うと、気が重い。

 兄妹喧嘩は勝手にしてくれればいい。無視できる範囲はできるだけ無視しようと決めて、俺と明希はトーストを齧るのだった。


「そういえば割られた窓、弁償してもらわないとなぁ……」

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