表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/100

25 悪役令嬢のイケメンお兄様は超シスコン。

 そんなこんなで、両親を旅行先に置いたまま俺たちだけでひと足先に旅を終えた。


 帰りに電車に乗ったのだが例のメイド……サキがやたらうるさくて周囲に白い目で見られていたのとダニエラの髪色が珍しいのか指を差されまくっていて、俺は気が気ではなかった。それでもどうにか帰り着くことができたので良しとしよう。


 そして最寄りの駅に着いた俺たちは走って佐川家へ向かう。

 だが、どうか何も起こっていませんように……という俺の祈りは、どうやらもう手遅れだったようだ。


 俺の家だったはずの場所は、もはや俺の家ではなかった。

 建て直したのかと言いたくなるほど、ガラッと改造されていたのである。ごくごく普通の一軒家から、見たこともない豪邸へと。


 そしてその中から当たり前のような顔をして出てきた男が一人。

 薄茶の髪に、ダニエラと同じ鮮やかなスカイブルーの瞳のイケメンだ。身長は俺より二十センチ以上は高いかも知れない。程よくついた筋肉、テレビに出ても違和感のないくらいの美顔であった。

 いや、それでは言葉が不足か。少なくともリアルではこんな容姿の整った男は未だかつて出会ったことがないくらい。


「イワン様!」


 サキが黄色い声を上げ、彼に駆け寄っていく。

 ――だが。


「ダニエラ、探したぞ。見知らぬ世界に送られて辛かったろう。だがもう安心だ。私がお前のことを守ってやる。たとえその命に変えてもだ。だがダニエラ、その隣の男は一体何なんだ? 私はそんな男の話など聞いていないぞ。私の許可なく別の男と喋るなと何度言ったら……」


 その男はサキをまるでこの世にいないもののように無視し、ダニエラの元へ一直線へ歩いてきながら物凄い勢いで捲し立てた。


 そのあまりの勢いと内容、そして常識はずれさに俺は絶句する。

 なんだ、この男は。人の家に勝手に上がり、それだけならず改造までしておいて、ダニエラしか見ていない。

 彼がダニエラの兄であることに間違いはないと確信したが、絶対に仲良くなれる気がしなかった。


 どうやらそれはダニエラも同感のようだ。


「お兄様、お会いしとうございませんでしたわ。護衛役は間に合っておりますの。メロンディック王国に帰ってくださる?」


「なんてことを言うんだ、我が妹は。そうか、照れ隠しか。お前は可愛いなダニエラ。だがそんなのは必要ない。お前と私の心は通じ合っているのだからな。

 私はただお前が心配で仕方なかった。その男に襲われていたりはしないだろうな? 残念ながらメロンディック王国まで帰る手段はないんだ。今日からここで共に暮らそうではないか」


「ワタクシが『嬉しいですわ』と答えるとでも思っていらっしゃるのかしら? 死んでもお断りですわ」


 人でも殺せそうな鋭い視線で兄を睨みつけながら言うダニエラ。

 しかし彼女の兄が動じる様子はなく、「さあ行こう」と無理矢理彼女の手を引いて消えようとする。


「ねえ、ちょっと待って」


 そこへ声をかけたのはやはり明希だった。


「何だ。私と我が妹の憩いの時間を邪魔する奴は」


「その家の持ち主の隣人です。人の家に勝手に上がり込んで好き放題。何ですか、その態度は! いくら異世界人とて許容できません。ダニエラさんとの過ごしたいならよそでどうぞ。とりあえず誠也の家を元に戻して」


「ここは私とダニエラの二人で愛を育むために魔改造した屋敷だ。まあ、メイドは雇うがね。邪魔者は君たちの方だろう」


 ごく当然のような顔で言って、腕にダニエラを抱き寄せたシスコン野郎。

 それからしばらく彼と明希の激しい論争が続いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そして数十分後。


 シスコン野郎にダニエラの住処はここではないと伝えて、やっと帰ってもらうことができた。


 嫌がるダニエラは無理矢理シスコン野郎とメイドのサキに連れて行かれてしまったが、まあなんとかなるだろう、多分。

 ……罪悪感はあるが仕方ない。異世界人たちの揉め事は彼ら同士で解決してもらうのが一番だ。


 幸いなことに佐川家は元に戻してもらうことができたので、それで良しとする。


「やっと納得してもらえたよ……」


 膝をついてため息を漏らす明希に、俺はなんと答えていいかわからなかった。


 悪役令嬢のイケメンお兄様がシスコン過ぎて、ろくでもない未来しか見えない。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


作者の作品一覧(ポイント順)



作者の連載中作品
『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜

両刃の斧のドワーフ少女はダークエルフの姫君に愛でられる

乙女ゲームのヒロイン転生した私、推しのキラキラ王子様と恋愛したいのに相性が悪すぎる



作者の婚約破棄系異世界恋愛小説
【連載版】公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます


あなたをずっと、愛していたのに ~氷の公爵令嬢は、王子の言葉では溶かされない~

【連載版】婚約破棄なんてしたくなかった。〜王女は婚約者を守るため、婚約破棄を決断する。〜

この度、婚約破棄された悪役令息の妻になりました

婚約破棄なさりたいようですが、貴方の『真実の愛』のお相手はいらっしゃいませんわ、殿下

悪役令嬢は、王子に婚約破棄する。〜証拠はたくさんありますのよ? これを冤罪とでもおっしゃるのかしら?〜

婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?

婚約破棄されたので復讐するつもりでしたが、運命の人と出会ったのでどうでも良くなってしまいました。これからは愛する彼と自由に生きます!

公爵令嬢と聖女の王子争いを横目に見ていたクズ令嬢ですが、王子殿下がなぜか私を婚約者にご指名になりました。 〜実は殿下のことはあまり好きではないのです。一体どうしたらいいのでしょうか?〜

公爵令嬢セルロッティ・タレンティドは屈しない 〜婚約者が浮気!? 許しませんわ!〜

隣国の皇太子と結婚したい公爵令嬢、無実の罪で断罪されて婚約破棄されたい 〜王子様、あなたからの溺愛はお断りですのよ!〜

婚約破棄追放の悪役令嬢、勇者に拾われ魔法使いに!? ざまぁ、腹黒王子は許さない!

婚約者から裏切られた子爵令嬢は、騎士様から告白される

「お前は悪魔だ」と言われて婚約破棄された令嬢は、本物の悪魔に攫われ嫁になる ~悪魔も存外悪くないようです~

私の婚約者はメンヘラ王子様。そんな彼を私は溺愛しています。たとえ婚約破棄されそうになっても私たちの愛は揺らぎません。
― 新着の感想 ―
[一言] お兄様厄介すぎるwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ