15 転校生の自称お嬢様が気に入りません。
「……あれが例の転校生ですか」
私は料理部の部室から出てくるその少女の姿を見つめ、小さく呟きました。
染めているとしか思えない特徴的な青髪とスカイブルーの瞳。そしてすぐ隣には見知らぬ男子生徒を侍らせています。
彼女の名はダニエラ・セデカンテというらしいです。
先日このH高校に転入したばかりの外国人のハーフ。海外の大富豪の令嬢だという話なのですが、私は彼女のことを密かに疑っておりました。
こうして直接目にすると、その怪しさは確実だということがわかります。
とってつけたようなお嬢様口調。口の動きと全く合っていない言葉の数々。
どこかに音声再生装置を隠していてそれで喋っているとしか思えません。
私はすぐ理解しました。彼女が何らかの目的で入学してきた、訳ありの人物に違いないと。
――銭田財閥の一人娘にして我が校の生徒会長を務めている、この銭田麗花の目を誤魔化せると思ったら大間違いです。
今に見ていなさいと思いながら、私はそっとその場を立ち去りました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ダニエラ・セデカンテのことを調査すると、不審な点はいくつも見つかります。
異様なほどに良過ぎる成績。入学試験を一発合格し、即入学しているという不自然さ。そして彼女がとある傷害事件を起こしていることもすぐに判明しました。
我が校で有名な不良学生の一人、飯島由加里に膝蹴りを食らわせて軽傷を負わせたというのです。
ちなみに周囲の証言や屋上に設置されたカメラの映像などからそれが正当防衛であることはわかりましたし、だからこそ不良学生も学校側に言いつけることなく引き下がったのでしょうが、ダニエラ・セデカンテの力はあまりに異様でした。
外国人である分身長が多少大きいのはわかります。しかし彼女の経歴を見ても武術を習っていた様子はなく、それなのにあの強さはとても納得がいきません。
考えられる可能性は、彼女がどこかの国のスパイであるということ。
我が国の何かしらの情報を盗むため、お嬢様という安直な設定で入学したのでしょうか。それにしては目立ち過ぎな気もしますが、他の愚かな生徒たちはまるで気づいていない様子。それどころか崇拝する様子を見せている者までいることには呆れます。
確かに私には劣るものの、美人ではありました。しかしそれ以外のどの点に惹きつけられるのか、どうして私ではなくあんな女を崇めるのか、理解に苦しみます。
……それはともかく。
あの女――自称お嬢様ダニエラ・セデカンテを野放しにしておくわけにはいきません。
必ずや彼女を捕まえ、事情を聞き出さなければ。この学校の平穏を守るのが生徒会長である私の務めでありますし、あんな生徒を見過ごすなど私の矜持が許しません。
私を差し置いて人気を集めるなど言語道断。スパイの分際をして偉そうに。あなたと違って真のお嬢様である私がたっぷりあなたの立場を教えて差し上げましょう。
ですが私は不良学生のように直接彼女を咎めたりは致しません。
父の力を借り、彼女のことをもっと深く調査し、黒いところを全て洗い出して証拠を取ってからそれを大勢の前で見せつけてやるのです。
その時にあの自称お嬢様の顔が一体どんなことになるのか。楽しみで仕方がありません。
「……ああ、それといいことを思いつきました」
ダニエラ・セデカンテが侍らせていた男子生徒。
あれの名前は佐川誠哉でしたか。二年C組、成績は全て平均的。容姿も全くもって平凡で、名無しを絵に描いたような男。あれを買収して使い、じわりじわりとダニエラ・セデカンテを追い詰めればさらに面白くなるでしょう。
私は知らず黒い笑みを浮かべながら、彼女を正しく断罪し、この学校から追い出すべく画策を続けるのでした。
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