ヲタッキーズ107 彼シャツラッパー
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第107話"彼シャツラッパー"。さて、今回は異次元人に大人気の彼シャツラッパーが殺されます。
異次元人の街、東秋葉原での捜査は難航しますが、背後にラップのヒット予測アルゴリズムに因る計画殺人の可能性が…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 異次元の難民
記録的な円安が進み、アキバ経済の低下から萌え系産業の淘汰が進んだ結果"帰次元"を考える異次元人が増えている。
つまり、マルチバースにおける異次元難民の"アキバ離れ"が進み、アキバ全体の労働力確保という問題が惹起されて…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラップって良くワカラナイ。アレは歌か、つぶやきか。歌なら未だワカル。でもつぶやきだとスルと…危なくないか?笑
「ヤルが痴性、ヤラヌが理性、何で妊娠?ソレが人生…」
「ヘイ、ヘイ、ヘイ、YO」
「キャー抱いて!」
ステージで歌い?踊り狂う彼シャツラッパー。
同じウネリで天を指差し揺れては踊るフロア。
嬌声をあげて煽るラッパーは全員彼シャツだw
コレが今、異次元人に人気の彼シャツの現場←
「今宵はバースデーパーティょ!みんな盛大な拍手で迎えてね!おめでとう、ブラチ・ヤード社長!」
彼シャツラッパー2人が並んで社長を迎える。
「ありがとう。みんな聞いてくれ。今宵は私のためのパーティだが、この2人に言いたいコトがアル。心の底からありがとう。今日があるのもパンラ。2×7。全部君達のおかげだ」
フロアから沸き起こる大歓声。ソレを煽る彼シャツ達。
「セイラマスレコードの基礎を作り、レーベルを成功に導いてくれた。2人とも愛してるゼ」
社長を真ん中にパンタと2×7が肩を組む。
「この2人に盛大な拍手を。パンラ!そして2×7!」
興奮はマックスレベルだ…その時!
「アンタ達!何を拍手してんの?コイツらの何処が良いワケ?裏切り者と人気取りのコンビでしょ?お金に魂を売り渡した偽物YO」
突然もう1人、謎の彼シャツラッパーが現れる。
「デレジ?やめろ。彼女のマイクを切れ」
「下がっててょデレジ!」
「アホは引っ込め。場をわきまえろ!」
帰れコールが沸き起こる中で大乱闘が始まるw
ステージ全員が乱入した彼シャツを袋叩きだ←
「よせ、もーたくさんだ。落ちついてくれ!」
黒服社長が、袋にされてる彼シャツラッパーを助け出す。
「大丈夫か?デレジ」
「…ア、アタシのは魂のラップだょ。アンタらショボいラッパーとはテクが違うのょ!」
「マクラ(営業)のテク?」
羽交い締めにされ連れ出される彼シャツラッパー。
「みんな、私の誕生日パーティだ。楽しむために来たんだろ?さあ始めよう。音楽だ!」
彼シャツラッパー2人がセンターに踊り出る。歓声が飛ぶ。ノリノリで煽る2×7。禿頭のパンラは…ナゼかノリが悪いw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
史上最年少で首相官邸のアドバイザーになった超天才のルイナのラボは、南秋葉原条約機構の地下司令部に併設してる。
「ねぇ首都高上野線から湾岸線に出るつもりだけど、ソレほど渋滞してないわょね?」
「大東京ドームがホームの酪王球団はキャンプで九州だし、夕方のラッシュには未だ早い。大丈夫さ」
「ねぇねぇ密度函数を使った交通シミュレーションで再計算してあげようか」
最後がルイナ。彼女はゴスロリに車椅子がトレードマーク。
「ルイナ、首都高で大丈夫だょ」
「…やっぱり私もお迎えに行こうかしら」
「ヤメて。ルイナのお出掛けは戦闘ヘリと特殊部隊の護衛付きでしょ?両親は長旅で疲れてるから…」
国家的天才であるルイナの移動には厳重な護衛がつくw
コレから両親を迎えに行く相棒のスピアが直ちに却下←
「ねぇテリィたんじゃなくて私じゃダメなの?」
「だから、ルイナにも会わせるから…で、その時、何を着て来るつもり?」
「やっぱり私がゴスロリで行くコトを心配してる!」
ルイナ以外のみんなが心の中でピンポーンと思うw
「ルイナ。スピアが遅れちゃうょ?」
「寝ないで待ってるわ、スピア」
「ソレが…両親が来るのにラボに泊まるのは気持ち的に…」
遠回しに断るスピアだが…
「ご両親は"ホテル24"に御宿泊でしょ?知られっこナイわ」
「理屈で言えばそうだけど…ちょっと気マズい」
「テリィたんだと気マズくナイの?」
僕は、ナゼだか"アキバを代表し"御両親と会食スル予定w
「うーん何だか急に気まずくなってきたな」
「とにかく!後で電話するわ。おやすみなさい、ルイナ」
「行ってらっしゃいませ、ハッカー様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原のクラブ前。
「パンラ。社長のトコロで続きやるけど、来るょね?」
「ううん。私、今宵は帰るわ」
「そっか。気分は?」
売れっ子彼シャツラッパー同士、それぞれ取り巻きのイケメンを引き連れて、流行りのラップクラブの前で大声で会話。
「大丈夫。悪いワケないでしょ。社長によろしく」
「そっか。じゃね…」
「キキーッ!」
クラブ前の夜道から黒いセダンが急発進!後部座席のウィンドウが開きラッパ型の銃口が突き出される!音波銃?
異次元人専用の殺人音波が発射されパンラを直撃!さらに何発も打ち込まれパンラは階段を転げ落ちて即死スル!
深夜の東秋葉原に渦巻く悲鳴と絶叫←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝。現場にパトカーが続々到着、規制線が張られる。
「リルラ捜査官?どうして首都高HPが?」
「コレ、首都高の案件なの。ヲタッキーズは私が呼んだのょ」
「リルラ、状況は?」
ヲタッキーズは、ミユリさんが率いるスーパーヒロイン集団でSATO傘下の民間軍事会社。異次元人絡みの案件を扱う。
「被害者はセイラマスレコードの超売れっ子ラッパーょ。彼シャツラップは、東秋葉原発のCawaii系の異次元人サブカル。一方、事務所は、半年間、万世橋の麻薬課が監視対象にしてた。今回も万世橋が私達に連絡を寄越したの。で、またまた私達との合同捜査になるけど、よろしくね」
「コチラこそ。で、偶然?狙われたの?」
「明らかに待ち伏せね。アイドリング中の犯人の車を駐車係が見てる。計画的犯行で恐らくプロの仕業。誰もナンバーを見てない」
ヲタッキーズはミユリさんが変身したムーンライトセレナーダーに妖精担当のルイナとロケットガールのマリレの3人。
3人共メイド服だ。ココはアキバだからね←
「他に目撃者は?」
「いるでしょうけど、誰も話してくれない」
「東秋葉原は異次元人の街だから」
ソコヘ紫髪の男が規制線をかいくぐって現場に乱入w
「俺の推しだ!俺の推しナンだ!」
「OK!アンタ、襲撃されたラッパーのTOなのね?落ち着いて!」
「犯人に心当たりは?ライバルとかギャングとか」
ちゃっかり聞き込みを始めるヲタッキーズ←
「俺の推しはギャングのマネなんかしねぇ!」
「わかったから、捜査には協力してょ」
「フザけるな!協力すれば推しが生き返るのか?」
取りつくシマもナイw
「ホントに犯人を捕まえたくないの?」
「このママじゃヲタ友にも顔向け出来ないのでは?」
「勝手にヤレょ。俺はパンラの卒業式を仕切らなきゃナンねぇ」
チラリと振り向いてから歩き去るTO。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
引き続き事故現場。
「何か遺留品は?」
「焼けたICレコーダーが2つ。曲作りに追われてたみたい。ミュージシャンの必需品だから…」
「事故車で再生してみましょう」
事故車の助手席に乗り込んだマリレがレコーダーをプレーヤーにかける。彼女はノイズロック系の御屋敷のメイド長だ。
「データは生きてます。再生しますか?ミユリ姉様」
「お願い…あら?コレは?」
「…雑音?マリレ、コレが貴女の好きなノイズ?」
スピーカーから砂嵐のような音が延々と流れる。
全員の視線を一身に浴びたマリレは、首を横にw
「いいえ、姉様。コレはただのノイズ。ロックじゃないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"ただのノイズ"のデータがルイナのラボに持ち込まれる。
ラボのモニターに不可解な数字が並ぶ。一目見たルイナは…
「ごく初歩的な暗号化コードだわ。ある種の類似解析ね。文字列メトリックだと思う」
「え。アルゴリズムみたいな(知ったかぶりw)?」
「うーん"複雑系"の共通性を探る場合ね。著作物の盗作探知プログラムとか」
何を話してるのかサッパリわからない。
「身近な"複雑系"は書籍。書籍の盗作を見つけるには、実は個々の言葉や文字を比較しても、余り意味は無い。もっと広範囲を俯瞰スル必要がアル。つまり、文章より段落、段落よりページ。で、2つの"複雑系"を比較するのが文字列メトリック」
「ソンな方程式、彼シャツラッパーが何に使うの?ラップの盗作防止?」
「麻薬課が監視してたけど、麻薬絡みかしら」
メイド服で頭をヒネるエアリとマリレ。萌え←
「まだ何とも言えないわ」
「被害者のパンラは、犯罪歴のナイまっさらの経歴でした。ラップも特に暴力的でも挑発的でも無い。頭は禿げてるけど」
「じゃナゼ殺されたの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原のいたるところにパンラの遺影が飾られてる。
行き交う人は喪章をつけ、まるで街が喪に服した感じw
「マリレ、そっちの収穫は?」
「そもそも彼シャツラップって良くワカンナイのょリルラ」
「貴女の御屋敷でかかってるノイズと何処が違うの?」
ヲタッキーズのマリレは首都高HPのリルラと無駄話。
「ところで、テリィたんの元カノだとは聞いてるけど、貴女が担当でホントに良かった。組めてうれしい」
「ありがとう。私も同じ言葉を返しちゃう」
「あら?でも、私は元カノじゃナイから…」
ソコヘリムジンが次々と止まり、中から彼シャツラッパーがゾロゾロと降りて来る。全員がヤタラと大きな花束を持参。
「誰、アレ?」
「セイラマスレコードのもう1人のスターょ」
「キャー!2×7ょ!抱いてー!」
老若男女(異次元人のw)を問わず、彼シャツラッパーは東秋葉原の人気者だ。たちまち人だかりが出来てスマホで撮影w
「パンラ、アンタのコトは忘れないわ。必ずカタキを取ってやる」
パンラの殺害現場だ。既に路傍は花で埋もれている。
黒サングラス。首筋には星のタトゥーの女達の献花。
「失礼。首都高HPょ」
「バッチつけて帰んな!東秋葉原のコトは東秋葉原の中で片付ける。万世橋の世話にはならないわ」
「あら。どんな揉めゴトがあったの?教えてょ」
2×7は芝居がかった仕草で振り向くとリルラを見据える。
「とっくにルーレットは回ってる。パンラはパーティのゴタゴタで殺された。今度はコッチが仕返しスル番ょ。わかったか、お嬢さん」
ココで2×7は、大袈裟に天を仰ぐ。
「ソレが東秋葉原の命のルーレットってモンょ!…ん?サインか。え。チェキ?ピンは¥1000、ツーショでも¥1500だけど」
気安くヲタクのリクエストに応じる2×7←
「2×7、パーティでは何があったの?」
「あの場にいなきゃワカンねぇコトょ、ミニスカポリスの婦警さん。以上、話は終わり」
「ねぇもっと話そうょツーショも撮ろう?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局2×7らはリムジンに乗り込み走り去り、リルラ達は次の事情聴取に入る。"日曜の朝"は彼シャツラップのメッカ。
「社長!首都高HPの方が…」
「え。色々と立て込んでまして。このママでも?」
「こんにちは。首都高HPのリルラと申します。コチラはヲタッキーズのマリレ」
ブラチ・ヤード社長は背が高く浅黒い肌の典型的異次元人。
背広?の仮縫い中らしく、テーラーがクセ取りをしている。
「あらあら。社長、喪服の新調ですか?」
「…死者には敬意を払いませんと。この悲しみが癒えるコトは永くありませんが」
「そうでしょうね。ドル箱スターを失って、レーベルとしても、さぞかし悲しいでしょう」
リルラはヤタラと挑発的だ。
首都高HPのやり方なのか?
「…皮肉にも3週間後にニューアルバムが出ますが、この事件の影響で大ヒットになりそうです。とても喜ぶ気にはなりませんが」
「なら、捜査に協力なさい。ソレが死んだ者への報いになるわ」
「ミニスカポリスの婦警さん。すまないが、私は現場にいませんでした」
まるで想定QAのようなやり取りだ。
「社長さん。私は、貴方の立場なら何かしら聞いてるハズだと申し上げてるの」
「だとしても、ソレを(東秋葉原のw)外の人間に告るつもりはありませんょ」
「貴方のレーベルは、既に1人アーティストを失った。2×7が報復に走れば、もう1人のアーティストも失うコトになりマスょ」
うなずく社長。黒シャツにネックレスを2重にかけたボディガードとテーラーを部屋から追い出す。そして声を潜めて…
「デレジって彼シャツラッパーを調べてみてください」
「へぇ。何者です?」
「キレやすい三流ラッパーです。契約させろとしつこく売り込みに来てて…あの夜も現れた。私の口からは、あの夜、何があったとは言えないが、ゲストはみんなスマホで撮ってました。探せば何処かのサイトで、あの夜の様子が見られるカモしれません」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
誕生日の乱闘は、即日まとめサイトが立つ活況ぶりだw
「コレコレ。ココに写ってるのがデレジ。本名デレジ・レイズ。優等生じゃ無い代わり、大きな犯罪歴もナイ。落書きに暴行、未成年犯罪ぐらいね」
「有名なの?」
「ぜーんぜん。自主制作の独立系ね」
ヲタッキーズのエアリとマリレの評価は散々だ。
「メジャーのパンラや2×7とは格が違うワケね?」
「あ。そのようです、ミユリ姉様」
「ヤッカミがあったのカモしれません」
ミユリさんも加わりまとめサイトの画像を凝視スルが…
やがて彼シャツ同士で喧嘩が始まり企画モノAVみたい←
「あらあら。姉様がテリィたんにヤラされてる泥レス…」
「マリレ!リルラとこの子を調べて来なさい!」
「はーい」
"アタシは格好だけの彼シャツラッパーとは違う!"
モニターの中でデレジが吠えるw
第2章 秋葉原タイプライター
ルイナのラボ。黒板に数式を描き連ねるルイナ。
あくびをしながら、相棒のスピアが入って来る。
「おはよースピア。SATOの朝食会、どうだった?」
「もう最低。オンラインに遅刻したら"死海ダイバー"のラー艦長の次で」
「ジュルジュルって?」
愉快そうに笑うルイナ。
「どーやったらあんなヒドイ音を立ててフルーツを食べられるのかしら」
「お疲れ。ハドロンコライダーのデータ抽出ナンだけど、手伝ってくれる?」
「悪いけど無理。万世橋の仕事と両親の件で頭がいっぱいょ」
ルイナは苦笑い。
「ごめんなさい。ご両親が秋葉原に来る日ね?」
「夕べなんか徹夜で、テリィたんを呼んだディナーの戦略を練ってた。ゲーム理論とか孫子とか」
「兵法?何を心配してるの?」
スピアは眉をひそめる。
「だって、テリィたんは…一般人じゃないから」
「ご両親は最高学府で教育を受けて貴女を育てた。非常に知的な人達でしょ」
「…去年、縁談を持ってきた」←
今度は、超天才が眉をひそめる。
「そうだったわね。忘れてたわ。で、相手はどうなったンだっけ?」
「上海で出会ったフランス人と結婚したわ。懲りズにまた次を用意して来るカモ」
「御両親の願いは、あくまで娘でアル貴女の幸せ。テリィたんと話せば、直ぐに彼のファンになるわ」
そう諭しながら…急にひらめくルイナw
「そのためのアルゴリズムか!使い道がわかったわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に立ち上がった捜査本部。
「ラギィ!音楽を解析するためのプログラムだったの!」
「ルイナ?落ち着いて。何の話?」
「メカニズムが見事なまでに素晴らしい。どんなラップでも分析して、ヒットする可能性を予測スルの!」
興奮した超天才ルイナの声がモニターから流れる。
「え。ラップがヒットするか、しないかが方程式で予測出来るの?」
「YES。あるレベルまでは統計的確率で予測スルことが可能だわ」
「無理ょ。だって、音楽は理屈抜き。主観的なモノでしょ?方程式で決まるハズがナイ」
リモートでラボから根気良く説明するルイナ。
「人の嗜好には一定のパターンがアル。みんな、ユニークな好みを持ってると思いがちだが、パターンは存在スルの。誰もが反応するリズムや転調、コード進行がアルのょ。臭いと同じ。臭い香りは誰が嗅いでも臭いでしょ。膨大な数のラップをサンプルとして、その共通点を分析スル。さらに、その結果から、ヒットするラップ、しないラップを統計的に推測するアルゴリズムだった。そこそこ良く出来てる」
「待って。芸術性はどーなるの?」
「コレはアートじゃナイ。ビジネスょ」
わかったよーな、ワカンナイよーなw
「で、パンラは、このアルゴリズムを使って、絶対ヒットするラップを作ってたワケ?」
「恐らく。でも、彼女が自分のラップを解析した痕跡が無いの。フォルダには彼女と2×7のアルバム用のデータフォルダがあったけど、解析された形跡がナイ」
「じゃルイナが解析してょ」
アッサリ頼み込むラギィ警部←
「構わないけど、肝心のアルバムが発売前で手に入らないわ」
「あ。そーゆーコト?わかった、じゃ令状とるわ。テリィたん、あの元カノに頼んで」
「え。僕?」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
デレジの住居は、神田リバー沿いの安アパートだ。
「首都高HPです。デレジ、話があるので外へ」
出て来たデレジは意外に高身長。威圧感アリw
マリレは背中のホルスターから音波銃を抜く。
「拒否出来るの?」
「話す場所については。ココにスル?それとも蔵前橋(の重刑務所?)?」
「わかったわ」
頭の後ろで両手を組み、壁を向くデレジ。
「あらあら。慣れてるのね」
「東秋葉原で育てば、いやでも慣れるわ」
「おや?コレは何?」
デレジの尻ポッケから電子機器を摘み出す。
「音波銃だと思った?悪かったわね、ICレコーダーょ。曲作りの必需品」
「じゃ中へ入るわね」
「お邪魔しまーす」
先客がいるw
「驚いた。ココで会うとは意外だわ。コチラはパンラのTOさんょ」
「え。推し変?三角関係?嫌だ。ソンなありふれた動機だったの?」
「誤解しないで!」
色めき立つデレジ。
「はいはい。じゃTO。貴方は外でお話し伺うわ。さぁ出て。前推しは誰なの?私のTOはね…」
「で、アタシの担当は、メイドさんじゃなくてミニスカポリスってワケね?アンタは彼シャツラッパー専門の捜査官なの?」
「私はソウルの方が好きね。ジェームス・ブラウンとか初期のスティービーワンダーとか…あら?全部貴女達がパクってるアーティストばかりだわ」
デレジを挑発するリルラ。確かに首都高HPの制服はミニスカポリスのコスプレに似てる…とゆーかソックリそのモノw
「サッサと本題に入ってょ」
「OK。動画を見たわ。会場から放り出された後のアリバイを歌って」
「はいはい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、アパートの外では…
「もともとデレジとパンラは、地下時代は親友だった。俺も含めてな。一緒にラップを刻んだモンさ。俺も良く付き合ったっけ」
「でも、アンタが推したのはパンラ?」
「やめてくれ。デレジとは何もナイ。コレが答えだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、アパートの中。
「何を怒ってるの?あ。デレジ、アンタは自分が不幸だと思ってるのね?パンラだけが成功してメジャーになったから」
「あのね!パンラにラップを教えたのは私。アイツが裏切るまで、私達は親友だった…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アパートの外。
「俺は…俺はただ昔のパンラを知ってる奴と一緒にいたかっただけだ」
「上手い言い訳ね。でも、地下の友情が続くハズないわ」
「鋭いな。確かに、いくらパンラが電話してもデレジが着信拒否してた。プライドの高い女さ」
ふとリルラは、首を傾げる。
「待って。なぜパンラがデレクに電話を?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アパートの中。
「ワカンナイわね。2×7達を嫌ってたんでしょ?何でレーベルのパーティなんかに押しかけたの?ボコられるのが見えてるのに」
「押しかけてない!招待されたの。社長のブラチ・ヤードは何年も私にレーベルとの契約を迫ってた。アタシの才能を買ってたの」
「マジ?ソレを拒否って、アンタは西陽の当たるボロアパート暮らしを選んだって?…アンタ、バカぁ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アパートの外。
「俺、推し変してねぇから」
「推しが解析プログラムを持ってたのは知ってる?」
「何だソレ?ウマいのか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アパートの中。デレジは叫ぶ。
「私は…私は、私の流儀でラップを刻みたい。全部自分で決めたいの!ソレが彼シャツラッパーだから!」
すると、次の瞬間!
カタカタカタ…昔のタイプライターを撃つような軽快な音。
カーテンに一直線に穴が開き、棚の調度品が次々砕け散る!
「な、何?」
「伏せて!音波銃で銃撃されてる!」
「えw」
さらにタイプライター音は続き、窓ガラスが粉々に砕け散り壁は穴だらけにwリルラとマリレが音波銃を抜き飛び出す!
「止まれ!首都高HPょ!」
安アパートの前でUターン、急加速で逃走スル黒いセダン。後部座席のウィンドウから飛び出てた音波銃口が引っ込む。
「くそっ!マリレ、犯人見た?」
「いいえ、ほとんど」
ホルスターに音波銃をしまうリルラ。その時…
「デレジ!」
アパートからフラフラと出て来るデレジ。
胸に大きな赤いシミ。よろめいて倒れるw
「神田消防。救急車を要請!コード5!」
第3章 トップヲタク、死す
万世橋の捜査本部。
「ラギィ警部!彼シャツラッパー2×7の本名はセオド・デュレ。特殊作戦群を懲戒除隊。池袋乙女ロードで暴行、起訴。昨日、今日とデレジに復讐スルと公言をリピート中」
「でも、証拠がナイわ。デレジの容体は? 」
「恐らく助かるでしょう」
彼シャツラッパーって運が強いなw
「じゃデレジが推しを殺し、2×7が報復って絵かしら?何かシックリ来ないけど」
「どーでしょう。東秋葉原のスラム育ちのデレジは、犯罪に関わらないように用心してました。ソレなのに人前で処刑まがいの銃撃騒ぎを起こすでしょうか。何処か不自然です」
「パンラが殺される前に何をしてたかが気になるわ」
僕が本部に戻ったのは、このタイミング。
「噂をすれば、ね。テリィたん、どーだった?」
「次長検事(元カノのミクス)が令状をくれたょ。でも、ココで問題が1つ。ラップはスタジオの外へ持ち出せナイらしいんだ」
「まぁ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「スピア。来てくれて助かったょ。ソレでなくてもポップカルチャーの世界は苦手ナンだ」
「ちょっと何?あの人達を見て」
「コスプレショップなら、この先だぜ?」
僕は、ルイナの相棒スピアとセイラマスレコード本社。
通り過ぎる"アーティスト"達が僕達を指差して笑うw
僕はUボート乗員の黒ジャケット。スピアは青スク水←
「知らないコスプレばかりだ。まるで別世界だな」
「テリィたんは、半分は衛星軌道の宇宙発電所、残りの半分はミユリ姉様の御屋敷だモンね」
「まぁ確かに」
異次元人に多い浅黒い肌のブラチ・ヤード社長が顔を出す。
「ご足労かけて申し訳ない。2週間後にリリースが決まってる音源なので、絶対に外に出したく無いのです」
「そうでしょうね。わかります」
「良かった。では、ココから先は私のボディガード、キロガがお手伝いします」
忙しげにブラチ社長は去り後に残ったのは…巨体のキロガ←
「やあ、キロガ。前に会ったコトある?」
「…東秋葉原の"リトルボイス"で」
「あ、そーだったね。ポッチャリ系の御屋敷だ。去年、コロナで閉店した…」
げ。元メイド?ってか女子だったのかw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
セイラマスレコードのDスタジオに通される。
「それじゃココを借りて作業を始めて良いのかな?」
「アタシ、アンタを知ってる」
「あぁ"リトルボイス"は良い御屋敷だったね」
巨体キロガは首を横に振る。
「いや、ソッチのスク水ハッカー。昭和通りの"チョベリバ"にいた?」
「え。"チョベリバ"を知ってるの?…データ接続OKょ」
「私は、もともとグラビア希望だった(ホントか?)コイツはアリス。コッチはリピト。曲をかける。先ず推しのから刻む?」
因みに"チョベリバ"は老舗スクキャバだ。
「そうだね。スピアもOK?じゃ先ずパンラのから頼む」
「1曲目からめっちゃカッコ良い。みんなぶっ飛ぶ。金が寄って来る。きっと儲かってアップアップ。リピトGO!」
「OK!爆弾投下!」
突然、甲高い声のラップがほとばしり、全員が踊りだす。
キ:「最高!」
僕:「嫌なビートだな」
ス:「乗れないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コチラもDスタだが、ビキニが溢れる撮影現場。
「あら!メイドちゃんにミニスカポリス?コスプレで遊びたいならそー言って。撮影が終わったらオールしょ?」
「ソレはご親切に。覚えておくわ」
「ねぇデレジのアパートまでドライブしたんだって?どーだった?」
来夏用のスチールなのか、2×7は彼シャツの下はビキニ。
彼女を囲むように、ムキムキの筋肉系のイケメンが侍る。
「聞いたわ。誰かが彼女のケツを狙ったんですって?」
「あらあら。貴女は関係がナイと言いたげね」
「あるって証拠は?」
首都高HPのリルラは淡々と語る。
「彼女のTOもいたのょ。彼を殺すコトがパンラに敬意を表するコトになるの?」
「デレジと一緒にいたのなら自業自得だわ。東秋葉原の敵と寝るTOは東秋葉原の裏切り者ょ。ワカルでしょ?」
「OKです」
ADと思しき優男が2×7の耳元でささやく。
「OK!もっと話していたいけど、人生は抹茶シェイク…じゃなかった、待っちゃくれないわ。仕事させて」
「撮影再開だ!みんなスタンバイしろ」
「私、撃たれたコトは忘れないから。次に会うと時は…アンタはおしまいょ」
リルラは撮影に向かう2×7の耳元でドスの効いた声で囁くw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、コッチはノリノリのDスタジオ。
エンジニアもボディガードも総立ちw
「失礼。ちょっと確認させてょ。さっきは"堕落はいいネ"だったのに、Bメロから急にネガティブなトーンに転換してるゼ?」
「テリィたん、何を言うかではナイの。どう言うかが問題なのょ。ねぇキロガ?」
「このスク水ハッカーは飲み込みが早い。いつかSATOを抜け出してハッキングのラップを刻め」
やれやれ。2人はスッカリ意気投合だw
「出たわ!テリィたん、お仕事完了ょ。でも、未だ2曲残ってるわね…」
「いや!長居は無用だ!キロガ、色々教えてくれてありがと」
「いいってコトょ、ブラザー」
ぶっとい腕を僕に突き出す。握手?
すかさず、ドラえもんグーで返す。
「おぉ僕も礼を言うぜ」
キロガは"コイツはヤバい"って顔してドン引く←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕達が苦労?して集めたデータをルイナが解析。
「被疑者のPCにインストールされてたヒット予測プログラムだけど、やや狭い範囲の話ではあるけど80%以上の確率でヒットを予測するコトがわかった。で、2×7のラップだけど、常態的に分析結果と現実に矛盾が生じて…」
「STOP!ルイナ、言葉がわからなくなったょ」
「…OK。じゃあテリィたんのチョコバー"ブラックパンダー"を1本借りるわね。スピア、貴女が食べてるのは?」
(マズそうなw)真っ白いパッケージのスナックだw
「有機野菜の豆腐チップス」
「完璧ね。パンラのラップは高スコアだった。つまり、彼女のラップは美味しい"ブラックパンダー"。つまり、アルゴリズムに拠れば、パンラの曲はみんなが望むラップ。大ヒット間違いナシ。ところが、2×7のラップは低スコアだった」
「つまり、彼女のラップは豆腐プロレス、じゃなかった、豆腐チップスってコト?」
ルイナは肩をスボめてみせる。
「オチを先に言われちゃったワ」
「じゃなぜキャンペーンまで打って売り出すの?」
「豆腐プロレス、じゃなかった、豆腐チップスが好きな人もいるからでしょ?」
リズは、やたらエネルギッシュな動きで、車椅子の超天才だけどゴスロリ大好きのルイナから、豆腐チップスを奪還w
「でも、いくら地下で売れても、スターにもメジャーにもなれないな…あ。今宵はお見合いだったw」
急にアポを思い出した僕は、ラボから飛び出す。
「(お見合い?ミユリ姉様とは破局?)で、ソレを知った2×7はパンラに自分のラップがクズだとバラされるのを恐れて…パンラを殺した?うーん無理臭い…こんな絵で立件出来るのかしら?」
「デレジが犯人だとは、どーしても思えませんね」
「でも、パンラの口封じは強い動機になります」
僕抜きでメイド3人の推理?はチャカチャカ進むw
「パンラが消えれば、2×7でもレーベルのトップになって、東秋葉原の注目を集めるコトが出来るわ」
「豆腐プロレス、じゃなかった、豆腐チップスでも脚光を浴びるコトが出来るってワケね?」
「ストーリーはベタだったけど」←
ココで会議アプリでモニターしてたラギィ警部が割り込む。
「OK。その線で捜査を進めるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「遅刻する確率はメチャクチャ低かったのに。どうしてこんなコトに?」
「まぁ色々あるさ。スピア、深呼吸してリラックスだ。遅刻のプロからアドバイス」
「わかったわ。テリィたん、行こう?」
駅に直結した高層タワーのペントハウス。温室タイプのガーデンレストランだ。高級っぽいけど実は夏はビヤガーデンw
「こんばんは。遅れてすみません。ちょっと犯人捜査に科学的助言をスルつもりが、こんな時間にw申し訳ありませんでした」
「お気になさらないで。私達も時差ボケですわ」
「テリィたん、私の両親ょ」
僕は、スピアの御両親と握手スル。
「パパ、ママ。この人がテリィたんょ」
「テリィです。お目にかかれて光栄です。楽しみにしてました」
「私達もですよろしく」
油断のならない視線だwお互い値踏み合戦スタート←
「では。座りましょう」
にっこり微笑んで真っ先に着席するスピア。早速両親、特に母親の顔を盗み見る。そんなスピアの様子を盗み見る父親。
場の力関係を瞬時に理解した僕は、母親に話しかける。
「あの、何でしょう?」
永遠と思えるコンマ1秒の沈黙の果てに微笑む母親。
「写真よりチャーミングね」
すると沈黙は魔法のように消えて、談笑が始まる。
「めったに娘とは会えないので、親としては心配で。でも、秋葉原で貴方のような方を推しているなら安心だ」
「どうぞ、今後とも娘をよろしくお願いします」
「スピアさんは、アキバで楽しく"健全に"暮らしてらっしゃいます。どうぞご安心ください」
我ながら満点発言だ。スピアの顔に溢れる微笑。
「第3新東京電力の宇宙発電所長としての御活躍は、国でも常々伺っておりますぞ」
「スピアさんはじめ、アキバのヲタクの協力のおかげです」
「貴方と結婚する女子は、幸せ者ね」
言葉とは裏腹に探るような目つきの母親。実はスピアからは早く結婚しろとウルサい両親の前で恋人のフリをしてくれと頼まれてたが…あぁヤッパリ受けルンじゃなかったょ面倒w
その時!
「スピア!」
雌に飢えた雄の声w
「まぁカルビ!久しぶりだわ!」
振り返ると、高身長の中近東系。既に立ち上がったスピアとヒシとハグしてる。温かく見守る両親。こ、この展開は…
「ねぇ元気だったの?カルビ」
「あぁスピア!こんな世界の東の果てで出会えるなんて!」
「まぁ2人とも座って。テリィたん、カルビにイスを」←
昔から"彼女のママ"に絶対忠誠を誓う僕はイスを探すw
「テリィたん。彼はカルビ。私のメソポタミア大学時代の"古い"友達なの。幼なじみょ!」
「スピアの"新しい"友達のテリィです」
「構わなかったかしら?私達の日本滞在も短いし、カルビがお仕事で東京へ来てるのを知って、ぜひデザートだけでもと誘ったの」
「あ。椅子を持って来ます。直ぐに」
完全に声がひっくり返ってる僕←
「日本にいるとは知らなかったわ」
「移住を考えてルンだ。アキバ工科大学から奨学生にならないかってオファをもらって」
「スゴいわ!」
手放しで喜ぶスピア。真夏のカンカン照りの太陽のように"ギラギラ"と微笑む両親。ゲームチェンジャーの来襲だw
「スピア、僕も日本は大変気にいっているンだ」
「カルビ!ソレは素敵じゃないの」
「確かに日本は…美しいょ?」
僕はネクタイを緩め…思い切り顔をしかめる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"秋葉原タイプライター"と呼ばれる突撃銃タイプの音波銃に銃撃され重傷を負ったデレジが入院中の"外神田ER"。
「医者や警察がなんと言おうと、俺はデレジに会う。そこをどいてくれ!」
「パンラのTO?」
「あ!ミニスカポリスにメイドか?デレジに会わせるよう警官に言ってくれ。俺がTOだと言ってやれ!」
病室警備の警官からの通報で駆けつけた首都高HPリルラとヲタッキーズのマリレ。その目の前で警官と押し合うTO←
「落ち着いて!ねぇ話して。何があったの?」
「アンタじゃない!俺はデレジと話をしたいんだ!通せ!」
「…わかったわ。後は首都高HPが」
リルラは警官を下げ彼を病室に入れるが、ソコで彼は絶句w
「コレでわかった?デレジは話せる状況にナイの」
全身包帯のミイラ女状態で昏睡するデレジ。彼は頭を抱える。
「ねぇ何があったの?貴方、何かを見つけたのね?ソレは何?教えて」
「どうかな」
「ねぇ小脇に抱えてるのは亡くなったパンラのPCね。何か大事なデータが入ってたンでしょ?私を信じて。教えて頂戴!」
「アンタを信じる?ヨソモノのクセに。無理だ」
病室を飛び出したTOを追いかけ"外神田ER"の駐車場へ。
「パンラの死について、何か知ってるのなら話して」
「アンタに話す必要なんかナイぜ」
「ソレは推しを亡くしたTOの義務ょ」
TOの義務…彼は厳しい顔で振り向く。
「一般人に言われたくない。東秋葉原のコトなんか、何も知らないクセに!」
バタンと車のドアを閉められ、リルラとマリレが車に背を向けた瞬間、車が爆発!駐車場に赤黒いキノコ雲が立ち昇るw
爆風に薙ぎ倒されたリルラとマリレは、直ちに立ち上がって車に駆け寄るが、車内は既に火の海で手の施しようもナイ←
第4章 さよなら東秋葉原
間もなく現場は、駆けつけた緊急車両や警官でごった返す。爆煙漂う中、路傍に腰掛けるリルラに歩み寄るミユリさん。
「大丈夫?リルラもERでちゃんと診てもらって」
「ミユリ姉様。私なら平気…しくじっちゃったわ。バカなコトを言っちゃった」
「そんなコトない。深呼吸して…事件はコレからょ」
リルラの肩に手を置くミユリさん。2人の目の前で鑑識が事故車の検視作業を始める。ヲタッキーズのエアリが来る。
「万世橋の爆弾処理班は、高性能爆薬は使われてないと言ってます。起爆装置がイグニッションに仕掛けられててキーを回した途端に爆発するタイプ」
「彼シャツラッパーの仕事とは思えナイわ。2×7には無理でしょ?」
「彼女は、特殊作戦群で戦闘工兵のトレーニングを受けてます。爆破の知識もある。爆発物は十分に扱えるわ」
ソコへ、警官が証拠品袋入りの焦げたPCを持って来る。
「あの、これが焼けた車の中に。警部がヲタッキーズの方にお見せしろと」
「あ!ソレはTOが持って来たPCだわ。確かパンラの遺品で…TOは、そのPCから何かを掴んでいたみたい」
「でも…コレじゃ何処までデータを取り出せるやら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、デレジの病室でミユリさんは…
「デレジ!何してるの?!」
「アンタがミユリさん?何に見える?」
「そんなカラダで一体何処へ行くつもり?」
さっきまで昏睡状態のミイラ女だったデレジが…今はベッドの上に起き上がり、何と着替えて出掛ける準備をしているw
「パンラとTOを取られた。もう黙っていられない。コレは戦争ょ」
「ヤメて。貴女もコレ以上深みにハマってはダメ」
「好きでハマるんじゃない。追い込まれた。コレが東秋葉原なの!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、僕はルイナのラボでショゲてる←
「大失敗だ!紛れもなく大失敗。あぁそーとしか言いようがナイ」
「あらあら。ソコまでヒドいの?テリィたんの考え過ぎじゃナイの?」
「いや。完敗だ。彼を見せたかったょ。男前で長身で髪もバッチリで歯も真っ白。しかも、一般人。まるで古代メソポタミアの王子様さ」
ソコへ諸悪の根源、スピアが現れる。
「スピア!客観的意見を言ってテリィたんを慰めて(ってかこの過剰反応を何とかしてw)」
「テリィたんが大失敗だと言ってるの?」
「さっきから無限ループ」
スピアまでガックリ肩を落とす。
「実は、私も同感だわ」←
「おいおいスピア。誰か僕を慰めてくれ!」
「ルイナ、いる?あぁ良かった!頼みがある。コレ、セイラマスレコードの会計記録だと思うけど見てくれない?」
マリレが、黒く焼け焦げたPCを持ち込む。
超天才とハッカーのコンビが瞬時に復活w
「スピア、モニターにデータを出して…あら?この空欄は何なの?小学校の虫食い算?」
「ハードドライブが焼けて、コレだけしか修復出来なかったの。ルイナなら、この穴を埋められると思って…」
「あのね、メイドさん。その前提がもう違うの。この虫食い算を解くために穴を埋める必要はナイわ。コレだけで十分ょ。"グレブナー基底"を使うから」
また難解ワードだ。その場の全員が瞬時にウンザリ顔になるが、トップギアが入った超天才のベシャリは止まらないw
「テリィたんが所長さんをやってる太陽発電衛星"TEPCO-3"の直ぐ下を飛んでるハッブル宇宙望遠鏡の天体写真でも使われてる手法ょ。データが全部揃ってなくても不明な情報を推測スルの。地下アイドルの現場で同じチケット代でもアリーナで推しの目前でヲタ芸を打てたら幸せでしょ?」
「ルイナ。推しがセンターとは限らない。ゼロツーでもゼロスリーでもアリょ…」
「あ。そっか」
軽い笑い声。座が和らぐ。
「とにかく!私が言いたかったコトは、ゼロゼロだと推しが近過ぎて、ステージ全体が見えないでしょ?この虫食い算の欠けてるデータをツーゼロ、スリーゼロにいる別のアイドルだと思って。"グレブナー基底"を使えば、ゼロゼロで自分の推ししか見えなくても、まるで箱後方にあるPA席から見るようにステージ全体を見渡すコトが出来る。データが虫食いでも、全体の絵が見えるってワケ」
「わかったような、わかんないような」
「どんなシステムかが見えて、そのシステムが解明出来ればソレをツールに不明なデータをゲットするコトが出来る。虫食い算の穴を埋めるコトが出来るのょ!」
鼻穴を膨らませ熱弁を終えるが、予想していた拍手はナシw
「なるほど。じゃルイナ、ソレ分析して」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田山本町に両サイドの雑居ビルとスケール感がアンバランスな白亜の豪邸がアル。
人生ゲームの上がりみたいなアメリカンな邸宅だが、今は武装傭兵が警備している。
ソコヘ万世橋の黒SUVが殺到!
「2×7ことセオド・デュレ!万世橋警察署ょ!令状がアルわ。1分あげる。突入する前に大人しく自分から出て来て!」
ラギィ警部がメガホンで呼びかける。
SUVからはSWATが飛び出し散開。拳銃、短機関銃、突撃銃タイプの音波銃、ロケットランチャー、擲弾筒など装備w
「ヲタッキーズ!裏口は?」
「クリア!」
「フン!アタシがビビるとでも思ってるの?パンピーじゃあるまいし。令状があるって?上等だわ。見せてもらおうじゃナイの!」
邸宅の玄関ドアが開き、突撃銃タイプの音波銃を構えた傭兵を左右に従えて、表の鉄柵へとスタスタ歩いて来る2×7。
途中で左右の傭兵に待機を命じ、自分だけ鉄柵まで来ると、鉄柵の間から令状を見せるラギィに小さな声でささやく。
「保護して、刑事さん」
耳を疑うラギィw
「え。今、何て言ったの?」
「助けて!私を警察署で保護して!デレジに命を狙われてる。お願い。私を守って!」
「OK。と、とりあえず、逮捕スルけど」
すると、クルリと回れ右をした2×7は大声を張り上げる。
「心配しないで!万世橋には捕まらナイわ!1時間で戻る。じゃあねアミーゴ」
邸宅の防備を固める素肌に防弾ベスト、ラッパ型銃口の音波銃を構えた傭兵達は、互いに顔を見合わせ怪訝な顔のママw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボ。ルイナと相棒のスピアは、パンラの焦げPCの再生にかかりきりだ。僕は働くヲタクを前に自論展開中w
「結局、問題の所在は、僕が君達、つまりスピアとカルビ君の間に割り込めなかった点にアルと思ふ」
「え、何?ルイナ、このアルゴリズムを見てくれる?」
「つまり、御両親との会食の最中に、突然元カレが現れた。そして、スピア。君は大喜びし、彼に心を奪われたワケだ」
作業が立て込みジャージを脱ぎスク水になるスピア←
いよいよホンキを出すみたいだ。解析作業は佳境だw
「嫌だ、テリィたん。カルビにヤキモチ焼いてるの?」
「いや、ソンなコトは…ただイケメンで成功してて、スピアを夢中にさせただろ?」
「テリィたん…彼はゲイょ」
え。そーなの?
「ソ、ソ、ソ、ソンなコト、僕は知りようがなかった」
「そうよね。わかるハズない…あぁだったら気分悪かったでしょ?嫌な思いをさせてごめんなさい!」
僕の首っ玉に飛びつきハグして頬にキス!
ドサクサ紛れにスク水の胸を押しつけるw
「あ、あのさ。スピアの御両親もその、彼がゲイだってコトを知ってるの?…あ、スク水の胸の感触が」
「え。多分知らないハズょだって…イヤだ!ママは私とカルビをお見合いさせたんだわ!」
「トンでもナイな…で、でも、イイw」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の取調室。
「何なのょコレ?取り調べ?私は、犯罪者じゃない。自分から来てあげたのょ!」
「そう。自らの意思で怖がって来た。タフを気取る彼シャツラッパーが、あんなにガクブルなんて驚くわ」
「警部さん、ワカルでしょ?全てイメージ作りなの。ワルのフリをしてラップを売ってるだけ。全て演出ょ」
金の鎖ジャラジャラのネックレスを弄びながら2×7。
「あのね。2人殺して3人目も死にかけてる。フリしてましたで済むと思ってるの?」
「2人殺した?私は、昨日デレジのアパートに"バカ"って落書きしただけょ。ソレもファンの期待に応えてやっただけ」
「パンラと彼女のTOは?」
鼻で笑う2×7。
「だから!デレジが殺ったンでしょ?」
「2人とも?」
「YES。私は関係ナイわ」
ガタンと音を立てて立ち上がるラギィ警部。
「わかった。釈放ょ。とっとと東秋葉原へお帰り」
「警部、デレジに今、2×7を釈放したと連絡します」
「ちょ!ちょ!ちょ!ちょっと待ったー!」
歩き去るラギィを必死で呼び止める2×7。頭を抱える。
「社長のブラチ・ヤードだわ!パンラと金で揉めてた。上前ハネてたみたいょ。思い切り恨みを買ってたわ」
「ダメ。彼はアリバイ、アルし。次!」
「ならキロガだわ!ナンでもブラチ社長の言いなりになって動く、影の存在だモノ」
やたら歌いまくる2×7。仲間をバーゲンセールw
「でも、アンタは爆弾を作れるわょね?戦闘工兵さん」
「大丈夫!キロガだってビデオで発火装置を扱うから、発破の技術はアル。そもそも、性格的にヤタラと吹っ飛ばしたがるのはアッチ。だから、言っても聞かなかったの。デレジの奴も…」
「どーゆーコト?デレジに、キロガがTOを殺したと話したの?」
さすがのラギィも血の気が失せるw
「あぁ言ったわ。だってアイツ、私を殺しに来ると言って来たのょ?黙ってられる?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室からラギィ警部が飛び出して来るw
「2×7がキロガをデレジに売ったわ!」
「ええっ!」
「SATOと連携して。私はキロガを抑える。アンタ達はレコード会社に向かって」
「了解です!」
全員出動!エレベーターに殺到w
「社長のブラチ・ヤードがパンラの金をかすめてたのなら、ブラチの選択肢は2つね。パンラにお金を返すか…」
「パンラを殺すか?」
「あれ?みんな。お出掛け?」
このタイミングでエレベーターのドアから出て来た僕は、警官隊とヲタッキーズに逆にエレベーターへと押し戻されるw
「あ。ルイナからみんなに伝言ってか、このスマホでオンラインなう」
「スマホごと一緒に来て。途中で聞くわ」
「襟首を摘むな!ネコじゃナイぞ!あのね、ルイナがアルゴリズムを回したら、プログラムでは2×7のラップは売れないと出た」
にわかにナンの話が分からズ全員キョトンw
「豆腐プロレスだから?」
「テリィたん!私が話すわ!ラギィ、ソコにいるの?あの穴だらけのデータの解析が終わった。アレは裏の会計簿。賄賂のリストだったわ!」
「え。何?」
僕からスマホを奪い取るラギィw
「メディアを買収するためのリベート一覧ね。2×7のラップばかり刻んでもらうためのリベートの支払い先」
「確かにメディアミックスで嫌というほど刻めば、サブリミナル効果に弱い異次元人はラップを買うわね」
「ソレが彼シャツラップが流行るワケ?」
つまらない仕掛けだ。
「で、メディア買収の資金は、レーベルが所属アーティストの歩合からかすめ取ってた」
「つまり、パンラの金も流用されてたワケね…ちょっとテリィたん、何してるの?貴方は現場には連れて行けない。今すぐ防弾ベストを脱いで!」
「まだ話の続きがあるんだ。ソレに、この前、SATOの戦闘訓練を受けたばかりさ(落第点だったがw)同行する資格はアル」
勝手にSUVに乗り込む。ラギィは溜め息。
「私がミユリに殺されちゃうわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヲタッキーズがレコード会社に突入。
ピクつく血塗れの巨体が倒れている。
「キロガ?ヤメて。もう終わりょ!」
音波銃に手を伸ばすキロガだがマリレが音波銃を蹴飛ばす。
「社長が…ブラチ社長が連れて行かれた…」
「デレジが?」
「YES。でも、奴もアタシの弾をくらってるわ」
「パンラやTOみたいに?」
出血多量。気を失うキロガ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夜の東秋葉原を疾駆スル万世橋のSUV。
「はい。ラギィ」
「警部!ヲタッキーズからの報告では、デレジがセイラマスレコードを襲撃、ブラチ社長を車ごと拉致した模様」
「キロガは?」
「現場で身柄を確保。重体です。パンラ殺しに使ったと思われる音波銃を押収」
僕は後部座席から異議を唱えるw
「あのキロガが殺した?とても犯人とは思えナイな」
「テリィたん、黙ってて。デレジの行き先は?」
「彼女のスマホに電話して逆探知しましょう。なるべく彼女と話が長く続く人は?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「捜査本部からラギィ警部。逆探知の準備完了。リンクから電話してください」
「準備出来たわ。こっちにもリンクを繋いで…マリレ、話して。音楽の話題で出来るだけ長くね」
「ROG。でも、ノイズとラップは違うのょ…」
無限ループに思える呼び出し音。やがて…
「誰?」
「デレジ。ヲタッキーズのマリレょ」
「ノイズ野郎に用は無いわ。そもそもロックは嫌い」
グッと抑えて笑顔で対応するマリレ。
「だょねー。でも、良いから聞いて。早まらないで。キロガ
は助かる。貴方は人殺しじゃない。未だ引き返せるわ」
「そうね。コレから人殺しになるトコロ。黒幕は、この車を運転してるブラチ社長ょ!」
デレジは後部座席から社長の後頭部に音波銃を当てる。
「私は、パンラの仇を取るわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「地下アイドル通りを東へ。現在地はホテル"恋の寄り道"の裏です」
捜査本部のモニターに地図が投影され赤い点が移動スル。
「ねぇ貴女は彼シャツラップのために永年真っ直ぐに頑張って来た。そーでしょ?」
「ソレが何になるの?何の得にもならない。だから、もう自分を偽るのは止めるわ」
「ヤメて。ヤケにならないで。ヤメるのょ!」
女同士の長電話に男の声が混ざる。運転中のブラチ社長だ。
「デレジ、警察の言うコトを聞け」
「ウルサイわね!黙って!」
「パーツアベニューを南に移動中。全車急行せょ!」
万世橋から続々パトカーが東秋葉原に急行スル。
「考え直して、デレジ!」
「話は終わり。サヨナラ」
「待って。デレクさん、まだ切らないで」
SATO地下司令部からリモートでルイナが割り込む。
「今度は誰ょ?」
「貴女のラップをデータ解析した者ょ。自分のラップが何でメジャーでウケないか知りたくない?」
「え。ソレは知りたいわ!」←
ぐっと身を乗り出す感を出すデレジ。
「ブラチ・ヤードは、お金を渡して、メディアから貴女のラップを排除させてたの!」
「やっぱり?私のラップが売れない理由がやっとわかったわ!私の才能じゃなかったンだわ!」
「(間違いなくソレもアルw)で、パンラはその証拠をつかんだの」
腹落ちしたデレジは鼻息が荒いw
「ソレで消された?さらに、セイラマスと契約しなかった私に対し妨害に出たワケね?ねぇどーなの社長!」
「今からでも私と手を組めば、悪いようにはしないぞ。デレジ、一緒に東秋葉原を手に入れナイか?」
「メイド通りを東へ直進中!全車、包囲せょ!」
本部のモニター上でパトカーに包囲される赤い点w
「話はもう終わりょ。疲れたわ…」
「デレジ!」
「切るわ。さよなら」
シグナルLost。
「ごめんなさい、警部。アレ以上、引き延ばせなかったわ」
「十分ょ、ルイナ。デレジの行き先はわかった」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ブラチ社長は、後頭部に音波銃を当てられながら運転中。
「デレジ、お前は撃たれてる。病院へ連れて行きたい」
「黙って。アタシ達2人の行き先はアタシが決める。次を右!」
「次を右…考えてもみろ。俺達が手を組めば、彼シャツラップの全てを手に出来るぞ。お前は彼シャツクイーンだ!」
幾多の地下アイドルに幻想を抱かせて来た語り口w
「ふん!嬉しくないわ。彼シャツ女王って何?企画モノのAV?ソレにもう遅いわ。全て手遅れょ。パンラもTOも戻らない。そして…アンタも終わりょ。車を止めて」
パンラの殺害現場だ。路傍には献花が山と積まれている。
数秒遅れて万世橋の全パトカーが続々集結して包囲スルw
「デレジ!デレジ!聞こえる?」
「社長、逃げようとしたら頭を吹っ飛ばすわょ」
「わ、わかった。でも、どーするつもりだ。命だけは…」
パトカーのドアを盾に音波銃を構えるラギィ警部。
「警部。籠城されると厄介です。どーやって車から降ろします?」
「誰か電話して」←
「おい!誰か座持ちの良い奴を探して来い!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、車内では。
「馬鹿はよせ。ムダだ、デレジ」
「アンタがパンラにしたコトはどーなの?」
「ビジネスのためだ。仕方がなかった」
電話が鳴る。出ようとしたブラチの後頭部に銃口が当たる。
「わかってくれ、デレジ。ほっといたらセイラマスレコードは潰れてた」
「パンラのTOは?アレもアンタが殺ったの?」
「私だって心を痛めたさ。だが、所詮はアイドルヲタクは消耗品だ。ヤルしかなかった。転がり出した石は誰にも止められナイ…」
電話は鳴り続ける。後部ドアが開き、デレジがヨロヨロと出て来る。キロガの弾丸を受けて、彼女も瀕死の状態なのだ。
「注意!デレジは手に何か持ってるぞ!音波銃か?」
「ヤメて!撃たないで!」
「え。ムーンライトセレナーダー?」
メイド服だが下半身はバニーと逝う、作者の妄想満載のコスプレ。因みに本人(や本人のモデルw)からブーイングの嵐w
「大丈夫ょ!撃たないで!」
「私のICレコーダーで録ったわ、全部。ミユリ、後は、後はお願い…」
「デレジ!」
飛び出したムーンライトセレナーダーに愛用のレコーダーを渡し、そのママ力尽きて倒れる。ミユリさんが抱き止める。
「大丈夫。もう大丈夫ょ。良くやったわ、デレジ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日の捜査本部。
「今まで"外神田ER"に?」
「YES。全くデレジって、タフなのか強運なのか。多分どっちもだろうけど…助かるみたい」←
「ただ、やったコトからは逃れられない。服役するコトにはなる。でも、一生ってワケじゃナイ」
ヲタッキーズのエアリとマリレが話す横を2×7が連行されて逝く。デレジに襲われる恐怖も消え、心なしか晴れ晴れ?
「テリィたんが検事局の元カノと電話で話したんだって」
「ソレで?」
「2×7は司法取引に応じた」
ははーん、と逝う顔のエアリ。
「あら。取引材料は?」
「ブラチ・ヤードの麻薬ビジネスの情報らしいわ。行方を見守りましょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら、居心地良くなっちゃって常連が沈殿、回転率が落ちて大失敗w
「さぁ召し上がれ」
「なんだい?お、クッキーを焼いたのか、スピア」
「そうよ。だって私…」
頬を赤らめ純情ブルが、下心は見え見えw
「昨夜のコトならスピアのせいじゃナイわ」
「ミユリさん、甘やかさないで。僕の傷はクッキー位じゃ癒えないょ」
「そーかしら、テリィ様。スピアのクッキー、かなり美味しいですょ…あ、おかえりなさいませ、御主人様。奥方様」
ナンと御帰宅して来たのは…スピアの御両親だw
「パパ!ママ!どうしたの?」
「スピア。帰国スル前に話しておきたくて」
「あ、席を外そう!常連は全員回れ右!」
慌ててスピアのパパさんが止める。
「いやいや!みなさん、その必要はありません」
「スピア。昨夜は気まずい思いをさせてごめんなさい。ママは反省したわ」
「そーよ。問題は、ママがカルビとのお見合いをセッティングしたコトょ!」
食ってかかるスピア。
「その通りだわ。ママは、確かにカルビを呼んで貴女と会わせようとした。でもね。ソレは、全てテリィたんに会う前にしたコトなのょ」
「ソレがママの言い訳?」
「待てょスピア。言い訳としてはなかなか悪くナイぞ」
割って入る僕は"彼女のママに絶対忠誠を誓う派"←
「貴女達がこんなにお似合いだとは思わなかったの」
「でしょ?自慢の元カレ…じゃなかったカレょ!彼シャツょ!」
「みなさん、乾杯しましょう!御屋敷のオゴリ…」
お調子者によるタダ酒欲しさの発言だが…
「ごめんなさい!次のメソポタミア便の飛行艇が間もなく神田リバーを離水なの」
「車まで送るわ。パパ、ママ」
「お2人にお会い出来てホントに良かったです」
パパさんと握手。ママさんとハグ。気持ちの良い御両親だ。
「お気をつけて」
「秋葉原のみなさんもどうぞお元気で。娘をよろしくお願いします」
「それじゃさようなら」
スピアと御両親は専用エレベーターに消える。
「みんな、お疲れ!スピアのたっての頼みでフィアンセを演じただけだから!誤解なきよう…でも、かなり気に入られたかな?」
「テリィ様。もう引っ込みはつきませんょ?もう結婚するしかないカモ」
「え。やめてくれょミユリさん。僕はミユリさんを一生推し続けたいンだ。一生推し続けるけど…その前に。ルイナ!オンライン飲みしてる?」
ルイナは、いつも飲みはラボからのリモート参加だ。
「明日、電気街でもお散歩しないか?護衛隊長には話しといた。特殊部隊がドレスコード"カジュアル"で護衛につくけど」
「え。テリィたんとお散歩?素敵!…でも、護衛は戦闘ヘリがつくけど…うるさくない?」
「モチロンうるさい。だから、明日は無人ドローンに替えてもらった。攻撃高度1万フィートで旋回待機スルって」
ヌカリはナイ←
「あぁ明日のお散歩、楽しみだわ!ねぇマチガイダのチリドッグ、食べに行こ?ミユリ姉様、明日はテリィたんと手をつないでも?」
「もちろん、ミユリさんはOKさ!ね?!」
「…」
沈黙は金(意味が違うw)だ←
「うーん僕も楽しみだなぁ…ところで、アキバ工科大学の学生で、ルイナに赤点つけて欲しい奴がいるンだけど…」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"ヒット予測アルゴリズム"をテーマに、異次元人達の地下アイドルである彼シャツラッパー達、ヒット予測アルゴリズムを操るレコード会社社長、メジャーに背を向けたインディーズのラッパー、彼女達に翻弄されるトップヲタク、首都高ハイウェイポリス、殺人犯を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、主人公と元カノ会長のお見合い撃退作戦をサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第8波コロナを迎え5回目ワクチン接種が進む秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。