第4話
僕自身の調子が悪いので、なんかミスとかあるかもしれませんがまたいつか修正しますね。
馬車に乗り数時間が経ったが、草原に囲まれた一本道は代わり映えがしない。勇者パーティーが勇者の怪我で活動出来ていない以上、そこまで急ぐ必要は無いのかもしれない。しかし、離脱したエリカの方が遠くに行ってしまってはまずいのでゆっくりもしてはいられない。そんなとき、ふとポケットに入っている機械の存在を思い出した。そう、無線機だ。使い方は、この乳頭のようなものを耳に入れれば繋がるんだったよな。あ、乳頭とは乳首の別の言い方だ。紛らわしくてすまない。
無線機を繋がる状態にしてしばらく待機していると、何やら声が聞こえてきた。
「こん……は。あー。……。あー、あー、聞こえますか?」
最初は、砂嵐のような音だけで全く何を言っているか分からなかったが、どうやらきちんと調整出来たらしく今回の任務のサポート役の者の声が聞こえた。
「ああ、聞こえている。俺はオルクだ。これからよろしく。」
誰も目の前にいないのに話すのは少々気恥ずかしいがとりあえず挨拶をしておいた。すると、向こうも挨拶を返した。
「どーも、私はアリシア・チョムボといいます。よろしくお願いします。」
覇気のない口調で彼女、チョムボは答える。チョムボの声はどこか幼く、とても王城に勤めている者とは思えなかった。それこそ、13歳くらいの学生のような声だ。
「お前が担当者なんだな。本当に大丈夫か?声の感じだとガキのようだが。」
今回は大事な任務なので純粋に心配して聞くと、
「な、ガキってこの私がですか?その点なら心配しなくても大丈夫です。私はきちんと成人を迎えておりますゆえ。」
チョムボはふるふると声を震わせながら答える。カールウッドでは成人は16歳のはずだ。まあ声だけで人と話したことはないし、案外そういうものなのか。まあ、年齢がどうであれ信頼出来ればいいのだ。あとは、何か言っておくことはあったかな。
「チョムボって、変な名前だな。」
俺がそう呟くと気まずい空気が流れた。が、彼女が気を取り直してといった風に話し始めた。
「今回私はあなたのサポート役として任務に臨みます。基本的には、勇者パーティーの移動ルートや、立ち寄った街や村の案内、情報提供をさせていただきます。また、あなたの旅中に起こった任務に関係しそうな事柄は私がまとめておきますので安心してください。それでは詳しい説明に入ろうと思いますが、何か質問はありますか?」
彼女はなんだかんだで頭が切れそうな感じだ。頼れる存在だろう。そうだな、聞いておくことは特にないか。うーん、まあ一応気になるし聞いてみるか。
「チョムボって変な名前だな。ネタか?」
その刹那、とてつもなく鋭い刃が俺を襲った。
「しつけえんだよ、あんた!!!誰だってこんな名前いやよ!!!いきなりガキとか言ってくるしマジでうざいんだけど。本当に気持ち悪い。どうせそんなんだから、彼女とかもいないんでしょ?久しぶりに女と話せたからウケ狙ってからかってきたんでしょうけど、不快なだけ。私分かるよ。あんたみたいな奴に限って、ポエム付きのラブレター書いたりすんのよ。あー気持ち悪。あーもうほんと、あんたみたいな奴エリカ様に○されればいいのよ。結局あんたみたいなのは社会のゴm………」
俺はそれを最後まで聞かずに、そっと耳から無線機とやらを外した。
それからしばらくして、辺りが夕焼けに染まっていることに気がついた。そろそろ夕食の準備でもしようと俺は馬車を停めた。先程からずっと、そばに置いている無線機からギャーギャーと喚く少女の声が微かに聞こえるが気のせいだろう。
今日の夕食は定食屋のエリーゼさんから頂いた味付けベーコンと卵でベーコンエッグにした。エリーゼさんのベーコンはとにかく分厚くてジューシーだ。これ一枚でお腹いっぱいになるほどだ。その後夜も更けてきたので、俺は濡らしたタオルで体を拭き、馬車の中に布団を敷いて寝ることにした。御者台の端に置いていた機械からまだ少女の声が聞こえた気がするが気のせいだろう。その夜はやけにぐっすりと眠れた。
翌朝目を覚ますと、ちょうど美しい朱色の日の出が見られるところだった。朝日を美しいと思ったことなど今までにあっただろうか。ここ10年塀に囲まれて、さながら囚人のような生活をしていたといっても過言ではない。もちろん、朝日に心動かされるような暇もなく、剣を振り続けた。
そろそろ馬車を進めようと御者台に座ると、右に昨日放棄した無線機を見つけた。移動中に落ちてもよろしくないので仕方なく耳にはめた。ガキのように逃げ回るのも悪手だろう。それからしばらくして、
「すーきなー、髪型はー、くーろかみローングー!!」
天気もよく気分上々の俺は、大きな声で歌いながら馬車を走らせた。馬がチラチラとこちらを怪訝そうに見つめるので、
「前を向げぇぇ!ゴラァァァ!!!」
怒りのあまり目の焦点がずれた俺が叫ぶと、馬はビビリ倒して前を向いた。まあ、もちろん少し馬をからかってやっただけだ。普段はこんなことをしないんだがな。まあ、それだけはしゃいでいるということだ。そんなことを思っていると、右耳から可愛らしい声が聞こえてきた。
「あんた…、大丈夫なの?」
今回の任務の協力者、チョムボは本気で俺を心配していると同時に、少し怯えている気もする。彼女からしたら俺は、陽気に歌っていたと思ったら突然我を忘れたようにキレる異常者だ。弁解せねばと俺は、
「心配ない。今のは気分転換だ。」
「あれが気分転換なんだ…」
彼女の声は昨日と比べて大人しい。かと思われたが、
「それはそうとあんたなんで昨日私を無視したの?」
途端に強い口調に変わった。悪口を言われて傷ついたからなんてのはダサすぎる。何か良い言い訳はないだろうか。あ、そうだ!
「あまりに景色が綺麗でな。ほら、俺はずっとマスリの塀の中にいたもんでさ。それで、静かに景色を楽しみたかったんだ。」
「へえ、それって私の声がうるさかったってこと?」
情には訴えられなかったようだな。だが、まだ手はある。
「いや、なんていうか。君の声はとても可愛い。そりゃいつもの俺なら君の声にうっとりして会話を続けただろう。しかしな、誰にだって1人になりたい時はあるぞ。分かるだろ?」
チョムボは、はぁ、とため息をついた。そして、
「あんた昨日私の声を聞いてガキって言ったよね。ガキって言い方からして、私の声にあんたは魅力を感じてないと思うの。正直に言いなさいよ。私にボロクソに言われても何も言い返せないから逃げたんでしょ?ふふ、大丈夫よ、私は大人だから昨日のことは水に流してあげる。」
こうやって決めつける人は嫌いだ。この俺が?そんなダサい理由で?ありえないありえない。いや、本当に、まじで。そして、俺の口から出た言葉は、
「そ、そんなんじゃ…、ねーし…。」
チョムボは弱々しい俺の声を聞いて、勝ったわ、と呟き、
「まあ、良いわ。それより任務の話よ。大事な話だからね。」
「分かった、チョムボ。」
「チョムボって言うな!!」
よく異世界モノでペットを飼っていて、飼い主と意思疎通をとることが出来ている事例を目にしますよね。
あれって本当に可能なんですかね?
犬は人間の言葉を理解しているように思えますが、実は違うと考えられています。
例えば、「お座り」と言われれば人間は、ああ、ここに座れば良いんだな、という風に「座る」の意味を考えてから行動に移します。
一方、犬は「OSUWARI」という音に反射的に行動します。そこに意思の介入はなく、即座に反応してしまうというわけです。
いわゆる、しつけ、調教と言えば分かりやすいでしょうか。
ただ、言葉の意味まできちんと理解できる動物を見つけたいのが科学者です。
この詳しい実験についてはまた次の後書きで話しましょう。