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第1話

「王国騎士団第四部隊所属、オルクよ。そなたに非常に重要な任務を与える。」


 やたらと装飾の多い椅子に堂々と座っている王は低く荘厳な声で、膝を着き敬服する俺に言う。俺のような若い騎士は、普通このような形で王に直接命令されるようなことはこのカールウッド王国では滅多にない。かく言う俺もこの王城の王室に入るのは初めてだ。周りには俺よりもずっと強そうな近衛騎士と見られるものが数名いる。王の真っ直ぐな視線で突き刺された俺は動けないでいた。戦いにはあまり参加されないと聞いていた王に、ここまでの迫力があるとは思わなかった。

 


 王から直々の任務とあらば決して断る理由はない。大変な名誉だ。とりあえず、俺は王に了承の意を伝える。



 「陛下のご命令とあらば、喜んで引き受けさせていただきます。して、私のような若輩者の騎士に、どのような任務をお与えになるのでしょう?」

 


 王は、ふむと頷いて間を置く。そして、




「そなたに与える任務は、



 [勇者パーティーを離脱したエリカ・ギルバートを  

                 探し出して連れ戻す]

    


                                  ことである!」

 





 王が俺に与えた任務の内容を俺は上手く飲み込めずにいた。たしか、魔王討伐のために、選ばれし者、通称勇者が選定された。その補助としてカールウッド王国の中から極めて優秀な者たちを集めて、合計4人で構成された勇者パーティーができた。そのパーティーがつい数週間前に、魔王討伐に向けてカールウッド王国の首都マスリを出発したということは、恐らく国民全員が知っている。

 


 そのパーティーメンバーの1人、エリカ・ギルバート。彼女は17歳という異例の若さで、王国騎士団の中でも屈指の実力者のみが得られる、<剣聖>の称号を得ている。そんな彼女はもちろん勇者パーティーのメンバーとして選出されるはずだ。そのエリカが、パーティーを離脱した?なんのために?しかも、それを俺に連れ戻せだと?

 


 どう考えてもその任務を俺に遂行することは困難である。なぜなら、俺は王国騎士団の中ではまあまあ実力がある方だろうが、エリカには全くもって及ばない程度であるからだ。恐らく、彼女が木の棒、俺が真剣を使ったとしても負けてしまうだろう。さらに言うならば、俺はエリカと面識がない。そんな人間を探し出すこと自体不可能に思える。

 


 こんな任務やってられない。そう思いながらも、どうやって断るか俺は悩んでいた。とにかく、自分には荷が重すぎることを伝えれば、王も考え直してくれるかもしれない。



「陛下、私がエリカ様を勇者パーティーに連れ戻すと言いましても、返り討ちにされてしまいます。それに、こういった問題は当事者間で、つまり、勇者パーティー内で解決すべきではないでしょうか?」



我ながら完璧な解答である。断る意思ではなく、あくまで助言をしたという体で話を進められた。こうすることで俺が意欲的であると王に思わせることも出来る。しかし、王は首を横に振りながら、



「そういうわけにもいかない事情のようだ。」



と言う。その事情について俺が問うと、



「どうも、勇者が旅先で、魔物に怪我を負わされたそうなのだ。それがかなり深傷のようでな。他の2人も手が離せないらしい。」



なるほど。そういったことなら仕方ないのかもしれない。そうなればパーティー外からの手助けが必要というわけだ。だが、エリカという女、そんな緊急事態にパーティーを抜けるとは、なんて無責任なんだ。はっきり言ってありえない。それに、依然として、俺に不釣り合いな任務であることに変わりはない。



 「事情は把握いたしましたが、結局私では力不足と言いますか。他に適任の方がいらっしゃるのでは。」



俺がそう言うと、王の横に立っていた騎士団長が、自分が代わります、といったジェスチャーを王に見せ、王もこれに頷く。そして騎士団長が口を開いた。



「オルクよ、お前は王国騎士団では珍しく、首都圏外の出身だろう。だからこそ、お前に任せたいのだ。」



どういうことかというと、俺は田舎者だから、首都マスリの外の地理について詳しいため、首都出身の他の騎士たちと比べてかなりスムーズに行動できるだろうということである。まあたしかに、他の騎士たちよりもかなり、外部の地理は理解しているし、俺以外の者がこの任務をこなすのが難しいというのは一理ある。実際、首都圏外出身で王国騎士をしているのは俺だけだしな。

 


 だがしかし、こんなことで俺は折れない。エリカとやらにコテンパンにされるのだけは勘弁だ。もし任務を引き受けようものならこんな未来が待っているのだから。



「エリカ、俺はお前を連れ戻しに来た。」

颯爽と登場する俺。急な登場に驚いたエリカはこう言うだろう。



「あなた誰?私は絶対勇者パーティーになんて戻らない!」



エリカはぐっと俺を睨みつけているが、垢抜けていないその姿は少し可愛らしい。たしか、彼女は美しいブロンドヘアーにサファイアのように輝く瞳を持っていると騎士の間ではもてはやされている。そんな彼女に見惚れそうになった俺は、これでは駄目だと自分の任務を思い出す。



「俺はオルク。王国騎士団員さ。エリカ、君はなんて美しいんだ!今にも恋に落ちてしまいそうだ。でも、俺に従ってくれないようなら、手荒な真似をしないといけないかもね。」



その言葉にエリカは一気に警戒して、腰に差した剣の柄を握り、今にも抜かんとする。勇敢なエリカでも、目の前に現れた得体の知れない男を恐れて、少し震えているようだ。



「あなたなんかに従うもんですか!望むところです。私はあなたを倒します!」



虚勢を張るエリカに対して優しく微笑みかけて俺は言う。



「なら、仕方ないね。精々楽しませておくれよ。」



その瞬間、エリカは鋭い踏み込みで俺との距離を詰め、あっという間に一足一刀の位置に到達する。射程距離内に入ったエリカの姿を俺は確認し、自分の剣に手を伸ばす。たしかに、エリカの速さは凄まじいが見えないほどではない。

 



 だが、見えたからといってなんだ。次の瞬間、エリカの凄まじい剣撃によって全身を砕かれた俺は天高く飛ばされ、どさっという情けない音とともに地面に着地し、白目を剥いて、失禁をしながら気絶するのだ。そんな俺にエリカが、



「ちっ、雑魚が!!イキってんじゃねえぞ!!っっぺっ!!!」



と唾を吐きかける。



 やだやだやだやだ!!ダッセェ!!!めちゃくちゃダサい!!!こんなの絶対ごめんだ。ありえない。こんな悲惨なことになるほどに実力差があるのだ、俺とエリカの間には。

 


 やはり引き受けるわけにはいかない。俺はなんとかしてこの任務を回避するため、騎士団長に屁理屈を並べ立てるも全て否定されてしまう。

 


 騎士団長と問答を繰り広げているときに俺はふと気付いた。俺はてっきりこの任務を1人でやると思っていたが、まさか、こんな重要な任務を1人でやるわけないよな。恐らく、王国騎士団員10人ほどを連れていけるのだ。そう思い、俺は騎士団長にこう言った。



 「いやぁ、うっかり1人で任務を遂行するのかと思っていましたが、よくよく考えればそんなのありえませんね。私がエリカ様に勝てるわけありませんし。ですが、王国騎士団の者達のサポートがあるのなら安心です。」



俺のその言葉に騎士団長は微笑む。なんだ、やっぱりそうか、騎士団長も人が悪いな。それならそこまで難しい任務ではないなと俺は安心する。すると、騎士団長は優しい笑顔から突然真顔になって言った。



「お前1人で行かせるに決まっているだろう。大体、王国騎士団員でエリカを袋叩きにするなどとなんて恐ろしいことを考えるのだ。もしわしの可愛い娘が怪我でもしたらどうするのだ!!この愚か者め!!絶対にエリカを無事に届けろよ!!」



エリカ・ギルバート、ふむふむ。たしか、俺の前で偉そうに怒鳴ってるこのおっさん、王国騎士団長の名前はエルリック・ギルバート。なるほどね。そういうことか。2人は親子というわけだ。つまり騎士団長は自分の娘可愛さゆえに、俺にこの身1つで旅に出て、俺よりも遥かに強い馬鹿女を命の危険を冒して無傷で捕まえろと言っているのだ。そのとき俺の中のずる賢い奴がいい考えを思いついた。



「どこの馬鹿娘かと思っていたら、てめえの馬鹿娘か!!!!!自分の娘が馬鹿なことしてるくせして、捕まえるときはかわいそうだから傷つけずにってどういうつもりだ!?頭悪いのか?ああ、頭は悪いな。どうせ娘には剣しか教えてないんだろう。だっておっさんも剣しか知らないもんな!お前の娘みたいな脳筋の相手なんかしてられないので俺は帰らせていただきますね。」



こうやってキレたフリをすればクビにされてこの任務を放棄できる。故郷に帰って漁師でもやるか。この国では不敬は犯罪ではない。つまり、こんな俺でも処刑はされないわけだ。ならもうどうでもいい。こんな仕事やってられない。すると、怒りに震え、顔を真っ赤にした騎士団長がその筋骨隆々の巨体をズンズンと俺の方へ進ませ、俺の胸ぐらを掴む。50代半ばのくせして俺より遥かに力が強い。だが、もう俺も引き下がれない。俺は騎士団長の立派な髭を思いっきり掴む。そして、騎士団長は怒鳴り声をあげる。



「オルクぅ!なんだその口の利き方は!!!ブチ殴られたいのか、ああん?お前のような田舎者に仕事をくれてやるんだ。感謝こそすれど、まさかわしを侮辱するとはなぁ。お前のようなモヤシ、わしが鍛え直してやるわ、雑魚め!」



ああ、とことんムカつく。



「黙れ、クソジジイ!」



そう叫んで、俺は思いっきり騎士団長の髭を引っ張る。



「やめろ!!!髭はやめろ!!!ああああああ!!!痛い痛い!!やめんか、この馬鹿者が!」



そんなこんなで取っ組み合いをする俺たち。それを見て必死に止めようとする近衛騎士たち、手を叩いて大笑いする国王陛下。もうまさにカオスである。20分ほどして、俺と騎士団長は疲れてしまいその場にへたり込んだ。体中至る所に傷を作るも大怪我はしていない。騎士団長は手加減してくれたのかもな。まあでもクソジジイだ。



 絶対にこんな任務引き受けないぞ。何笑ってやがるあの王は。そんなことを俺が思っていると、王は口を開いた。



「オルクよ、今回の任務引き受けてくれないのか?」



「当然です。」



と俺が返事をすると、王はあからさまな両手を上げたジェスチャーで残念そうにする。



「そうか、残念じゃなぁ。いやはや、まさか断られるとは。盛大な報酬を用意しておったのになあ。」



と王は言った。ふん、報酬をいくら出そうが引き受けてやるものか。俺は決めたのだ。



「私は引き受けませんよ。」



俺が念押しのように言うと、王が



「うーむ、もし引き受けてくれたら、カールウッドきっての美女たちを一晩お前の好きにさせてやろうと思っておったのじゃがなぁ」



なんて下品な報酬だ。そんなものに興味は毛頭ない。








 




王や騎士団長にめちゃくちゃな任務を言い渡され非常にイライラしていた俺は、その日はまっすぐ家に帰った。そして、ぶつくさと文句を言いながらエリカ探しの旅に向けて荷造りを始めた。

皆さん!こんにちは!!!今回の作品は処女作となります。自分でも読んでて微妙だなと感じる部分もあるのですが、スキルアップに繋がる作品になればなと思っております。


 最近は気温も上がってきて、そろそろエアコンを使おうかなと思い始めています。電気代があからさまに上がるので悩みどころですね。最近の趣味は暖房をつけて筋トレをすることです。どうせ電気代高かったですね。飼ってる犬は風通しの良い涼しい部屋で気持ち良さそうに寝ているのに、僕は隣の部屋でハアハア言いながら床を軋ませている訳ですから、ご近所さんは僕のことをストイックなイケメンとでも思っているのでしょうね。

 今度ご近所さんにご挨拶でもしてきます。

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