プロローグ
そこそこ長くなりそう。
異世界に行きたいと、そう思った。
別に現在の生活に困ってるわけでも、不満があるわけでもないのだが、
ただ現実離れした光景を目の当たりにしたいと思ってしまっただけだ。
日本は美しい国でいろんな観光名所があると高校の地理の先生が言っていた。
先達の作った和を基調とした風景はなかなかに自分の心を揺さぶったが、満足するほどではなかった。
正直なところ、自分で足を延ばして実際に目にするよりもプロのカメラマンがとった計算されつくされた写真のほうが好みだった。
この世のものではない気がして。
通勤の途中に美しい桜並木があると同僚が言っていた。
「お前も見ただろ?」そう言われたが俺は見ていなかったようだ。
スマホをいじっていたわけでもなく、ほかのことに注意していたわけでもなく、ただ見逃した。
見ても、写真のように美しくないから。そんな気持ちでいるから視界に入らないのだろうか
学園物のアニメでは入学式の桜はあんなにも美しく見えたのにリアルではそうもいかないのか。
まあ、もしかしたらシンプルに見逃しただけかもしれないが...
そんなとりとめのないことを考えながら過ごす日々。
————気づいたら俺は異世界にいた
コンビニから出た瞬間、女の子や小動物を助けてトラックに轢かれた、同僚やその彼女を助けて通り魔に刺された、神様の手違いとかいうわけのわからないものに巻き込まれたわけでもない。
正確に状況を報告するならば、髪と体を洗い湯船に入った瞬間に異世界に来た。
なので全裸かつびしょぬれ。バランスを崩れてうしろに倒れてしまったので土や葉っぱで汚れてしまった。
ところでなぜ俺が異世界に来たのだと思ったのか。よくある異世界系の主人公は地球のどこかに瞬間移動したと勘違いする描写があるがタイトルで異世界に行ったことが大抵わかるのでやめてほしい。蛇足にしかならん。
話が脱線したが、異世界だと分かった理由としては————
————でっかい星がたくさんあったから。
うん、自分の語彙力のなさったらすさまじいものがあるな。
とはいえ、だ。普通、月が二つあるー!とか月の色がちがう!?みたいな感じで異世界に来たことを悟るのが大半の創作物だと思うんだが…
月並みの大きさの星、いやそれよりもっと大きな星が空に無数に浮いていた。
「すげえ…」
仰向けになりながら、小学生並の感想を漏らしてしまう。
「すぅ…はあ」
一度深呼吸してみるがそれでも世界は変わらない。
とはいえ、唐突にこんな場所に来たもんだから元の場所に戻るのも唐突かもしれない…
なぜか、それはないだろうという漠然とした確信がうちにあるのは謎だが
それにしても
「————来たのか、異世界」
明晰夢なんてものではない、よくわからないがそれは間違いないだろう
だってこんなきれいな光景、夢でも見れるもんじゃないしな
神撃のバハムートというアニメの空を想像して書きましたね。